大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」 中島さち子氏プロデュースによる0歳から120歳まで楽しめるゆらぎのある遊び
の建物-2-1024x577.jpg)
大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」は、ジャズピアニスト、数学研究者、そしてSTEAM教育者という多彩な顔を持つ中島さち子氏がプロデュースするパビリオンです。対象年齢が0歳から120歳までと、「いのちを高める」をテーマに、誰もが「ゆらぎのある遊び」を通じて自らの創造性を発見することができます。今回は、「いのちの遊び場 クラゲ館」の魅力について紹介します。
<目次>
「いのちの遊び場 クラゲ館」のコンセプト
「いのちの遊び場 クラゲ館」は、「創造性の民主化=誰もが創造する喜びを!」というコンセプトがあります。これは、特定の分野の人だけではなく、0歳から120歳までの年齢や立場、身体能力に関わらず、すべての人が本来持っている「いのち(創造性)」を自由に発揮できる場を目指すものです。
「いのちが躍る、いのちが歌う、いのちがひらく」という言葉に集約されるこの考え方は、STEAM(Science, Technology, Engineering, Art/Arts, Mathematics)の視点を取り入れ、五感(特に聴覚、触覚、嗅覚、身体感覚)を使ったインタラクティブでプレイフルな体験を通して、一人ひとりの創造性を高めていきます。
パビリオンの象徴である「クラゲ」は、創造性や「いのち」を表すものに加えて、言葉では説明できない「ゆらぎのある遊び」を象徴しています。決まった答えを教えるのではなく、遊びという「問い」を通して、来場者が自らの創造性を自由に発揮し、共奏・共創しながら未来をつくる喜びを感じられる空間が楽しめます。
大樹の木陰とクラゲのゆらぎが織りなす空間の建築デザイン
の建物-1-1024x648.jpg)
「いのちの遊び場 クラゲ館」の建築デザインは、建築家の小堀哲夫氏が手掛けています。中島さち子氏と小堀哲夫建築設計事務所他との共創により、2023年10月1日に夢洲で着工されました。
パビリオンは、一本の大樹が作る木陰に人々が集い、思い思いに過ごせる公園のような空間をイメージしています。建物全体は「クラゲ」をモチーフにしたデザインで、特に大屋根は鉄骨トラス材と膜材で構成され、漂うクラゲを連想させるとともに、万人万物の持つ揺らぎの世界を表現しています。
中央には、吉野杉の木片などでできた「創造の木」がそびえ、その下には「プレイマウンテン」と呼ばれる緑の丘が広がります。これは、子どもたちが自由に駆け上がり遊べるような人工地盤で、リユースを想定した軽量な素材で構成されています。屋根の下の半屋外空間には、細い木材が網状に広がり、クラゲの触手をイメージさせます。これらの木材には子どもたちが絵を描くなど、多くの人々の想いが込められてます。水景設備も取り入れられており、流れる水が涼しさや揺らぎを感じさせ、来場者を優しく迎え入れます。
3つの体験ゾーンで「いのちのゆらぎ」を体感
0歳から120歳までのあらゆる世代が楽しめる「いのちの遊び場 クラゲ館」では、大きく3つの空間があり、五感で「いのち」を体験し、創造性を高めることができます。
1.いのちのゆらぎ場(オープンな遊び場)
吉野杉の木片でできた「創造の木」を中心に、触れると音や光がゆらゆらと放たれる不思議な遊具が集まった遊び場です。「丘りな」や「振るーと」といったユニークな名前の遊具も設置され、見るだけでなく、触って遊ぶことで直感的な創造性を刺激します。
2,わたしを聴く(ほの暗い地下空間「いのちの根っこ」)
地下空間では、感覚を研ぎ澄まし、音を全身で感じることのできる場所です。フィールドレコーディングの第一人者である柳沢英輔氏らと中島プロデューサーの協働により、国内外の様々な場所の音が空間のあちこちから聴こえ、新たな場・空間を表出させます。座る場所によって音体験が変わるなど、自分の内なる創造性と向き合う「わたしを聴く」時間となります。
3.わたしを祝う(参加型没入体験)
360度映像で世界中の祭りや郷土芸能が映し出され、生演奏と共に踊りを楽しむことができる参加型没入空間です。「KURAGE Band(クラゲバンド)」による生演奏も楽しめる、まさに「いのちが踊り、歌い、ひらく」祝祭の場です。来場者の動きにクラゲが反応する仕掛けもあります。
その他の展示・体験
上記のゾーンに加え、「いのちの遊び場 クラゲ館」では多様な視点から「いのち」と「遊び」を表現するユニークな展示や体験が用意されています。
名称 | 概要 |
角命(カクメイ) | 910個の正三角形と約15,000個のLEDからなる、数学・いのち・アートが融合したモニュメントです。 |
音触(おんしょく) | テーブル上のゲルを押すと音と光が反応する、触覚と聴覚で楽しむ楽器です。 |
Co-クラゲ | 8色のクラゲのシンボルに沿って「いのちを高める」に関する「問い」を書き込む参加型展示です。 |
ミドルクラゲ 海月 | 集められたペットボトルに未来への夢や願いを繋げてできたアート作品です。 |
ごちゃまぜオーケストラ | 「誰もがミュージシャン!すべてが音楽の種!」をコンセプトにしたAR(拡張現実)音楽アソビ場です。 |
希望のピアノ | 日本や世界の子どもたち(0歳〜120歳まで)が描いた約900匹のクラゲでラッピングされたストリートピアノです。 |
転生オルガン | 全国から不要になったPC解体廃棄物を再利用して制作された「転生オルガン」です。 |
よろこびの壁 | 日本や世界の子どもや先生、障がいを持つ方、高齢者施設の方などが「いのち」や「いのちを高める」に関する想いを込めて作られたタイルで構成されています。 |
プロデューサー・中島さち子氏は数学と芸術、教育を繋ぐ創造者
「いのちの遊び場 クラゲ館」のプロデューサーである中島さち子氏は、1979年大阪生まれのジャズピアニスト、作曲家、数学研究者、そしてSTEAM教育者という多才な顔を持つ人物です。国際数学オリンピックでは金メダルを獲得し、内閣府のSTEAM Girls Ambassadorも務めるなど、その活動は多岐にわたります。
彼女は、音楽家集団「クラゲバンド:五感協奏VIDA」を率い、五感を通じて参加型で楽しむSTEAM的なアプローチを重視しています。世界中の祭りや民族芸能にも深い関心を持ち、文化や異なる立場の人々が交じり合うことで何が生まれるのかを探求。「誰もが芸術家であり、自身の創造性を自由に発揮できる」という信念のもと、遊びや学び、スポーツや芸術を通して、生きる喜びや楽しさを感じ、共に0歳から120歳までの誰もがいのちを高めていく共創の場を創出することを目指しています。