
本を手に取ってみるものの、最後まで読み切れない。読書の習慣を身につけたいけれど、何度も挫折してしまった。
そのような悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。
そうした悩みを持つ方に向けて開催されたのが、読書ノート作家わいわいさんによるトークイベント「もう『どんな本だった?』と聞かれても困らない! 自分の意見を言語化する本の読み方と読書ノートの書き方」です。
本記事では、2025年3月25日にサンクチュアリ出版イベントホールにて行われた、トークイベントの模様についてお伝えします。
<目次>
読書ノート作家・わいわいとは?

本トークイベントは、わいわいさんの自己紹介から始まりました。
「Xで”読書ノート作家”と名乗って活動しています。読んだ本の紹介や読書法について毎日発信しています。読書ノート作家とは、私が私に名づけた肩書きなんです」と、わいわいさんは語ります。
年間120冊の本を読み、15冊もの献本依頼を受けるほか、読書経験を生かした本も出版しているわいわいさん。その実績からは想像しがたいのですが、実はわいわいさんが本を読めるようになったのはたった2年前だったという驚きの告白がありました。
「熱意を持って読書に向きあっても、読んでいる途中で熱意が燃え尽きてしまう。だから自分には読書は向いてないのだろうと思っていました」
本が好きだから手に取るものの、どうしても挫折してしまう。その繰り返しだったわいわいさんを変えたのが、読書ノートだったのです。読書ノートを書くことで、読書が続けられるようになったとわいわいさんは振り返ります。
「読書ノート作家」という独自の肩書きを名乗るようになったきっかけについても、興味深いエピソードが語られました。その原点となったのは、献本を申し出てくれたある方からの、こんなひと言だったといいます。
『1冊ごとにとても丁寧にノートにまとめられていて、私の本がわいわいさんに読まれたら、どんなふうにまとめられるのだろうかと想像してしまいました』
「私の読書ノートはもはや自分のためだけではなく、誰かに伝え届けるための読書ノートになっていることを実感しました」と述べるわいわいさん。ここから「読書ノート作家」と名乗るようになったそうです。
読書は本選びから始まる|SNSと図書館を活用した本選びのコツ

「読書は本を選ぶところからもう始まっている」と、わいわいさんは語ります。
どんなに良い本を見つけたとしても、自分に合わない本であれば生かせません。自分に合った本を見つけることこそが、読書を続ける第一歩なのです。
では、自分に合った本をどうやって見つければいいのでしょうか。わいわいさんはSNSで気になる本を見つけ、その本を足がかりに図書館で本の選択肢を増やす方法を紹介しました。
「本が読みたくなったときに、あてもなく書店や図書館に行っても、そこで読みたい本に出会えるとは限りません。いい本に出会えますようにと期待していた分、がっかりしてしまいます」
SNSならば手軽に情報を集められるため、期待を裏切られる確率が低く、読書のモチベーションを維持しやすいというメリットがあると述べました。
また、わいわいさんは図書館の優れた部分についても詳しく解説しました。
「よく言われる『図書館はお金をかけないで本を読める』というのは、図書館の数あるメリットのひとつに過ぎないんです。他にも通いやすさ・探しやすさ・所蔵数・すべてにおいて図書館は優れています」
驚くべきことに、わいわいさんは1年間に本を1冊しか買わなかったと告白。それでも年間120冊もの本を読めるのは、図書館をフル活用しているからだといいます。
さらに、図書館で人気の本を確実に借りるための裏技も紹介され、参加者がメモを取りながらしきりに頷いている姿が印象的でした。
「がんばらない読書」のすすめ

本を読むときには読書ノートへの記入を同時並行していくのがポイントだと語るわいわいさん。目次や前書きなど、本のどの部分を読み、どのような情報を書き込んでいくのかを詳しく解説するなかで、とても印象的なたとえ話を用いました。
「旅行だって、地図に書いてあるすべての観光スポットを回るわけではないと思います。時間とお金と体力と相談して回りたいとこだけ回っていると思います。全部回らなくたって、旅行したということには変わらない。読書だってそう。全部読まなかったとしても、読書したことには変わりないんです」
本はがんばって全部読まなければいけないという勝手なイメージから解放されることで、本を読むハードルを格段に下げられるのだと熱弁しました。
「読書ノートを書く=読書を続けられる」という意味

続いて、わいわいさんは読書ノートを書き上げる手順を解説しました。
ここで注目されたのは、わいわいさん流の読書をすると、読書の初期段階(目次や前書きを読むだけ)ですでに読書ノートの半分が完成している点です。このノートの取り方は「オヴシアンキーナー効果」を利用しているとわいわいさんは説明します。オヴシアンキーナー効果とは、未完成で中断した作業を完了するまでやりたくなってしまう心理を指します。
「目次や前書きの数ページを読んだだけで、読書ノートの半分が埋まりました。ここでノートを書くことを中止するのは人間の心理的に気持ち悪いんです。ここまで書いたのだから、作業を完了させたい。この気持ちが本文を読むトリガーになります」と、読書することを読書ノートを書くための手段とすることで、読書を継続しやすくなると明かしました。
さらにわいわいさんは、読書のハードルを下げるため、読書ノートが完成した時点で「読了」としてもよいと提案しています。
本を買うと「本を最後まで読み切らなければ」という気持ちに支配されがちですが、これはオヴシアンキーナー効果が悪い方向に出ている状態です。そこで「読書ノートの完成」という別の達成基準を設けることで、完成させたいという欲求が前向きに働き、読書を続けられるようになるのです。
今後の展望|「がんばらない読書」書籍化へ

記事中で紹介したトピック以外にも、「読書の恩恵」や「アウトプット」についても触れ、熱心に聞き入る参加者の姿が多く見られた本トークイベント。終盤に、わいわいさんはこう語りました。
「今回話した内容は、私の読書法の一部です。本屋さんの魅力や電子書籍のこと、具体的・物理的にどう本を読むかなど、お話したいことは他にもたくさんあります。しかし、すべてをこのトークイベントに落とし込むためには時間が足りませんでした」
そこでわいわいさんはご自身の読書テーマである「がんばらない読書」に関する本を出すと新たに発表しました。詳細はまだ未定ですが、すでに企画段階に入っているとのことです。
トーク後は質疑応答の時間となりました。「アウトプット用のXアカウントは読書専門のものか」「好きな本のジャンルは何か」など、会場にいた多くの参加者の手が挙がっていたのが印象的でした。
また、ラストには「トーク中に、私はこの1年で買った本は1冊だけとお話ししました。1年間で唯一買った本。それはぶっくまさんの『「知る」を最大化する本の使い方』でした」とわいわいさんが明かし、著者のぶっくまさんご本人が登場するサプライズも。温かい雰囲気の中、本トークイベントは幕を閉じました。