みんなの投稿で決まるブックアワード!「SNS推し本大賞 2025」授賞式レポート

SNS推し本大賞の受賞者

読者の「推し」から、次のベストセラーを生み出したい——。

そんな思いから設立された「SNS推し本大賞」。その記念すべき第1回授賞式が本の街・神保町にあるブックハウスカフェにて開催されました。授賞式はYouTubeでも配信され、読者がZoomでコメントを寄せる参加型の形式も採り入れられました。

本記事では受賞を果たした7作品と、この賞の原動力である読者からの「推しコメント」を中心に、当日の模様をお伝えします。

<目次>

SNSの口コミで決まる「SNS推し本大賞」

「SNS推し本大賞」企画概要ポスター
「SNS推し本大賞」企画概要ポスター

SNS推し本大賞とは、インターネット投票で選ばれる新しい形のブックアワードです。読書系インフルエンサーである井藤慎(ぶっくま)さんが中心となって進める「本をつなぐプロジェクト」の活動の一環として設立されました。

このアワードは、SNS上の読者の声を起点に、新たなベストセラーを生み出すことを目指しています。フォロワー数や知名度ではなくSNSに投稿された読者の声を集計して7部門の大賞を選出します。

SNSを起点に始まったプロジェクトは、読書愛好家たち10人によって立ち上げられました。メンバーの大半が出版業界で働いているわけではないため、当初は「業界関係者から反対されるのではないか」と悩んだこともあったそうです。しかし、出版社・取次・書店へ地道に説明を重ね、その活動は次第に広がっていきました。

文芸評論家として活動する三宅香帆さんが応援を表明し、『ユダヤ人大富豪の教え 幸せな金持ちになる17の秘訣』の著者である本田健さんが投票に参加。業界内外から注目が集まり、最終的な投票参加者数は3761人を記録しました。

また、推し本大賞のコーナーも各地の書店で作られ、プロジェクトの輪も広がっていきました。

「ビジネス部門」の大賞はXのバズをきっかけに誕生した『ぼくは今日も定時で帰る。』

著者のまひろさんとぶっくまさん

「ビジネス推し本賞」には以下の12作品がノミネートされました。

  • 『厚利少売 薄利多売から抜け出す思考・行動様式』(菅原健一著/匠書房)
  • 『今度こそなりたい自分になる! 1冊まるごと「完コピ」読書術』(あつみゆりか著/PHP研究所)
  • 『小さく分けて考える 「悩む時間」と「無駄な頑張り」を80%減らす分解思考』(菅原健一著/SBクリエイティブ)
  • 『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』(新井一著/東洋経済新報社)
  • 『ひと目でわかる図解付き! 「知る」を最大化する本の使い方』(ぶっくま/翔泳社)
  • 『けんたろ式“見るだけ”ことば雑学辞典 図解とクイズで広がる教養』(けんたろ/KADOKAWA)
  • 『ぼくは今日も定時で帰る。』(まひろ/ダイヤモンド社)
  • 『「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方』(下間都代子/日本実業出版社)
  • 『さみしい夜のページをめくれ』(古賀史健/ポプラ社)
  • 『忙しさ幻想』(豊留菜瑞/サンマーク出版)
  • 『何歳からでも遅くない 最高の生き方を手に入れる 人生再起動メソッド』(いれぶん/イースト・プレス)
  • 『ひとことで整える 自分らしく売上とチーム力を上げる言葉の紡ぎ方』(堤藤成/祥伝社)

その中から大賞に選ばれたのは、『ぼくは今日も定時で帰る。』です。

著者のまひろさんの本業は会社員。X(Twitter)では自身の経験したビジネスエピソードを発信し、2.7万人のフォロワーに支持されています。受賞スピーチでは、「Xの投稿ではたくさんの人に読まれたのに、本になるとなかなか人に届かなかった」と悩んでいた過去を明かしました。

悩んでいた時に支えになったのが「信用がすべて」という言葉です。「本を届けるには第三者の評価が必要だ」と考えるようになり、SNS推し本大賞の受賞を目指すようになりました。応援の声に励まされながら活動を重ねた結果、見事に大賞を受賞。「取りたいと願っていた賞を受賞できて本当にうれしいです」とよろこびの表情を浮かべました。

