
日本の回転寿司業界で新たな動きが始まっています。業界最大手スシローの運営企業であるFOOD&LIFE COMPANIESが、ウニ専門スタートアップのウニノミクスと協業し、国内初となる大規模なウニ陸上養殖事業に乗り出しました。
このプロジェクトでは、全国4拠点での養殖施設建設が計画されており、総投資額は100億円を上回る見込みです。2026年には富山県と大分県で最初の施設が操業を開始し、翌年には北海道と東北地方での展開も予定されています。
注目すべきは採用される養殖技術です。海底で栄養不足により痩せてしまったウニを回収し、2〜3ヶ月という短い期間で肥育する「蓄養」方式を導入します。
各施設では年間50トンの可食部分を生産予定で、4施設合計では日本全体のウニ漁獲高の約3%に相当する規模となります。
この取り組みの背景には、訪日外国人観光客によるウニ需要の急激な増加があります。従来は国産品と輸入品を併用していたスシローですが、今後は自社養殖による安定した国産ウニの供給体制を構築し、品質向上と安定供給を両立させる戦略です。
既に大阪・関西万博の会場店舗では試験的にウニノミクス産ウニの提供を開始しています。万博のスシローでウニを食べた人たちは、「万博で食べたけど臭みも無く美味しかった!」「これは海外の人、喜ぶと思う」などの感想を寄せています。
回転寿司業界が直面する海洋環境問題|技術革新による解決策
日本の回転寿司チェーンが取り組むウニ養殖事業の背景には、深刻な海洋生態系の変化があります。世界規模で進行している「磯焼け」現象は、ウニの過剰繁殖により海底の藻類群落が破壊される環境問題として注目されています。
気候変動に伴う海水温度の上昇がこの問題をさらに悪化させているのが現状です。FOOD&LIFE COMPANIESの養殖施設では、この環境問題を逆手に取った革新的なアプローチを採用しています。
磯焼けで荒廃した海域から回収したウニに専用飼料を与えて育成し、同時に施設内の排水処理システムにより餌の食べ残しを分離・再活用することで、新規海水の取水量を削減して温度管理にかかるエネルギーコストの削減を実現しています。
この取り組みは、近年の海洋環境変動による漁業資源への影響に対する業界全体の危機感を反映したものです。
また、業界では技術革新による対応も進んでいます。広島大学系企業との遺伝子解析共同研究や、競合他社による人工知能を駆使した給餌最適化システムなど、従来の漁業に代わる持続可能な食材調達手段の開発が加速しています。