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- その行動が生死を分ける。クマ被害を防ぐための正しい防御策とは?

東北地方や北海道を中心に、年々右肩上がりに増えているヒグマの出没件数。
かつては人が立ち入りにくい山林での遭遇が主でしたが、近年は住宅街でも目撃や被害が報告されるようになりました。私たちの生活圏と野生動物の境界は、いま確実に曖昧になりつつあります。
今や熊害(ゆうがい)は山に入る者だけでなく、地域住民にとってもクマ対策は避けて通れない課題です。
本記事では、クマとの遭遇を未然に防ぐ行動から、物理的な襲撃を受けた際の生存率を高める防御姿勢まで、実戦的なノウハウを解説します。
<目次>
人慣れしたクマと出会わないためには?

人間が暮らすエリアと野生動物の生息域を分けていた境界線は、近年、急速に曖昧になりつつあります。2025年はクマによる人身被害が全国で230人にのぼり、死亡者数も過去最悪の13人を記録しました。
これは、かつて人間を恐れていたクマが、ゴミや農作物の味を覚えたことで、人間を「避けるべき相手」ではなく「食べ物につながる存在」と学習してしまい、人慣れが加速しているためと専門家は分析します。
2023年に発生した北海道 朱鞠内湖(しゅまりないこ)での人身被害では、釣り人が単独で行動していた際にクマに襲われました。襲われた原因としては、魚が豊富にいる場所をクマが学習していたこと、周囲への音出しが不十分だったことが挙げられます。
さらには、見通しのよい場所にいたにもかかわらず、クマが気づかれないまま接近した可能性も指摘されています。人間側がクマを意識していない状況は、最も凄惨な結果を招いてしまう可能性が高いことがわかるでしょう。
クマとの遭遇を避けるには、ヒグマの鋭い嗅覚や聴覚に意識的に働きかけ、人の存在を知らせて接触を避けることが大切です。
・食料の管理に気をつける

ヒグマの嗅覚は数キロ先の匂いをも察知します。特にキャンプや登山では、食料をテント内に置くことは、クマを自身の寝床へ招き入れてしまう原因となります。食料やゴミは密閉容器に入れ、テントから十分に距離を取った場所で管理することが欠かせません。
・音で人間の存在をアピール

山道のような見通しの悪い場所では、人間の存在をクマに知らせる必要があります。ただし、クマ鈴の音は雨音や川の音で消されやすく、人に慣れているクマをおびき寄せてしまうデメリットもあります。そのため、大きな声を出す、不定期にホイッスルや爆竹を鳴らす、ラジオを流すといった、より確実に存在を伝えられる手段を組み合わせましょう。
| 手段 | メリット | デメリット |
| クマ鈴 | 手軽に継続的な音を出せる | 沢音や強風で聞こえづらい。ワンパターンになりがちで、音に慣れたクマには逆効果 |
| ホイッスル | 鋭い音で遠くまで音が届く | 常に吹き続けるのは困難 |
| 爆竹 | 大きな音が出る。猟銃の音に近い音が出る | 突発的に音を鳴らすことができない。扱いが難しく、火傷や火災のリスクがある |
・周囲の痕跡を見る
熊が近くにいる場合、周囲の痕跡(足跡、糞、木に残された爪痕)が残っている可能性があります。足跡、糞、木に残された新しい爪痕などは、その場所が「クマの活動圏内」である可能性が高いです。これらを発見した際は、近くにクマがいる危険性があるため、速やかにその場を離れましょう。
クマと対峙してしまった時の対処法

もし万が一、クマと対峙してしまったらどうすればよいでしょうか。過去には「死んだふり」をして無抵抗で横たわることが推奨されていたこともありましたが、根拠はありません。ただ単にクマの好奇心を刺激し、噛みつかれるリスクもあります。
また、クマは自分から離れるように動くものを「獲物」と判断し、無意識に追いかけてしまう本能があります。一度そのスイッチが入ってしまうと、クマの行動を止めるのは極めて困難です。
だからこそ、至近距離でクマと向き合ってしまった際には、パニックに陥らず、冷静に状況を判断した行動が強く求められます。
・まずは止まること。背中を見せての逃走はNG
背中を向けて走る行為は絶対にしてはいけません。まずは止まって、クマのほうを見ながら、背中を見せずに、一歩ずつゆっくりと、後ずさりをして距離を広げましょう。
・クマスプレーを使用する
クマスプレーは、トウガラシの辛味成分(カプサイシン)を噴射し、クマの粘膜に激しい刺激を与えて怯ませて撃退するための護身用スプレーです。数メートルから10メートル程度の近距離で顔に当てることで効果を発揮しますが風向きや距離感によって効果が変わるため、使用には難しさも伴います。
また、対峙している時は、鞄から道具を取り出す余裕はありません。なので、クマスプレーはカバンなどにしまい込まず、腰につけるなど、すぐに使える位置に装備しておきましょう。
クマの攻撃から身を守る防御姿勢
クマによる襲撃を避けられない場合、最終手段として防御姿勢を取ることが重要です。防御姿勢の目的は、人間の構造的な弱点である「首」や「腹部」を物理的に守ることにあります。
かつては、クマに遭遇した際の対処法として「死んだふり」が語られることもありましたが、科学的な根拠はなく、かえって危険です。致命傷を避けるためには、地面に伏せ、両手で首の後ろをガードし、腹部や首、頭部を守るようにしてください。

引用:新潟県
防御姿勢の3要素
- 頸部を守る
両腕を首の後ろで組み、頸動脈や頸椎を牙から守ります。 - 腹部を隠す
うつ伏せになり、地面に密着することで内臓へのダメージを防ぎます。 - 接地面積の確保
両足を広げ、クマに体をひっくり返されないよう安定させます。
専門機関による人身被害の分析結果によれば、ヒグマによる攻撃の約8割が頭部および顔面に集中しています。これは、立っている人間に対してクマが前足や口を出しやすい高さであることや、本能的に急所を認識している可能性が高いと言えます。頸動脈を損傷すると、数分で失血死に至る場合があるため、腕で首を覆う動作を絶対に忘れないようにしましょう。
実際にクマに襲われ生存した安藤氏の証言

熊害はいつどこで起きるのか。それは、誰も予測できません。北海道札幌市在住の安藤伸一郎氏も、予期しないタイミングでヒグマに襲われてしまいました。
「地下鉄駅へ向かう道中、駅まであとわずかという地点で、背後から猛烈な衝撃を受けました。左腕を貫く激痛に襲われた際、目の前に現れたのはクマでした」
必死に頭を保護する安藤氏に対し、熊は無慈悲に体を噛み続けました。必死に「助けて!」という叫びながら激痛に耐えている時、パトカーのサイレンにより九死に一生を得ます。
しかし、事件から5年が経った今も、安藤氏の身体には痛々しい傷が刻み込まれています。現在も神経の痛みがあるため、自費で毎日服薬をする日々が続いてると、安藤氏は語りました。

都市部であっても、野生との境界線は曖昧です。暗い所では1人で歩くことを避ける。この当たり前を守るルールが、生死を分けると言えます。
ヒグマとの遭遇から命を守る鍵は、事前の回避行動と、襲撃時の正しい防御姿勢にあります。遭遇を避けるために音と匂いの管理を徹底し、万が一の時には「うつ伏せになって首を守る」姿勢を最後まで貫いて、自分の身を守っていきましょう。







」の真実と「坂村健」氏の驚くべき成果について」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)-150x112.png)








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