読者からは以下の推しコメントが寄せられました。

「目線が温かく、ジーンときたり、大笑いしたり。若い自分にエールを送りたくなる本」
「感情を揺さぶる1冊」

「小説部門」の大賞は本屋大賞にもノミネートした『禁忌の子』

「小説推し本賞」ノミネート作品

「小説推し本賞」の候補は以下の12作品です。

  • 『アガシラと黒塗りの村』(小寺無人/産業編集センター)
  • 『カフネ』(阿部暁子/講談社)
  • 『禁忌の子』(山口未桜/東京創元社)
  • 『僕たちの青春はちょっとだけ特別』(雨井湖音/東京創元社)
  • 『アイギス』(葉山透/ポプラ社)
  • 『私はチクワに殺されます』(五条紀夫/双葉社)
  • 『小説』(野崎まど/講談社)
  • 『世界99』(村田沙耶香/集英社)
  • 『星が人を愛すことなかれ』(斜線堂有紀/集英社)
  • 『千年のフーダニット』(麻根重次/講談社)
  • 『地雷グリコ』(青崎有吾/KADOKAWA)
  • 『町内会死者蘇生事件』(五条紀夫/新潮社)

その中で大賞に輝いたのは、『禁忌の子』でした。著者の 山口さんからは動画でメッセージが寄せられました。

「デビュー作となった『禁忌の子』は2025年本屋大賞へノミネートされ、第34回鮎川哲也賞を受賞することができました。皆さんが本を読んで広めてくれたおかげだと思います。また、皆さんの『推し』の結果、大賞を受賞することができました。今後、SNS本大賞が盛り上げる一助になれたら幸いです」

読者からは以下の推しコメントが寄せられました。

「テーマ、ミステリー、描写、すべてが圧巻でした」
「医師だから書ける、現場の熱量と医療問題」
「読了後に表紙に英語で書かれたタイトルの意味がわかる本」

「知の扉がひらくで賞」は『発信をお金にかえる勇気』

末吉宏臣さんとぶっくまさん

「知の扉がひらくで賞」にノミネートされたのは以下の5作品です。

  • 『発信をお金にかえる勇気』(末吉宏臣/きずな出版)
  • 『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』(黒田剛/講談社)
  • 『継続する技術』(戸田 大介/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
  • 『隠れた強みと好きなことが才能に変わる スキルマップ』(デザイン研究所/KADOKAWA)
  • 『母が子に伝えたい大切なお金と社会の話』(櫻井かすみ/Gakken)

大賞は末吉宏臣さんの著作『発信をお金にかえる勇気』(きずな出版)に贈られました。末吉さんは笑顔を浮かべながらよろこびの言葉を語りました。

「SNSの『好き』や『推す』というエネルギーが本に集まり、書店や人との出会いにつながったことで受賞できました。人の経験や好きなことには熱があります。それが誰かに届けば共感につながり、対価を得られるはずです。今回の受賞が、そうした『ありがとう』や『お金』が循環するきっかけになればうれしいです」

読者からは以下の推しコメントが寄せられました。

「発信は自分だけでなく周りの人も幸せにできるんですね」
「発信を続けたの先に対価を得てもいいと教えてくれる1冊です」

「世界の見え方、変わるで賞」に『僕には鳥の言葉がわかる』

「世界の見え方、変わるで賞」ノミネート作品

「世界の見え方、変わるで賞」のラインナップは以下の5作品でした。

  • 『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の 弱さ考』(井上慎平/ダイヤモンド社)
  • 『僕には鳥の言葉がわかる』(鈴木俊貴/小学館)
  • 『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』(しんめいP/サンクチュアリ出版)
  • 『ロードマップ』(MB/扶桑社)
  • 『生きのびるための事務』(坂口恭平/マガジンハウス)

大賞に輝いたのは、鈴木俊貴さん著『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)でした。この本は動物言語学者であり、シジュウカラの言葉を研究する鈴木さんのエッセイです。からは動画にてメッセージが寄せられました。

「シジュウカラの多彩な鳴き声は1つひとつ意味を持った言葉になっており、それを組み合わせて文章を作ることもできます。本書は、シジュウカラの言葉を研究する過程で広がった世界を共有したいという思いで執筆しました。本を読んだ方はぜひ公園で彼らの言葉に耳を傾けてみてください」

読者からは以下の推しコメントが寄せられました。

「ユーモアと優しい語りで研究の日々を描いた本です」
「本を読んだ後に鳥の鳴き声が会話に見えるようになりました。世界の見え方が変わる本」

「この気持ちシェアしたいで賞 ビジネス書部門」は『文章で伝えるとき、いちばん大切なものは、感情である。』

「この気持ちシェアしたいで賞 ビジネス書部門」受賞の様子

「この気持ちシェアしたいで賞 ビジネス書部門」には以下の5作品がノミネートされました。

  • 『文章で伝えるとき、いちばん大切なものは、感情である。 読みたくなる文章の書き方29の掟』(pato/アスコム)
  • 『目の見えない精神科医が見えなくなって分かったこと』(福場将太/サンマーク出版)
  • 『いい音がする文章 あなたの感性が爆発する書き方』(高橋久美子/ダイヤモンド社)
  • 『さみしい夜にはペンを持て』(古賀史健/ポプラ社)
  • 『こうやって頭のなかを言語化する。』(荒木俊哉/PHP研究所)

