「プリズンカレー」からアートまで!地域でにぎわう「第12回東京拘置所矯正展」レポート

屋外の広場に複数のテントが並び、大勢の来場者が歩いたり列に並んだりしている様子

東京拘置所の敷地を一般公開し、刑務所作業製品や矯正行政の取組みを紹介する「東京拘置所矯正展」が今年も開催されました。このイベントは、刑務所作業製品の売買を通じた受刑者の社会復帰と、矯正行政に対する近隣住民の理解促進を目的としています。

毎年秋に開催されるイベントは2025年で12回目を迎え、約70の団体が参加。当日は、全国の刑務所で作られた木工品・革製品・食品などが並び、家族連れや地域住民がそれぞれのブースを訪れていました。本記事では和気あいあいとした当日の様子をレポートします。

<目次>

1日所長のテープカットからイベントがスタート

制服を着た内山信二氏がステージ上で挨拶をしている様子

例年10,000人の来場者数を集める東京拘置所矯正展。オープニングセレモニーは1日所長を務める内山信二氏のテープカットから始まりました。

「皆さま、おはようございます。私は葛飾区の新宿(にいじゅく)で生まれまして、東京拘置所は子どもの時から知っていました。今日は1日所長として、安全安心を確認しながら楽しみたいと思います」

自治会の屋台の販売スタッフと、内山信二氏が握手を交わしている様子

オープニングセレモニーの終了後、内山氏は各ブースを訪問。出展者や来場者の方々と交流しながら、刑務所作業製品の説明に熱心に耳を傾けたり、写真撮影に笑顔で応じたりしていました。

トレイに盛られた麦飯、スープ、煮物、副菜が載った再現食のセット

10時30分からは食事の安全性を確認する検食が実施されました。当日の昼食は、麦飯・鶏肉の甘辛炒め・中華風スープ・きゅうりの柴漬けです。拘置所の食事は塩分を抑えながらも、味が薄くならないように調理されており、1日で30品目取れる献立になっているそうです。

複数のカメラに囲まれながら検食を終えた内山氏は「麦飯が想像以上においしかった」と笑顔でコメントを残しました。

「プリズンカレー」など矯正展ならではのグルメが集結!

透明のフタが付いた容器に盛り付けられたカレーライスのテイクアウトパック

矯正展で真っ先に行列ができたのが、拘置所のレシピで作られたプリズンカレーです2024年は事前に準備していた800食が午前中で完売したため、2025年は2000食用意したとのことでした。

不動製パンの販売テントに、来場者が並んでいる様子

また、拘置所内で提供されている「プリズンコッペパン」のブースにも行列ができていました。このパンは足立区にある不動製パンが製造しています。

白い靴箱の上に並べられた黒の革靴が展示されている様子

東京拘置所内で提供されているのは一般的なコッペパンですが、今回の矯正展では、あんバター・ジャムバター・ピーナッツバターなどが用意されていました。

女性に人気の「マル獄シリーズ」も!人気の刑務所作業製品

建物前に設置されたテントで、来場者が列を作って並んでいる様子

刑務所で製品が作られるようになった歴史は、明治時代の初期に遡ります。もともとは土木作業や鉱山作業などの「外役」が課されていましたが、外役中の逃走事件が増えたため、明治時代の後半には監内作業の「内役」が中心となりました。その後、受刑者が製造した製品を販売する場として「展示即売会」が開催されるようになり、これが「矯正展」の始まりだと考えられています。

「ブルースティック」が多数積み上げられて販売されている様子

刑務所作業製品のブースで人気を集めていた製品のひとつが、横須賀刑務所で作られた「ブルースティック」という石けんです。汚れの付着した場所に直接塗布できるため、液体洗剤に比べてスムーズに汚れを落とせます。

白い靴箱の上に並べられた黒の革靴が展示されている様子

若い男性の人気を集めていたのが千葉刑務所の革靴です。販売員にお話を伺いました。

「千葉刑務所の革靴は1年間で約1,500足製造しています。型抜きから裁縫まですべて手作業で行うため、職人としての技量が求められます。製品の製造工法によって異なりますが、職人として1人前になるまでの期間は約10年です」

