
2017年10月30日、神奈川県座間市で発覚した連続殺人事件は、日本の犯罪史上類を見ない残忍な事件として社会に大きな衝撃を与えました。法務省は6月27日朝、この事件で死刑が確定していた白石隆浩死刑囚(34)の死刑を執行しました。
事件の発端は2017年10月末、失踪した23歳女性の行方を追う警察の捜査でした。座間市内のアパート一室で実施された家宅捜索により、想像を絶する惨状が明らかになります。
室内に置かれた冷凍庫や保冷容器から人間の頭部が次々と発見され、最終的に9名の犠牲者の存在が判明しました。
犯人の白石隆浩死刑囚は、インターネット上で死への願望を表明する若者たちを標的としていました。特にTwitter(現:X)を活用し、精神的に追い詰められた状況にある女性に接触を図る手法を用いていました。
「一緒に死のう」といった言葉で相手の信頼を得て、自らの住居へと呼び寄せるという巧妙な罠を仕掛けていたのです。
犯行は2017年8月から10月という短期間に集中的に行われ、犠牲者の年齢層は15歳から26歳までと非常に若く、高校生も含まれていました。
司法当局は本件を「非人間的な犯行で、前代未聞の猟奇的な犯罪」と位置付け、2020年12月に死刑判決を下しました。刑確定から約4年を経て、ついに最終的な法的処罰が実行されることとなりました。
白石隆浩死刑囚の背景 SNSを悪用した計画的犯行の経緯
白石隆浩死刑囚の詳細な経歴は限定的ですが、事件に至るまでの経緯から犯行の背景が浮き彫りになります。2017年当時34歳だった白石隆浩死刑囚は、風俗店のスカウト業で逮捕歴があり、執行猶予中という立場にありました。
この法的制約が後の犯行動機に大きく影響することになります。白石隆浩死刑囚の犯行手法は極めて計画的で狡猾(こうかつ)でした。
SNSを積極的に活用し、「死にたい」「疲れた」といった絶望的な投稿をする若者を標的としていました。精神的に脆弱な状態にある女性は「口説きやすい」という身勝手な判断から、悩みを抱える若者たちに接近を図っていたのです。
当初の動機は金銭獲得でしたが、実際には被害者の多くが10代から20代の学生で経済力に乏しく、現実的な金銭的利益は期待できませんでした。
この矛盾について、白石隆浩死刑囚は「お金にならなそうであれば性的暴行をして、通報されるのを防ぐため殺害した」と法廷で証言しており、犯行の性質が次第に変化していったことを自ら認めています。
執行猶予中という立場から「ばれて逮捕されたら実刑になる」という恐れが、証拠隠滅のための殺害という最悪の選択に繋がりました。