
フランス・パリのシャルル・ドゴール空港で18年間暮らしていたイラン難民の男性が、12日に亡くなっていたことがわかりました。
亡くなったのはメフラン・カリミ・ナセリ氏であり、2004年のスティーブン・スピルバーグ監督映画「ターミナル」のモデルになった人物でもあります。第2ターミナルで空港の医療班が死亡を確認したところ、自然死だったとのことです。
1988年、ナセリ氏はベルギーとフランスを経由して英国に向かう途中、必要な書類をなくしてしまい、空港から出ることができない状態に。2006年まで空港内で暮らしていたナセリ氏は、「こんな状況で11年も生きられる人はいないと思います。私は移民としては異例のケースです」と語りました。
ナセリ氏は各国のメディアで取り上げられ、一躍有名な存在になりました。スティーブン・スピルバーグ監督はナセリ氏に注目。トム・ハンクスが主人公を演じた映画「ターミナル」は、ナセリ氏がモデルであったとされています。
2006年には病院に搬送され、一時は介護施設で暮らしていたとのことです。しかし、2022年9月中旬から再び同空港内の公共エリアにて、ホームレスとして暮らしていたとされています。
一時はフランス当局がフランス移住を提案したこともありましたが、ナセリ氏は最初の目的地が英国だったという理由で、その申し出を断っています。
空港の報道担当者は「彼は象徴的な人物だった。私達は彼に愛着を持ち、何年も気にかけてきた」と、コメントを残しました。
ナセリ氏がドゴール空港にたどり着くまで|空港での暮らし
ナセリ氏は、1945年にイラン南西部フゼスタン州で生まれました。1974年に英国留学しますが、帰国すると反政府運動に関わったとして、国外追放されてしまいます。
また、正しい渡航書類を所持していなかったため、各国から入国を拒否されてしまいます。ベルギーで数年過ごすなどしましたが、最終的にはフランスのドゴール空港にたどり着き、2006年に病院搬送されるまで生活を続けました。
空港内では、自身の半生を日記に書いたり、本や新聞を読んだりして過ごしました。空港内のトイレで髭を剃っているナセリ氏の姿もメディアで報道されています。
ナセリ氏がモデルとなった映画が公開されると、1日に6本もの取材を受けたこともあったそうです。1999年に難民認定され、フランスへの滞在が認められますが、ナセリ氏はその後も空港内で暮らしました。