退職代行はどこまでが合法?モームリ騒動で見えた“グレーゾーン”をEXIT新野社長が解説

退職代行

昨今、利用者が急増している「退職代行サービス」。自ら退職を言い出せない人にとって、救世主となる同サービスですが、法律と密接な関係であるため提供内容によっては違法となるケースがあります。

本記事では、日本で初めて退職代行サービスを提供したEXIT株式会社の代表取締役社長である新野俊幸氏に、退職代行サービスの内容と法に触れるケースについて解説してもらいました。

<目次>

退職代行が法律に触れる可能性は?モームリを例に解説

株式会社アルバトロスが運営する「退職代行モームリ」に家宅捜索について解説するEXIT株式会社の代表取締役社長・新野俊幸氏

ーーまず、EXIT株式会社が提供する退職代行とはどのようなサービスなのでしょうか?

ひと言でいえば“伝書鳩”のようなサービスです。退職を希望する本人の意思を、勤めている企業へ連絡しています。退職届のような法的書類は本人が作成し郵送するため、連絡の取り次ぎという立場を徹底しています。

利用者にとってどこまでお願いできる範囲なのか理解が曖昧な方もいらっしゃいますが、我々は会社側との交渉を一切行いません。ここは創業当初から徹底して守ってきた部分です。個別具体的な事案に対して法的なアドバイスは一切せず、一般的なことしか言いません。たとえば「有給消化をしたい」という相談が来た場合は、弁護士を自分で探して依頼するよう伝えて弊社への依頼は断ります。

ーー退職代行は内容によっては法律に触れる可能性があると思います。株式会社アルバトロスが運営する「退職代行モームリ」に家宅捜索が入った件が記憶に新しいですが、どのような疑いがかけられているのか解説をお願いします。

私は法律の専門家ではないので、あくまで報道ベースになりますが、大きく2点あると思っています。

まず1点目が、依頼者から報酬を受け取ったうえで、特定の弁護士に依頼者を紹介していた可能性について。さらに、そのうえで弁護士から紹介料として報酬を受け取っていたという疑いがあります。

2点目に、退職を巡って会社側と法的な交渉を行っていた可能性があるのでは?と、疑われています。

これらは、弁護士法第72条に違反するので民間業者がやってはいけない行為です。まだ捜査中の段階なので正確なことはわかりませんが、捜査員およそ100人態勢で家宅捜索されたとのことなので、当局が何らかの証拠につながる情報を把握している可能性はあると思います。

ーーモームリの報道を受け、マイナスな反響・プラスな反響はありましたか?

「やっぱり退職代行は違法じゃないか」という退職代行業界をひと括りにされた声がありました。犯罪者扱いまではいかなくてもネガティブなコメントは見られ、とても遺憾です。我々を含め健全にやっている業者はあるので……。

その一方「やっぱり元祖(EXIT)が正義」「最後にパイオニアが勝つ」というポジティブなコメントもありました。正しく積み上げてきたものが今回改めて世に評価されたのかなと思います。

ーー今回の報道を受けて今後の業界に動きはありそうですか?

なんらかの規制の流れが来る可能性はあると思っています。仮に民間の退職代行業者を規制する方向に進むことがあったとしても、それは社会が決めることだと思いますので、致し方ないかなと。

社員教育と法令遵守で業界を支えるEXITの取り組み

EXIT株式会社の取り組みついて話す代表取締役社長・新野俊幸氏

ーーあらぬ疑いをかけられないためにも、社員教育は大切だと思います。EIXTではどのように対策しているのでしょうか?

マニュアルは徹底して作り込んでいます。もちろん弁護士にもチェックしてもらい、内容に問題がないことも確認済みです。マニュアルがしっかりしている前提で、それを扱う従業員の教育も徹底しています。法的なアドバイスに踏み込むことは一切ありません。

社員教育はEXITの強みであり、他社と大きく違う点だと思います。たとえばモームリの場合、従業員が50人ほど在籍していたようですが、その中には雇ったばかりの人も多く含まれていたのではないかと思います。

退職代行業を営むにあたり、そのような体制は非常に危険だと思っていて、おそらく非弁行為に関する理解が甘い状態で業務を行っていた人もいたのではないかと思います。

EXITは2017年からサービスを提供していて、何年も経験を積んだベテラン社員が非弁リスクを深く理解したうえで対応しています。

実は高等裁判所で裁判になった事例が過去にあるのですが、結果的に、EXIT社の退職代行は「弁護士法に違反していない」という判決が出たので、あくまで個別事例ではありますが、弊社が法律を遵守している証明にはなるかなと思います。

ーー非弁行為に該当するサービスを従業員が提供してしまったと仮定した場合、従業員も罪に問われるリスクがあるのでしょうか?

