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【医師の論文解説】ピーナッツアレルギーに貼る治療薬 その効果は?
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お子さんのピーナッツアレルギー。
誤って口にしてしまうリスクを考えると、毎日の食事の準備も本当に大変。
なんとか治してあげたいところです。
そこでもし、皮膚にパッチを貼るだけでアレルギーが改善するとしたら、画期的だと思いませんか?
今回は、そんな期待の治療法である「経皮免疫療法(けいひめんえきりょうほう)」について、その有効性と安全性を検証した大規模な臨床試験の論文をご紹介します。
【結論】ピーナッツパッチは統計的には有意でも「成功」とは言えなかった
2019年に『JAMA』で発表されたこの研究では、ピーナッツのタンパク質を含むパッチ(DBV712、以下「ピーナッツパッチ」)を12ヶ月間使用したところピーナッツパッチを使ったグループは、偽薬(プラセボ)のパッチを使ったグループに比べて、アレルギー反応を起こさずに食べられるピーナッツの量が有意に増加しました。
しかし、研究チームが事前に「この治療法は臨床的に明確な効果がある」と判断するために設定した厳格な成功基準は満たせませんでした。
つまり、効果がないわけではないけれど、期待されたほどの高い効果を証明するには至らなかった、ということになります。
論文
米国のChildren’s Hospital ColoradoのDavid M Fleischerらは356名の小児患者を対象として、経皮免疫療法(ピーナッツパッチ)の有効性についての研究を行い、世界五大医学雑誌の1つ、米国医師会発行の『JAMA (Journal of the American Medical Association) 』に2019年3月報告した。
①研究の背景
ピーナッツアレルギーは時に命に関わる重篤な症状(アナフィラキシー)を引き起こす可能性があるものの、現在承認された治療法は存在しません。
そのため、アレルギーの原因となる食物を少しずつ食べて体を慣らしていく「経口免疫療法」などが研究されていますが、副作用のリスクも課題とされています。
そこで、より安全性が高いと期待されているのが、皮膚にアレルゲンを含むパッチを貼り、少量のアレルゲンを継続的に皮膚から吸収させる「経皮免疫療法」です。
②研究の目的
4~11歳のピーナッツアレルギーを持つ子供たちを対象に、ピーナッツパッチを1年間使用する治療の有効性と安全性を検証しました。
③研究の方法
対象者は 4~11歳のピーナッツアレルギーの子供たち356人。
参加者をランダムに2つのグループに分け、12ヶ月間、毎日パッチを背中に貼ってもらいました。
- ピーナッツパッチ群(238人): 250μg(マイクログラム)のピーナッツタンパク質を含む本物のパッチを使用。
- プラセボパッチ群(118人):ピーナッツタンパク質を含まない、見た目がそっくりの偽物のパッチを使用。
そして、治療開始前と12ヶ月後に「食物経口負荷試験」(実際にピーナッツを食べてみて、どのくらいの量でアレルギー症状が出るかを確認する試験)を行い、治療効果を比較しました。
研究結果
さて、1年後どうなったのでしょう。
①有効性について
治療に成功した(=アレルギー症状を起こさずに食べられるピーナッツの量が目標値まで増えた)子供の割合は、ピーナッツパッチ群で35.3%、プラセボ群で13.6%でした。
この差(21.7%)は、統計学的に「偶然とは考えにくい」と言える有意な差でした (P < .001)。
しかし、研究チームは「この治療は成功だ!」と自信を持って言うために、「治療効果の差は、95%の確率で15%以上でなければならない」という厳しい成功基準を設けていました。
今回の結果の信頼区間は12.4%〜29.8%で、下限値が12.4%だったため、残念ながらこの基準をクリアすることはできなかったのです。
②安全性について
最も多く見られた副作用は、パッチを貼った場所のかゆみ、赤み、腫れといった皮膚症状でした。これらはほとんどが軽度から中等度で、治療を続けるうちに減少していく傾向が見られました。
アナフィラキシーのような重いアレルギー反応が治療と関連して起きたのは、ピーナッツパッチ群の3.4%(238人中8人)で、いずれも軽度から中等度でした。
副作用が原因で治療を中止した子供は、ピーナッツパッチ群でわずか1.7%(238人中4人)と非常に少なく、治療の継続しやすさ(忍容性)は高いと考えられました。
考察
今回の研究で、ピーナッツパッチは偽薬(プラセボ)よりも効果があることが統計的に示されました。治療法の選択肢がほとんどないピーナッツアレルギーの世界において、これは大きな一歩と言えるのではないでしょうか。
ただ、研究者が設定した高いハードルを越えられなかったのもまた事実です。これは、この治療法が「誰にでも劇的に効く魔法の薬」というわけではないことを示唆しているのかもしれません。
【この研究の注意点(限界点)】
研究チーム自身も、この結果を解釈する上でいくつかの注意点を挙げています。
- 本研究では、過去に命に関わるような非常に重いアナフィラキシーを起こしたことのある子供は、安全のために対象から除外されています。
- 12ヶ月という試験期間では、長期的な効果を示すには短かった可能性があります。より長く治療を続けることで、効果がさらに高まることも考えられます。
- そもそも、成功基準として設定された「信頼区間の下限値15%」という数字自体が、臨床的にどれほどの意味を持つのかについては、まだ議論の余地があります。
とはいえ、アレルギー治療の新たな扉を開く、非常に重要な研究であることは間違いありません。今後の治療が期待されます。



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