
「終活」という言葉に、みなさんはどんなイメージを抱いているでしょうか。
「なんとなく暗いもの」「避けたい」「考えたくない」「粛々と誰にも知られずにひっそりと」などなど…。日本にこの「終活」という言葉が登場した2009年頃は、「自分の死後に備えて、身辺を整理しておく」という実務的な意味合いが強いものでした。
しかし今、その考え方は少しずつ変わってきています。生前整理に加え、「自分らしい老いの過ごし方を考える」「やり残した夢を叶える」「新しいことに挑戦する」など、終活は単なる準備ではなく、「これからをよりよく、前向きに生きるための時間」として、多様な広がりを見せているのです。
<目次>
かつての終活の定義とは
我々がこの「終活」という言葉から想起される“具体的な活動”は、かつて以下のようなものでした。
- 葬儀・お墓の準備
自分の希望する葬儀の形式や、お墓をどうするかを決めておく。 - 遺言・相続の準備
遺言書を作成し、財産の分配などを決めておく。 - 医療・介護の意思表示
延命治療を望むかなど、終末期医療における自分の希望をリビング・ウィル(生前の意思表示)として残す。 - 身辺整理(生前整理)
家財やデジタル遺品(PCやスマートフォンのデータ)などを整理する。
テレビや新聞などでも「終わりに向かい、粛々と一人で準備する」という、ある種“寂しい”側面が先行し、どちらかいうと「悲しい」「避けたい」というイメージが強くなっていったのだと思います。

終活メイクから熟年婚活バスツアーまで、「終活2.0」とは
患者の半分は50代以上!?“アートメイク”がシニア層に大人気!
最初に話を聞いたのは東京・渋谷区の美容皮膚科クリニック「東京イセアクリニック」。
まゆ毛やくちびるを理想の形・色のまま保てる美容医療「アートメイク」の施術などが人気で、意外にも最近では50代以上の患者も増えているのだと言います。
その理由を、東京イセアクリニックでアートメイク専任看護師として働く柴田さんに聞いてみました。
「年を重ね、そもそもメイクが大変になってきたことや、少しでも若々しくいたいからと言った理由でカウンセリングを受ける方が増えています。中には90歳手前の方や、高齢男性の方も一定数います」
70代の女性患者


実際に同クリニックが実施した調査によると、アートメイクを希望する60歳以上の患者数は、3年前に比べて2.1倍と倍増し、アートメイクのカウンセリングを受ける50代以上の患者の割合は、2020年度の10.6%から、2023年度には21.7%と増加しているといいます。
なかには娘や孫からのプレゼントとして「アートメイク」を送られる患者さんもいるんだとか。
「“最期の瞬間に美しくいたい”という、いわゆる終活の一環と捉えている方もいらっしゃいます。一方で、アートメイクをしたことで、ファッションなど見た目にも気を遣うようになり、若々しくなれたという声をいただくと私たちも素直に嬉しい気持ちになりますね」
カップル成立率は50%以上!人気急増のシニア婚活バスツアー
“新たな終活の形”として最も注目を集めるもののひとつが、シニア向けの「婚活バスツアー」です。バスツアーを企画する「株式会社アイリスツーリスト」代表取締役社長の駒井直人さんによると、「人生の最後を一人で迎えたくない」という思いから参加を決意する人が増えているそうです。
駒井社長は、同社のシニア向けの婚活バスツアーの数はコロナ前と比べ、3~4倍に増えているといいます。
「きっかけはコロナだったと思います。コロナ禍での孤独感や『いつ自由がきかなくなるかわからない』という差し迫った感情がうまれた中で、パートナーが欲しいと感じたシニアが多かったということだと思います」


ツアーの内容は若い世代とは大きく変わらないものの、運営側は少しでもマッチング率を上げるべく、今年4月からアプリを導入。ツアー中の各ポイントで、参加者が気になっている異性を運営側に知らせることで、マッチング率が向上しているとのこと。最近では5割ほどのカップルがマッチングするそうです。

昨年4月に実施されたシニア向け婚活バスツアーに参加されたIさんとNさんは、ツアーをきっかけに交際をスタートし、現在はご結婚されています。
「人生の残り時間は少なくても、その分、一緒にいる時間を大切にし、仲良く幸せな日々を過ごしていきたいと思っています。まだまだ人生捨てたもんではないことをハピネスツアーのおかげで知ることができました。皆様に幸あれと願っています」