千葉刑務所は刑期10年以上で再犯リスクが比較的低い受刑者(拘禁刑施行後)が収容されており、その期間を通じて革靴製作の技術を習得しているようです。

物販テントの前で、多くの来場者が商品を手に取りながら選んでいる様子

女性客が押し寄せていたのが函館刑務所で作られた「マル獄シリーズ」の販売ブースです。「マル獄シリーズ」はトートバッグなどの布製品を中心に展開するブランド。130点以上の商品がラインナップされています。

「PRISON」のロゴがプリントされた帆布製バッグのクローズアップ

「刑務所のリュックサック ヴィンテージ風」ではパラフィン加工が施されていました。パラフィン加工とは、生地に蝋引きをすることで、防水性・撥水性を持たせながら、コシのある仕上がりや独特の張り感を出す加工方法です。パラフィン加工が施されたバックパックの相場は1万円以上ですが、「刑務所のリュックサック ヴィンテージ風」は7,000円で販売されています。

受刑者とアーティストの合作「プリズンアート」

複数のプリズンアートがパネルに掲示されて展示されている様子

小学館集英社プロダクションのブースでは、受刑者とアーティストの共作によるアート作品「プリズンアート」が展示されました。これらの展示品は、受刑者が原画を描き、アーティストが絵を重ねたものです。

プロジェクトの担当者によると、2024年に「PRISON ART PROJECT」の第1弾が開催され、9点のアート作品が誕生しました。すべての作品が完売し、売上は27万円に達したといいます。そのうち約21万円が震災の被害を受けた能登へ寄付されました。受刑者には「あなたの描いた絵が人の手に渡りました」と報告し、来場者数や寄付金の詳細も伝えたそうです。

PRISON ART PROJECTは第2弾の実施も決定し、東京拘置所からは3名が参加する予定です。

拘置所の歴史を学ぶ見学は60分待ちの大行列

中央に時計塔を備えた東京拘置所旧庁舎の建物外観

東京拘置所旧庁舎は、関東大震災のあと、司法省技師の建築家・蒲原重雄が設計し、1929年に完成しました。この日限りとなる見学会は60分待ちの行列。熱中症に気をつけながら、順番を待ちました。

刑務所出所者の再犯率や推移を示した説明パネル

旧庁舎内部には東京拘置所の歴史を説明した展示品や、矯正広報の展示パネルが設置されており、刑務所の情報や知識を深く学ぶことができました。

日本一の収容人数を誇る12階建ての新庁舎

2007年に完成した現在の庁舎は、3,010名という日本一の収容人数を誇る12階建の建物です。開放的な雰囲気に見えますが、広場から拘置所の内部は確認できません。また、被収容者も広場を見ることはできず、空しか見えないそうです。

ファミリー連れが楽しめるアトラクションが満載

こどもたちが列を作り、東京拘置所職員がポップコーンを配布しているブースの様子。

今回の矯正展に訪れたファミリー層でにぎわっていたのが、「キッズ刑務官撮影コーナー」です。撮影コーナーの近くでは無料でポップコーンが配布されていました。

東京オリンピック金メダリスト・新井千鶴さんを中心とした三井住友海上女子柔道部による柔道教室を開催

広い柔道場で、子どもたちが動きながら柔道の指導を受けている様子

また、地域の小中学生に練習場所として提供している柔道場では、東京オリンピック金メダリストの新井千鶴さんを中心とした柔道教室が開催。鬼ごっこなどのプログラムも用意されており、会場は子どもたちの楽しい声に包まれていました。

共生社会を築く場所を実感できた「第12回東京拘置所矯正展」

2024年末時点で確定死刑囚の約半数の49名を収容する東京拘置所ですが、矯正展には地域の住民や家族と一緒に訪れている人が数多く見られました。東京拘置所矯正展を通じて伝えたいのは、「刑務所は閉ざされた場所」ではなく、共生社会を共に築く仲間ということです。

矯正展を訪れれば、その背景にある職業訓練や更生への努力を知ることができ、社会復帰を応援するきっかけにもなります。矯正展は「刑務所の中を知る場」であると同時に「地域が安心して支え合う未来」を考える大切な機会だと実感できました。

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梅宮照之ライター

投稿者プロフィール

2000年生まれ。大学在学中にライター活動を開始。
横浜を拠点に新たなジャーナリズムの在り方を追求している。

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