オートロックマンションの共連れ事件はなぜ起こる?元警察官が教える年末年始に気を付けたい防犯対策

元警察官で防犯アドバイザーの佐々木成三氏

冬は日没が早く、侵入者が行動しやすくなるなど、犯罪が多発すると言われている季節だ。特に最近は、特殊詐欺の被害が社会問題にもなっている。今すぐにできる防犯対策や最新の犯罪事情を知っておくことで、少しでも被害を減らせるだろう。

そこで、今回は2025年11月に行われたパナソニック「防犯対策2025」ラウンドテーブルに登壇した元警察官で防犯アドバイザーの佐々木成三さんに、最新防犯対策術について詳しく聞いた。

<目次>

特殊詐欺の被害は1,000億円を超える

近年、東南アジアを拠点とする特殊詐欺グループが逮捕されたり、闇バイト強盗事件が頻発したりと、詐欺や犯罪は多様化し、私たちにより身近になっている。そのなかでも特に被害額が顕著になっているのが特殊詐欺だ。特殊詐欺被害総額は令和5年は日本全国で452億円(前年比82億円増)だったが、令和6年には721億円に増加。令和7年の今年は8月末時点ですでに831億円を超えており、年間被害総額は1,200億円を超える可能性も示唆されているほど深刻な状況だ。

佐々木さんが刑事を始めた平成10年の初期には犯罪の認知件数は相当数だったという。それが約20年をかけて犯罪認知件数は減少傾向に転じた。しかし「令和7年版 警察白書」によると、2024年の財産犯被害額は4,000億円を超えて過去最高となり、刑法犯認知件数が過去最悪であった平成14年時の被害を上回る額となった。


つまり、一件あたりの被害額が高額となっているため、犯罪件数が減少したからと言って安全とは言い切れない。犯罪の手口がより巧妙化しているとも言える。

特殊詐欺は高齢者をターゲットにするイメージが強いかもしれない。しかし令和4年と比べると、令和7年は特殊詐欺全体で高齢被害者の割合が大きく減っている。今や若者も防犯対策をしなければ被害に遭う可能性が高い時代に入っていることを知っておいた方が良いだろう。

防犯について語る佐々木成三氏

油断している若者や治安のいいエリアこそ狙われてしまう理由

佐々木さんによると、犯罪は手口が巧妙化しており、犯罪組織は対策をしていない被害者や地域を狙う傾向があるという。「うちの周りは治安がいいから大丈夫」「若者にはオレオレ詐欺の電話がかかってくるわけがない」と、油断している層こそ、最も危険ということはもはや明白だ。

たとえば、被害者が急増している偽警察官詐欺では、電話をかけてからLINE通話に誘導し、ネットバンキングで振り込みをさせるなど、電話やネットが繋がっていればどこでも詐欺ができるリモート型が主流になっている。


そのため、非対面のやり取りやデジタル機器に慣れている世代ほど操作に抵抗がなく、若者が被害に遭うケースも少なくない。さらに「自分の名前や住所を把握している=本当の警察だ」と電話口の偽警察官を信じてしまう人もいる。


しかし、実際には過去の卒業アルバムや会員登録などで漏洩した個人情報が、犯罪者の手に渡っている可能性が高い。またこのスマホのビデオ通話で騙す手法の詐欺では、スマホを持っていない高齢者に対し、直接スマホを送り付けてビデオ通話に誘導する手口も確認されている。そのため「スマホを持っていないから自分は大丈夫」とは言い切れないという。

一方で留守の家に侵入したり金品を強奪したりする事件では、防犯意識の高さが被害を分ける決め手となる。ただし、防犯カメラを設置するだけでは十分ではない。カメラは被害後の証拠にはなるが、犯罪を未然に防ぐ効果は限定的だからだ。


とある事件では、犯人が防犯カメラの存在を知らずに侵入したものの、「こら!」という住人の一言で逃げて行ったという。留守だと思って侵入した家に住人がいたとわかれば、犯人は逃げていくということは重要なポイントだ。


映画『ホーム・アローン』で主人公が、マフィアのボスの声を大音量で流したり、ホームパーティーを開いて留守を偽装したりして強盗を撃退したように、佐々木さんは「この手法は現代でも十分に活用できる」と強調している。