大賞を受賞したのは『文章で伝えるとき、いちばん大切なものは、感情である。読みたくなる文章の書き方29の掟』です。授賞式ではpatoさんから寄せられたメッセージが読み上げられました。

patoさんのメッセージは「この度は素敵な賞をありがとうございます」という感謝の言葉から始まりました。そして「あくまで僕自身に限った話」と断った上で続けます。

「こういった賞をいただいたりすると著者がクローズアップされます。また著者名で賛辞をいただいたりします。けれども、僕自身はこと本においては、著者とはただ「文字を打った人」くらいに考えています」

そして、営業やブックデザイナー、書店員、編集者への感謝を告げて、「文字を打った人担当として僕自身が名を連ねているだけです」と強調。次のように締めくくりました。

読者からは以下の推しコメントが寄せられました。

「文章を書く楽しさを教えてくれた」
「本業でも伝わり方が変わった。笑えて泣ける、学べる1冊」

「この気持ちシェアしたいで賞 小説部門」は『婚活マエストロ』

「この気持ちシェアしたいで賞 小説部門」受賞の様子

「この気持ちシェアしたいで賞 小説部門」は5作品がノミネートされました。

  • 『クローズドサスペンスヘブン』(五条紀夫/新潮社)
  • 『パンドラブレイン亜魂島殺人(格) 事件』(南海遊/講談社)
  • 『婚活マエストロ』(宮島未奈/文藝春秋)
  • 『十角館の殺人』(綾辻行人/講談社)
  • 『深淵のテレパス』(上條一輝/東京創元社)

大賞を受賞したのは、『婚活マエストロ』です。式典では、著者の宮島未奈さんに代わり、担当編集である黒岩さんがメッセージを読みました。

「3冊目の著作である『婚活マエストロ』は、『成瀬シリーズ』と同等あるいはそれ以上に思い入れがあり、小説家としての自信がついた作品です。いつまでも『成瀬の人』ではいられませんし、受賞できてとてもうれしいです。投票してくださった皆様、本当にありがとうございました!」

読者からは次のコメントが寄せられました。

「大人の恋の妙味がすばらしい。2人の今後が気になって、妄想が止まらない」
「読み終えて婚活パーティーに行きたくなりました」

「発掘賞部門」には『一遍踊って死んでみな』

白蔵盈太さんとぶっくまさん

「発掘賞」にノミネートされたのは以下の3作品です。

  • 『ラザロの迷宮』(神永学/新潮社)
  • 『積ん読の本』(石井千湖/主婦と生活社)
  • 『一遍踊って死んでみな』(白蔵盈太/文芸社)

大賞に輝いたのは、白蔵盈太さん著『一遍踊って死んでみな』でした。顔出しNGの 白蔵さんはカエルのお面をかぶって登場しました。

鎌倉時代にタイムスリップした高校生の視点から一遍上人を描いた作品は音楽雑誌風の文体でつづられています。この作品の受賞に対して白蔵さんは「『大丈夫か、この賞』と正直驚いた」と率直な感想を吐露。その後、よろこびの言葉を続けました。

「変化球の作品が評価されて自信につながりました。これも読者の熱い推しのおかげです。『推し本大賞』は、エンタメが多様化する現代において「私のような存在にも光を当ててくれるありがたい賞です!」

読者からは以下の推しコメントが寄せられました。

「めちゃくちゃ面白かった。音楽と仏教がミックスして、それを雑誌テイスト調で書くアイディアも最高」
「エンタメが少なかった時代、当時の人たちも、非日常感を求めていたんだなのかなと想像した作品。魂がよろこぶロックな1冊」

SNSから新しい本の文化を創る

「本をつなぐプロジェクト」を立ち上げたぶっくまさん

出席者によるクロストークなども交えて盛り上がった授賞式は、「本をつなぐプロジェクト」の代表を務める井藤さんの挨拶で締めくくられました。

「読者の声から始まったSNS推し本大賞。こうして多くのつながりを生み出せたことを本当にうれしく思います。これからも読者が作る本の文化を一緒に育てていきたいです」

今後、全国の書店70店舗以上で「推し本コーナー」が展開し、受賞・ノミネート作品が書店に並びます。また、来年も開催されるとのこと。これからも「本をつなぐプロジェクト」の活動から目が離せません。

田村美穂ライター

投稿者プロフィール

東京都を中心に活動するライター。
取材記事を中心に、イベントレポート・SEO記事などを手掛ける。

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