
グローバルエンターテインメント市場で歴史的な転換点が迫っています。金融調査会社MoffettNathansonの最新分析によれば、YouTubeが2025年末までに「収益ベース」でディズニーを抜き、世界最大のメディア企業となる見通しです。
この予測を裏付けるように、ニールセンの2025年2月の視聴時間データではYouTubeのシェアが11.6%を記録し、全メディア企業の中でトップに立ちました。2位のディズニー(10.0%)、3位のフォックス(8.3%)、4位のNetflix(8.2%)を大きく引き離しています。
ストリーミング視聴に限れば、全体の約27%をYouTubeが占めるという圧倒的な存在感です。2024年のYouTube収益は542億ドル(約7兆8,900億円)とディズニーの597億ドル(約8兆6,900億円、パーク・体験部門除く)に次ぐ第2位でした。
特に広告収益は前年比15%増の361億5,000万ドル(約5兆2,600億円)と急成長し、第4四半期には過去最高の105億ドル(約1兆5,300億円)を達成しました。
MoffettNathansonのパートナーであるマイケル・ネイサンソン氏は、YouTubeが独立企業だった場合、その企業価値は5,500億ドル(約80兆円)以上、親会社アルファベットの総評価額の約30%を占めると試算しています。
同氏は今後の成長について「サブスクリプション収益の伸びが主に加入者数の増加によって広告収益の伸びを上回り続ける」と予測。
YouTube Premium、YouTube Music、YouTube TVなどのサービスが収益の多様化をけん引し、2027年には広告とサブスクリプションを合わせた総収益が750億ドル(約10兆9,000億円)を超える可能性があるとしています。
テレビがけん引するYouTubeの新時代 視聴形態の変化とビジネス拡大
これまでモバイル主体だったYouTubeですが、ニール・モーハンCEOが「米国ではテレビがモバイルを上回る主要視聴手段になった」と発表。実際、ニールセンの調査では過去2年でテレビでのYouTube視聴シェアが53%増加し、特に65歳以上では96%という驚異的な伸びを示しています。
こうした視聴習慣の変化に合わせ、YouTubeはテレビ業界への進出も加速。2017年に開始したYouTube TVは現在約940万の加入者を抱え、アナリストのマイケル・ネイサンソン氏は「2026年頃までに米国最大の有料テレビプロバイダーになる」と予測しています。
昨年はNFL Sunday Ticketの放映権を7年総額140億ドル(約2兆400億円)で獲得するなど、プレミアムコンテンツへの投資も強化しました。
従来のソーシャルメディアの枠を超え、総合メディア企業へと進化するYouTubeの戦略が、メディア業界の勢力図を塗り替えようとしています。