
特殊詐欺被害の深刻化に対応するため、警察庁が75歳以上の高齢者のATM利用に新たな制限を設ける方針であることが明らかになりました。3月25日に判明したこの計画では、1日あたりの引き出しと振り込みの限度額がともに30万円に制限されます。
現在のATM利用限度額は各金融機関が独自に設定していますが、今回の措置により初めて制度として一律に制限されることになります。高齢者を狙った詐欺では、インターネットバンキングの悪用が増加傾向にある一方で、ATMへの誘導による振り込み詐欺も依然として多く発生しています。
この取り組みは2023年夏に政府が打ち出した詐欺対策プランを基盤としており、金融取引の監視体制強化や、高齢者の現金引き出しに一定の制約を設ける構想がこの時点で既に検討されていました。
実施に向けては、一般市民からの意見聴取プロセスを経て法令改正へと進む見通しです。銀行業界との連携を図りながら準備を進めますが、各金融機関のシステム調整が不可欠なため、本格導入までには相応の準備期間が必要とされます。
この規制導入により、一度の取引で高額な資金移動が制限されることで、高齢者が特殊詐欺に騙されて大金を失うリスクを軽減できると専門家は指摘しています。
ネット上では、「自分の財産なのに他人から制限かけられるとか意味不明だがそれだけ被害が止まらないって証拠なんだな」「これらの犯罪に対してもっと積極的に取り締まり、刑罰を厳しくするのが本来のやり方では?」「せめて50万円くらいにしてもらわないと不便でしかない」などの意見が寄せられています。
急増する高齢者狙いの特殊詐欺 ATM制限強化の背景
全国で高齢者を標的とした特殊詐欺の被害が深刻化しています。京都市など4府県の80〜90代女性9人が特殊詐欺の被害に遭い、暴力団関係者3人に対し約5,700万円の損害賠償を求めました。
被害者たちは「病院でカードをなくした」「仕事で急にお金が必要だ」という息子を装った電話に騙され、100万円から2,000万円もの金額を詐取されました。このケースでは、暴力団組員が詐欺グループを指揮していた疑いが持たれています。
特殊詐欺の手口は巧妙化し、被害総額は年間数百億円に達すると見られています。犯人グループは高齢者の不安や孤独感につけ込み、家族や公的機関を装って信頼を得るのが特徴です。
こうした状況を受け、警察庁が75歳以上のATM利用制限を検討するなど、対策強化の動きが進んでいます。専門家は「不審な電話は一度切って確認する習慣」の重要性を指摘しています。