
日本の金融史において重要な節目となる出来事が7月末に実現します。SBI新生銀行による約2,300億円の公的資金完全返済により、1990年代後半に発生した平成金融危機の最後の遺産に終止符が打たれることになります。
この歴史的な完済により、同行は2025年内の東京証券取引所への再上場という新たなステージに向けた準備を本格化させました。
同行の前身である旧日本長期信用銀行は、バブル経済崩壊後の金融不安により経営が行き詰まり、1998年と2000年の2回にわたって政府から総額約3,700億円という巨額の公的資金投入を受けています。
その後、2006年と2024年に段階的な返済を行い、今年3月にも1,000億円を返済しましたが、依然として約2,300億円の未返済分が残存していました。
この残債は平成金融危機時代の公的資金として国内で最後に残っていたものであり、その完済は日本の金融業界にとって象徴的な意味を持ちます。返済手続きでは、今年3月に金融庁との間で締結した返済枠組み合意に基づき、普通株式から優先株式への転換が実施されていました。
今回の完済資金は親会社であるSBIホールディングス(HD)が全額負担します。同社は6月に社債発行により1,700億円を調達したほか、NTTとの資本業務提携における第三者割当増資で約1,100億円の資金調達を予定しています。
ネット上では、「金融業界では滅多に見ないダイナミックな動きだと思う」「SBI新生銀行が完済したことは良かったと思う」「ついに公的資金返済完了まで来たということで、喜ばしいことです」などの意見が寄せられています。
SBI新生銀行、公的資金完済で成長戦略加速へ
SBIHDは2021年12月の新生銀行子会社化以降、機動的な財務戦略を展開してきました。返済手続きの迅速化を図るため2023年9月に一度上場を取り止めましたが、7月には東証への再上場申請を予定しています。
業績面では顕著な改善が見られ、2025年3月期の連結純利益は844億円と、子会社化直後の2022年3月期(203億円)から大幅に拡大しました。
金利環境の好転により預貸金業務の収益性が向上していることから、再上場時の企業価値は1.5兆円から2兆円規模が見込まれています。
公的資金による制約からの解放により、同行の戦略的な事業展開が可能になります。地方創生を軸とした事業方針のもと、企業向けのストラクチャードファイナンスを核とした融資拡大や、地方金融機関への資本参加を含む提携強化など、M&Aを活用した積極的な成長戦略の実行が期待されます。