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奇跡ではなく必然だった生還劇…379人の命を救ったプロフェッショナルたちが行う日々の取り組みの裏側とは

2024年1月、羽田空港で発生した日本航空機と海上保安庁機の衝突事故。この衝突事故は世界に大きな衝撃を与え、今なお多くの人々の記憶に刻まれています。「奇跡」とも語り継がれるほどの、乗客乗員379人全員の無事な避難。実は、この奇跡の生還の裏側には、日頃から徹底して行われる訓練と、それを統括する東京航空局(東京空港事務所)の支えがありました。
今回は、普段は表に出ることのない東京空港事務所の担当者にお話を伺い、当時の事故対応の舞台裏や、予想外の事態に備えた取り組みについて掘り下げました。
<目次>
空港の安全は「人命最優先」の初動対応から

—本日はお忙しいなか、ありがとうございます。まず、2024年1月の衝突事故が発生した直後、現地事務所として最初に行った対応についてお伺いできますでしょうか。
私たちが何よりも重視したのは、「人命を最優先にすること」です。事故発生を把握した管制塔から、直ちに指令員がいる消防庁舎に連絡が入り、消防車を出動させました。同時に、東京消防庁や医療関係者など、必要な関係機関へ応援を要請。現場が混乱するなかで、いかに早く必要なリソースを動員できるか、その初動対応が重要だと考えていました。
事故の第一報は、管制塔から消防庁舎に連絡が入ります。指令員が消防職員に指示を出し、その後に関係機関に応援要請をするという流れです。この一連の情報伝達経路は、緊急時に備えてあらかじめ決められています。
—今回の事故対応を通じて得られた教訓や、初動マニュアルに反映された点についてお聞かせください。
今回の事故を受け、いくつかの課題が明らかになりました。それらを検証・評価し、現在はマニュアルに反映させています。主な課題としては、「事故現場までの案内・誘導」が挙げられます。事故当日は、正月休暇の時期であったことから緊急車両や医師が集合する場所から現場までを誘導する人が足りず、現場到着に時間がかかってしまいました。これを改善するため、案内・誘導体制を見直しました。
事故当時に指令所にいた職員は、目の前で爆発が起きたような感覚だったと聞いています。当初はひとつの事故だと思っていましたが、現場に行くと2つの機体が関わっていることが分かり、かなり驚きました。
これらの教訓を生かしつつ、私たちは毎年、大規模な「総合訓練」を実施しています。この訓練には、空港事務所だけでなく、東京消防庁や医療関係者なども参加しています。また、職員は長崎にある訓練センターで、航空機火災や救助活動の実践的な訓練も行っています。
「本番」さながらの訓練で鍛えた想定外を乗り越える力

—今回の事故で、訓練の成果が活かされたと感じた点はありますか?
訓練の成果が最もよく現れたのは、乗員乗客が迅速に避難できたことです。今回の事故では、重傷者が出なかったことが幸いでしたが、訓練で負傷者をどこに誘導するか、人数確認をどう行うかといった手順が徹底されていたため、混乱なく避難誘導ができました。
訓練は、燃料流出や車輪火災、エンジン火災といったさまざまなシナリオを想定して行います。今回の事故後に行われた訓練は、従来に比べてより実践的なものでした。実際の事故当日の時系列に合わせ、関係者が現場に到着する時間をずらす、訓練シナリオの一部は事前に周知しないなど、よりリアルな状況を再現しました。これは、「ブラインド訓練」といい、何が起こるか分からない本番さながらの状況に対応する力を養うことが目的です。
現場では常に想定外のことが起こります。たとえば、今回の事故では機体の素材が従来のアルミニウムから、炭素繊維などの複合素材に変わっていたため、燃え方が異なり、消火に時間がかかりました。また、事故機体が2か所で同時に発生したため、初期消火に必要な消防車や人員が多く必要になりました。こうした新たな課題の検証を続け、今後の訓練に反映させていくことが重要だと考えています。

—乗客の私たちに、もしもの時に知っておいてほしいことはありますか?
何度もお願いしていることですが、避難の際は「手荷物を持たず」に、速やかに脱出していただくのが第一です。さらに避難する場所のひとつとして、現場に駆けつける「白い医療搬送用トレーラー」に直ちに集まっていただきたいです。このトレーラーは、医療資機材を積んでおり、負傷者の救護をすぐに行える場所でもあります。乗客の皆さんがここに集まることで、乗員乗客の人数確認や、迅速な救護活動が可能になります。
また、避難の最中に「携帯電話などで写真や動画を撮らない」ことも重要です。撮影に夢中になって避難が遅れたり、他の人の避難を妨げたりする可能性があるので、避難を最優先にしていただきたいです。
東京空港事務所の役割と今後の取り組み

—最後に、今後の安全強化に向けた取り組みについてお聞かせください。
私たちは今回の事故の教訓を踏まえ、以下の4つの項目を今後の重点的な取り組みとして掲げています。
- 休日・夜間の消防体制の強化
- 現場指揮所の明確化と活動統制
- 医療関係者の早期派遣基準の明確化
- 現場活動の統制強化
これらを現場に浸透させていくためにも、改定したマニュアルをもとに、総合訓練を重ねていきます。私たちは日夜、訓練に励んでおり、事故が起こった際には、訓練の成果を最大限に発揮できるように努めています。
東京空港事務所は国土交通省の機関であり、空港全体の安全管理を担っています。お客様を運ぶのは航空会社ですが、私たちは「空港の管理者」として、安全な運航のためのインフラ整備や、緊急時の司令塔として、航空会社と連携しながら仕事をしています。これを機に、私たちの活動を多くの方に知っていただけたら幸いです。


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