その場合は従業員も疑いがかけられる可能性があるのではないでしょうか。当然、監督立場にある社長や幹部という立場は責任があると思います。従業員を守るという意味でもマニュアル作りや徹底した教育は欠かせません。

ーー法律を守ってサービスを提供しているEXITですが、この業界を健全に発展させていくために取り組んでいることはありますか?

日本初の退職代行業者として、業界を作ってきた側なので、これまではサービスの認知を広げるというところに特化してやってきました。しかし、今回のモームリの件を受けて、本格的に業界全体を健全化する取り組みが必要だと思っているところです。

たとえばそのひとつが、「一般社団法人」の立ち上げです。自主規制が必要な業界だと思うので、民間の退職代行業者が守るべきガイドラインのようなものは作りたいです。もし可能であれば、東京弁護士会の非弁護士取締委員会のような専門機関にも協力を仰げたらいいなと思います。

働く人の「次の一歩」を後押しする退職代行の価値

退職代行のグレーゾーンについて東京報道新聞の取材を受けるEXIT株式会社の代表取締役社長・新野俊幸氏

ーーそもそもこの退職代行サービスを始めたきっかけは、新野さん自身の退職がしづらかった経験からだそうですね。

そうですね。私自身が3社経験しており、それぞれ本当に退職が苦しかったんです。たとえば1社目は、先輩や上司、家族、友人、周りの全員が止めてくるみたいな状況で、罪悪感が大きく、胸がつまる思いでした。2社目では人事に「逃げるなよ」と言われて、いまだに「退職(転職)すること」の “何” が「逃げ」なのか全く理解できないですね。

3社目は社内の関係も良かったし、ある程度の成果も出していたので、人間関係はうまくいっていたと思います。ただ、みんなで目標に向かって頑張ろう!という風潮の会社だったので、それはそれで裏切り感が強く、なかなか退職を言い出せなくて……。憲法で「職業選択の自由」が認められているのに、実態としては退職するだけで白い目で見られるという、それっておかしくないですか?

ーー退職代行サービスを利用する層は、やはり精神的にしんどい思いをしている人が多いのでしょうか。

始めた当初は、泣きながら依頼してくるとか、呼吸が苦しくなり出勤すらできない中で電話をくれるとか、今のしんどい境遇から抜け出すために依頼される方が多かったです。「牢獄から出られた」「新野さんはメシアです」など言われたこともあります。データがあるわけではありませんが、自殺者の減少には貢献できていると自負しています。

最近の傾向としては、単純に時間の節約(プロセスの省略)を目的として利用する方も増えてきています。退職代行を使えば、退職に関するコスト(上司への報告における精神的なコストや、周りに気を遣って必要以上に退職時期を引き延ばすなどの時間的なコスト)を劇的に圧縮できるので、早く次の環境にいけることがメリットですね。たとえばAIスタートアップのような成長産業においては、1ヶ月入社が遅れるだけでも、大きな差がついてしまいますので。

ーー今後の業界はどうなっていくと予想しますか?

退職代行は決してなくならないと思います。規制によって、退職代行が弁護士法人だけの独占業務になる未来もあるかもしれませんが、それでも良いと思います。「職業選択の自由」は誰もが等しく持つ権利なので、退職できずに苦しんでいる人がいる以上、退職代行があってしかるべきだと考えます。

ーー最後に退職代行の利用を考えている人にメッセージをお願いします。

退職代行は、本当に自分が輝ける環境にいくためのひとつの「合理的手段」に過ぎません。家事代行を利用するような感覚で、ただ事務的な手続きを外注しただけという感覚で使っていただけたらと思います。

自分で退職意思を伝えないことに対して、「ダサいよね」みたいな意見もありますが、本当にダサいのは「やめたいという自分の気持ちを無視して、人生の貴重な時間を無駄に浪費してしまうこと」だと思います。

退職代行EXIT
https://www.taishokudaikou.com/

丸山希商業ライター

投稿者プロフィール

愛媛県出身・広島県在住。
FP2級を保有しており金融記事・ライフスタイルコラムが得意。

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