さらに、佐々木さんは「長期不在であることがバレる家は犯罪者に狙われやすい」と警鐘をならす。


犯人は、侵入前の下見の際に、車が長期間止まっていないことやインターホンを押して留守を確認することもあるという。そこで、佐々木さんがおすすめするのがスマート家電の活用だ。

防犯に役立つパナソニック商品

インターホンが鳴っても遠隔で応対して声を出したり、時間を設定して自動的に照明を点灯させたりすることで、在宅を装い、犯罪者を退散させやすくなる。また防犯カメラは、ライトもセットで設置しておくのが理想的だ。侵入した時点でライトがつけば威嚇としての効果を発揮してくれる。

若い女性は1人暮らしだとバレないことが対策

またマンションに住む人が注意したいのが「共連れ事件」だろう。


これは住人がドアを開けた隙に、不審者が後を追って一緒に入り込んで殺人や強盗などに及ぶ手口である。特に多いのが置き配を装ったケースだ。


最近では、デリバリー業者が背負っているデリバリーリュックがあれば、住人に怪しまれることなく共連れでマンションに入れてしまう。さらに、このリュックはネットでも売れているという。共連れが成功すれば、ピンポンダッシュのようにすべての無施錠の家を確認でき、そこから留守の家に侵入することが容易となってしまう。


「オートロックマンションに住んでいるから安全」は、もう通じないというのが現代の常識だと認識しておくべきだ。

さらに、オートロックマンションで共連れが発生する背景には、住人同士の関係が希薄になっている現状がある。犯罪者が後ろからついてきて一緒にマンションに入っても「この人も居住者なんだろう」と思ってしまうのだ。


だからこそ、近隣の人と関係性を作ることも、地域コミュニティの防犯につながっていることも防犯につながる。また怪しいと思ったら、知らない人と一緒にマンションのエントランスに入らないようにし、置き配ボックスを活用するなどの対策も欠かせない。

さらに女性1人暮らしをしている若い女性は、1人暮らしだと周囲にバレないことも防犯対策となる。外出時や帰宅時には「いってきます」「ただいま」と声に出す、帰宅する1時間前にリモート操作で家の電気をつけるといった工夫をすることで、犯罪者から目をつけられにくくなる。録画・録音ができたり音声を変えて室内から男性の声で応答ができたりするワイヤレステレビドアホンやモニター付きドアカメラを使うのも効果的だろう。

佐々木さんが警察官時代に逮捕した事例では、尾行した女性がマンションに入ってからどの部屋で電気がつくのかを確認して部屋番号を把握していた犯人がいたという。とにかく1人暮らしなのか、どの部屋なのかをカモフラージュする意識が、自分を守る鍵となる。

佐々木さんは、「犯罪者を見極めるのは非常に難しいので、とにかく犯罪者と対面しないことが大事」だと語る。


たとえば、1階で物音がしたとしても2階にとどまるなど、対面して最悪の事態が起きないようにすることが基本だ。そのうえで、もし怪しい人が家の周辺にいると思ったら迷わず警察に通報する意識を持つことが地域の防犯につながるという。


ただ「怪しいけれども通報するほどでもない」と感じる場合は、緊急通報の119ではなく、警察相談専用ダイヤルの「♯9110」にかけることもおすすめだ。また、万が一の時に備え、110番を複数の手段で行えるようにしておくことも重要である。


スマートフォンから番号を押すだけでなく、Siriなど音声認識アシスタントや緊急SOS機能などを知っておくだけでいざというときに身を守ってくれるだろう。迷惑電話防止機能付き電話機など110番ができる迷惑電話防止機能付き電話機などスマート家電の導入も非常に効果的だ。

最近の特殊詐欺や闇バイトによる侵入事件などの増加を受け、警察や自治体も防犯対策を呼びかけたり、企業も自治体と連携して積極的な取り組みが行われたりしている。


しかし、それでも「自分は大丈夫」と油断をしてしまう人も少なくない。実際に犯罪に巻き込まれてから「対策しておけばよかった」と後悔しないように、日頃から防犯意識を強く持っていくのが大切だ。

角すみこフリーライター

投稿者プロフィール

東京在住のフリーライター。ジェンダーや社会問題、経済、ビジネスなどの記事を執筆中。

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