限界集落から生まれた“働く希望”。山奥にオープンした就労支援の拠点「山の駅」が目指す未来

山の駅の看板

北海道岩見沢市からさらに山奥へ進み、富良野市へ向かう途中に位置する三笠市幾春別町かつては炭鉱で栄えた町も、現在は人口わずか数百名、その多くが高齢者という限界集落となっています。そんな場所に「山の駅」はオープンしました。

従来語られてきた就労支援の常識を覆し、地域共生と個人の可能性を追求する「山の駅」の社会的意義について、運営を担う株式会社i-TAK(就労継続支援B型事業所CANOW~かなう)の今泉氏と佐々木氏にお話を伺いました。

<目次>

自立と雇用と交流。地方と共生する新たな支援の在り方

プレオープンを迎えた山の駅
プレオープンを迎えた山の駅

「山の駅」は、三笠市でグループホームの運営を行う一般社団法人ガネーシャー代表の杉浦一生氏が発案し、同じく三笠市で障がい就労支援を行う株式会社i-TAK代表の今泉拓人氏が運営を担当。2025年6月20日にオープンしました。

(前回の取材記事)
https://tokyonewsmedia.com/archives/7589

「山の駅」と聞くと、多くの人がコンビニエンスストアや道の駅のような商業施設を想像するかもしれません。しかし、その実態は大きく異なります。地域住民と障がいを持つ人々が自然に交流し、共に生きる場として設計された、これまでにない新しい形の障がい者就労支援施設です。

コンビニエンスストアを改修して誕生した「山の駅」には、飲み物や食品、利用者が手作りしたアクセサリーなど、多様な商品が並びます。しかし、最も重視されているのは「買い物の場所としての役割ではない」と今泉氏は語ります。

お話を伺った株式会社i-TAKの今泉氏と佐々木氏
お話を伺った株式会社i-TAKの今泉氏と佐々木氏

「山の駅は地域の人々が集い、利用者と地域の人々が椅子やテーブルでゆっくり談話できる“憩う場所”となることが目的なんです」

「山の駅」は、杉浦氏が構想した「偏見のない交流の場」としての役割を担い、利用者が地域住民と自然に触れ合える場所だと続けます。

施設利用者がやってみたいという意思から考案し、作成された商品
施設利用者がやってみたいという意思から考案し、作成された商品

「利用者の雇用先を生み出す」という命題を掲げ、単なる通所先ではなく、地域社会とのつながりを重視し、利用者一人ひとりの自立に向けた支援を行うのが「山の駅」です。建物の改修には地元の建設会社や大工が協力。さらに、隣接する「更科食堂」や市内の福祉施設などに就職する機会を増やすなど、地元との連携も積極的に行われています。

これにより、利用者が市内で働く選択肢が広がりました。i-TAKの職員や利用者自身も「地域住民として生きていく」ことをテーマに、地域の花植えや夏祭りなどのイベントに積極的に参加しています。これらの活動を通じ、「横のつながり」が増えたと佐々木氏、今泉氏は話します。

家族のように温かな関係性。「できない」とあきらめない

家族のように仲睦まじく話している様子
家族のように仲睦まじく話している様子

取材時、利用者は革細工の作業をしていました。作業内容は、利用者の得意分野ややりたいことを尊重し、個々に合わせて提供していることが、他の支援施設と一線を画すものだと感じました。そんな利用者ファーストの支援の根底には、i-TAKが掲げる「家族的支援」という理念があります。

「利用者一人ひとりを家族だと思って接しています。職員も含めて、皆が家族だという温かい関係性を大切にしています。家族だからこそ本人を理解して、可能性を引き出す支援ができるんです」

革細工の作業風景
革細工の作業風景

飲食物の販売という商業的側面はあるものの、あくまで利用者の「可能性を引き出すためのツール」とのこと。無理のない作業から自信をつけ、できないと諦めずに一般企業への就職を目指す場として動き出しました。

「山の駅」を人々の憩いの場にすることで、利用者が自然に地域社会と関わり、新たな刺激を受け、多様な人々とコミュニケーションを深める機会を創出。挨拶や感謝といった基本的な社会性を育む日中活動の場として活用されています。社会に適応することが苦手な利用者でも、この温かいコミュニティの中で、少しずつ社会とつながるステップを踏めるのが大きな特徴です。

地域と利用者の共生拠点へ。「山の駅」が描く未来

広い机や椅子が置かれて休める場所になっている
広い机や椅子が置かれて休める場所になっている

オープンしたばかりの「山の駅」には、2つの大きな展望があります。1つは、観光客や地域の人々が気軽に立ち寄れる休憩所としての機能。もう1つは、利用者が働くための訓練の場としての役割です。

「ここは、岩見沢市から富良野市の方面へと向かう山道の途中にあり、間に休める場所がありません。トイレ休憩や飲み物の購入、談話の場として最適です」と佐々木氏。

「地域の方が気軽に立ち寄って世間話をして帰っていく、そんな場所を目指しています。事業が地域の方々のお力添えのおかげで成り立っているので、地域への恩返しもしたいです」

開発中のオリジナル商品「国王のプリン」
開発中のオリジナル商品「国王のプリン」

地域住民や観光客が集う場所。そして、障がい者の可能性を引き出すための居場所。地域と共に歩む「山の駅」は、障がいの有無に関わらず誰もが安心して働き、生きられる社会の実現を目指す、希望の光となっています。

ここには、障がいを持つ人々と地域が支え合いながら、ともに未来をつくる新たな就労支援のかたちがありました。

翌檜 佑哉ライター

投稿者プロフィール

現地取材や専門家へのインタビューを重ね、一次情報に基づいた正確でわかりやすい記事を執筆。独自の視点から社会や地域の課題を取り上げる。

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