
公正取引委員会は9月30日、内閣官房と連名で「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」を公表しました。この指針は、アーティストや俳優、タレントなどの実演家と芸能事務所との契約における不適切な慣行を是正し、実演家への適切な収益還元や健全な活動環境の確保を目的としています。
指針策定の背景には、令和6年12月に公表された実態調査報告書があります。同報告書では、実演家が移籍や独立を希望する際に事務所からの過度な金銭的請求や移籍妨害を受けた事例が多数確認されました。調査結果を踏まえ、公正取引委員会は独占禁止法の観点から具体的な行動基準を示すこととしました。
主な指針内容として、まず移籍・独立の妨害禁止があります。実演家が契約満了時に移籍・独立を申請した場合、事務所は必要な連絡先や留意事項を移籍先に提供し、言動による妨害を行わないことが求められます。また、移籍後に放送事業者等へ「トラブルがあった」と吹聴して起用を見送らせる行為も禁止されています。
次に、芸名やグループ名の使用制限については、合理的な理由がない限り制限を行わない原則が示されました。制限が必要な場合は、契約上で使用料などの代替手段を含めた合理的な方法を明記し、実演家と十分に協議・説明することが義務付けられています。
金銭的給付の請求についても詳細に規定されました。育成費用の未回収分を回収する場合や事務所が収益を確保するために金銭的給付を求める場合には、請求額の算定根拠・必要性を契約時に規定し、実演家へ十分説明・協議のうえ合理的な範囲に限定することが定められています。
契約の透明化では、報酬の額や歩合率、実演家負担経費、専属期間などを契約書に明記し、締結・更新時に実演家との協議・同意を行うことが求められました。
業界への影響と今後の展開
公正取引委員会は指針違反が認められた場合、優越的地位の濫用として排除措置命令等の厳正な措置を取る方針です。事務所だけでなく放送事業者やレコード会社にも行動基準を適用し、出演前の契約条件提示を文書化するなど透明な交渉を促します。取引審査部長は相談窓口の活用を呼び掛けており、これまで不透明だった芸能界の契約慣行が大きく改善されることが期待されています。








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