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糖尿病は生活習慣や遺伝など、さまざまな要因が重なって引き起こされます。病名としては身近なようでいて、どのような病気かをよく知っている人は少ないかもしれません。
糖尿病は、血液中の糖(血糖)が多すぎる状態が続く病気です。
通常、食事をするとごはんやパンなどに含まれる糖分が血液中に入り、エネルギーとして使われます。このとき、インスリンというホルモンが血糖を細胞の中に取り込むことを促進して、細胞がそれを活用して活動します。
糖尿病になると、インスリンが足りなくなったり、うまく働かなくなり、血糖がいつまでも高い状態になってしまいます。この状態が続くと、血管に負担がかかり、細かい血管にダメージが蓄積されます。それにより、網膜の血管に障害がでると、目が見えにくくなったり、腎臓の血管が悪くなると腎不全となり、場合によっては透析が必要になったりとさまざまな合併症を引き起こします。
そんな糖尿病を防ぐためには、食生活に気をつけて、糖質を摂りすぎないようにする必要があります。ただし、単に痩せていれば糖尿病にならないというわけではなく、糖尿病になりにくい食生活を心がけないと、体型に関わらず糖尿病になるリスクがあります。
今回は、どのような食生活が糖尿病につながるかを検証した論文を紹介します。
論文
京都府立医科大学の豊國 恵麻氏らの研究グループは、日本人約13万例を対象に、10年間の追跡期間によるコホート研究を実施し、Journal of Diabetes Investigation誌に2024年3月報告しました。
研究の背景と目的
糖尿病は、インスリンの働きが不十分になることで血糖値が高くなる慢性疾患です。初期には無症状ですが、放置して悪化すると、心臓や血管の疾患、腎不全、網膜の異常による視覚障害など、大きな合併症を引き起こします。
糖尿病は、太っている人がなってしまうというイメージがあるかもしれませんが、実は日本人では、肥満度が低くても食生活が不規則であると、糖尿病のリスクが高まることがこれまでの研究で示されています。
これまでの研究では、朝食を抜くことや食事の速度が早すぎることは、糖尿病の発症と関連しているとする報告がなされています。しかし、日本人を対象とした大規模で長期の研究はまだ限られています。この研究では、日本人における食生活と糖尿病の発症の関係を明らかにするために行われました。
研究の方法
この研究は、2008年から2018年までの間に、パナソニック株式会社の従業員を対象に行われました。研究の方式は、後ろ向きコホート試験(過去に記録されたデータを使ってある要因がある病気にどのように関係しているかを調べる研究)です。対象者は、糖尿病にそれまでかかったことがなく、毎年の健康診断を受けていた人です。食生活の調査は、自身で記入するアンケートを用いて評価され、朝食の欠食、食事の速さ、夕食後の間食、就寝前の食事などの項目と、糖尿病の発症の関連が調査されました。糖尿病の発症は、空腹時血糖値が126mg/dL以上であるか、糖尿病治療が必要と判断された場合と定義されました。
研究の結果
対象となったのは128,594人で、追跡期間中に6,729人が2型糖尿病を発症しました。
研究の結果、以下の摂食行動が2型糖尿病の発症リスクと関連していることが示されました:
- 朝食の欠食:朝食をほとんど食べない人は、毎日食べる人に比べて糖尿病の発症 リスクが高くなりました。
- 食事の速さ:食事の速度が速い人は、遅い人に比べて糖尿病の発症リスクが高くなりました。
- 夕食後の間食:夕食後に間食をする人は、しない人に比べて糖尿病の発症リスクが高くなりました。
- 就寝前の食事:就寝前に食事をする人は、しない人に比べて糖尿病の発症リスクが高くなりました。

特に、BMIが25kg/m²未満の人々において、食事の速さや就寝前の食事が、糖尿病の発症リスクと有意に関連していることが確認されました。BMIが25kg/m²以上の人々では、これらの摂食行動と糖尿病の発症リスクとの関連は見られませんでした。
この研究で得られた知見とまとめ
本研究により、日本人において、特にBMIが25kg/m²未満の人々において、摂食行動が2型糖尿病の発症リスクに影響を与える可能性が示されました。朝食を欠食することや、食事の速度が速いことなどの不規則な食習慣は、糖尿病のリスクを高める要因となる可能性があります。また、痩せているからといって糖尿病がないということの保証にはならないため、定期的な検診を受けて糖尿病がないかを確認することも重要です。
みなさんも食生活を整え、規則正しい生活をして、糖尿病にならないように心がけましょう。