「必ずしもカップル成立や結婚がゴールではない」と駒井社長は語ります。
「孤独になりがちな独身のシニアがこのツアーをきっかけに友達になったりと、人生の終盤にむけて、一緒に年を重ねられる仲間が一人でも多くの方にできたらという思いでバスツアーを運営しています」
「ほどよい距離感」“墓友”同士で生前の交流も
「家族に迷惑をかけたくない」「最期は誰かとつながっていたい」そんな思いから、親族ではなく友人同士で将来同じお墓に入ることを約束した関係、「墓友(はかとも)」を選ぶ人が増えています。背景には、高齢の単身世帯の増加や年間約5万8千人にのぼる“孤独死”の実態など、終末期をめぐる不安があるといいます。
近年では、「墓友」は単なる縁組ではなく、霊園で生前に共に集まったり、読書会、手芸、ヨガ、クリスマス会など様々なイベントを開催するコミュニティとしての広がりも見られます。
合葬墓などを運営する一般社団法人コミュニティネットワーク協会の元理事長・近山恵子さんは、“墓友”という関係は、「新しい高齢社会の仕組み」だと語ります。
「自分が好ましいと思った人たちと新しい縁を結ぶことは、『血の縁』じゃなくて『結ぶ縁』ですよね。生前に縁を結んで、仲良くしてから同じお墓に入る。『今年はあの人いなくなったみたいだからみんなで送りましょうよ』といった関係です」
一方で近山さんは、墓友という関係も将来的には“機能的なもの”になってしまうのではないかと危惧しています。
「昔と比べて遺骨の扱いが軽くなってきていて、なかには『ごみとして捨てましょう』なんてことを言う人もいます。実際に駅のロッカーなどに遺骨を入れっぱなしにして、『遺失物』にしてしまう人もいます。人間としての営みが、本来のところから少しずつ離れていっているような感覚があります。この流れが加速すると、墓友もやがては、より希薄で機能的な形式的な関係になったりしてしまうのではないかと」
そんな世の中だからこそ、近山さんは改めて、墓友という存在が持つ意味の大きさに目を向けるべきだと話します。
「誰かを見届けた時の“気持ちの良さ”や、誰かに死を見届けられると思うことで生まれる、“安心感”。お互い様の関係で『あなたがいてよかった』って。そういう人間らしい関係を最後に持てることは大きいんです」
ざっくばらんに終活を語る場“終活スナック”も登場

東京・森下に、2024年2月にオープンした「終活スナック めめんともり」は、日本初の「終活」をテーマにした常設のスナックとして注目を集めています。創業者で「海洋散骨のパイオニア」でもある村田ますみさんがママを務め、死と生について気軽に語れる“サードプレイス”を目指していると言います。
「カラオケないけどカンオケあります」をキャッチフレーズに、店中には棺が常設。実際に入って体験できる「入棺体験」など、ユニークな体験ができることでSNSを中心に話題になっています。

死をネガティブに捉えるのではなく、「気軽に語り合いながら、自分らしい最期を考える場」として新しい価値を提供しています。飲みながら、棺に入って、缶詰をつまみながら、人生を振り返り、語り合う。まさに「終活の多様化」を体現するユニークな場所です。
この日は、訪問看護師の男女2人組が来店。日々患者の死に立ち会うことで生まれた死生観を語っていました。

自殺願望を持つ人が来ることも少なくないという「めめんともり」では、オーナーの村田さんが大事にしていることがあります。
「私たちがやることはもう『徹底的に聞く』ということ。あとはカウンターで横に座っている人とかとつなげてあげます。終活もそうですが、答えはひとつじゃないんです。多様な価値観、死生観を共有することが大事だと思っています。お店でぜひやっていただきたいのが、付箋に『理想の人生の最後』書いてもらうこと。これを通じて、いろんな人の死生観が知れるんです」

多様化する終活のなかで、村田さんは「人生が長くなった今こそ、どう楽しく生きるかが大切」と語ります。
「高齢化が進んで、健康寿命も延びて、私も50過ぎたのに『人生100年時代』であれば、『あと半分生きるのか』と思ったら、まだまだこれからみたいな感覚がありますよね。私にとっての終活は、やりたいことを先延ばしせずに、どんどんやること。私はよく海外に行きますが、日本に帰ってくるたびに『なんて活気がないんだこの国は』って思います。高齢者の人たちが年を取っていくことを、もっと前向きに捉えて生きていないと、若い人たちへの希望がないなって。私は、終活を前向きな捉えた社会が来ることを願っています」





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