
2025年で43回目を迎える岐阜矯正展が開催されました。
矯正展とは法務省主唱の「社会を明るくする運動」の一環で開催されているイベントです。刑務所内で生産した製品の販売や矯正施設における取り組みを紹介することで地域の人々に刑務作業の現状を理解してもらうことを目的としています。
岐阜矯正展の当日は雨が降りそうなくもり空でしたが、多くの人で賑わっていました。イベント当日の様子をレポートします。
<目次>
1,800品目以上がラインナップ!メイン特設会場の家具や工芸品

刑務所で生産された製品は「CAPIC(キャピック)」というブランド名で販売されています。 「CAPIC」は、矯正協会刑務作業協力事業の英訳(Correctional Association Prison Industry Cooperation)の頭文字で、売上げの一部は犯罪被害者支援団体の活動に助成されるそうです。 この日の特設会場には全国の刑務所で作られたCAPICの製品が1万点以上並んでいました。

岐阜刑務所のブースでは阜岐塗(ふっきぬり)が施されたぐい呑みが販売されていました。阜岐塗とは岐阜刑務所が命名したオリジナルのコーティング技術です。一般的な漆塗りは木材に施しますが、阜岐塗はガラスに金粉で模様を入れていきます。木材に施すことで木目の美しさを際立たせる春慶塗りを発展させたものであり、生産地である「岐阜」と社会「復帰」をかけ合わせたのが名前の由来です。
受刑者に指導を行っている作業専門官に話を聞きました。以前はガラスに漆を塗っても剝がれてしまったそうですが、約10年前に漆を定着させる添加剤が開発されたそうです。専門官が東京に出張して技術を習得し、その技術を発展させて岐阜刑務所独自の阜岐塗を考案したとのことです。

阜岐塗りの新製品の開発も進んでいます。2025年には金粉を散らした製品を販売しました。製品には美しい模様が入っており、受刑者の個性が現れるそうです。ブースでは8,000円を超える高価なタンブラーも販売されており、それを2つ購入する方も見かけました。

岐阜刑務所が製作した製品で人気なものがメタル製品です。人気製品は午前中に売り切れるそうです。

また、木材で作ったネコのハウスも販売していました。出入りする穴がネコ形に加工されていて、横面には肉球の穴がついています。価格は4,000円台でブースに訪れていた時には2個しか残っていませんでした。犬小屋も並んでいました。分厚い木材が使われていて価格は2万円を超えますが、毎年1個以上売れるそうです。

矯正展の作業製品といえば立派な家具です。市場の価格より購入しやすい価格の重厚感ある民芸家具が並んでいました。これらの家具は人気もあり、筆者が訪れた時にも購入している方がいました。

一方で、ポップな色合いの製品もありました。サイコロをイメージしたカラフルな引き出しが特徴的で、白色のボックスに入れ子にすることができます。実際に引き出しを引いてみるとスムーズに開閉できることに驚きました。幼い子どもがいる家庭からインテリアにこだわりを持つ方まで幅広い方が使えそうです。

岐阜矯正展では全国の刑務所で作られた製品を購入できます。昭和約53年に富山刑務所で製作を始めた神輿はこれまでに約5,800基を販売したのだそう。主な販売先は自治会(子ども会等を含む)で、南米のパナマやブラジルなど海外からの注文もあるといいます。また、かわいい子ども用の木工製品もありました。

矯正展名物ともいえる横浜刑務所・横須賀刑務支所のブルースティック。大人気で大手通販会社でも扱われています。

函館少年刑務所グッズも大人気。バッグの中は和柄でリバーシブルで楽しめるのも魅力。

大分刑務所のアイデアグッズであるお札置き。縦型はすでに売り切れでした。
名物の刑務所カレーや地元グルメを満喫できる飲食ブースが大盛況!

会場にはたくさんのテントも立っており、岐阜刑務所カレーなどを販売。鮎の塩焼きなどのご当地グルメは午前中に売り切れていました。特に栗きんとんを使ったモンブランのスイーツが人気を集めていました。

1989年から30年以上活動を続ける岐阜市更生保護女性会のテントがありました。参加者の方によると、自主的に犯罪を未然に防ぐ活動や、更生保護施設 (洗心之家、光風荘)での掃除や食事などのサポートをおこなっているとのこと。今回の矯正展のテントでは、不用品を持ち寄り、フリーマーケットを開催。集まったお金は活動資金に使われます。参加者の高齢化が問題となっているそうです。
撮影禁止の所内見学ツアーで受刑者の生活を体験

矯正展に来たからにはぜひ体験して欲しいのが、工場見学。工場内での撮影や録音は禁止されているため、ロッカーに携帯電話・スマートフォン・カメラを預けて体験に臨みます。
受刑者は6時40分に起床し、7時50分から16時30分まで作業します。土曜日、日曜日、国民の休日は作業は行われず、就寝時間の21:00まで余暇時間なのだそう。入浴は週3回で、1回につき15分までと決まっています。 洗濯や食事の準備や壊れたものの修繕を担当する受刑者もいるのだそうです。
食事はおおむね2,500から2,610キロカロリーになるように献立を立てているとのことです。食堂にはサンプルのメニューが置いてあり、どれもおいしそうでした。
また、岐阜刑務所の人気メニューの順位は以下の通り。
1位:ぜんざい
2位:チーズインハンバーグ
3位:唐揚げタルタルソース
甘いものが1位と意外な結果ですが、普段から健康的な食事をしていると嗜好品がうれしいものなのかもしれません。
工場内は整頓されていました。目標や達成度などを書いた紙が張り出されていて「目標を持たせることで、モチベーションを上げている」と説明がありました。現在、木工は20人、春慶塗は3人が従事しているとのこと。
また、運動会などのレクリエーションもあるそうです。受刑者にとっては貴重な息抜きであり、楽しみになっているとのこと。ほかに読書や動物愛護センターによるアニマルセラピーもおこなっています。
建物の壁の一部には、技術を身につけた受刑者の手による装飾が施されていました。出所前に記念に残すのだそうです。全体的に和やかで、学校の寮のように感じました。
パトカーの試乗や書道などの体験会も盛りだくさん

本物のパトカーに試乗できる体験もありました。運転席に乗るのは貴重な機会。子どもが運転席でパトカーを楽しんでいる様子も見られました。

JAFによる「シートベルトなしで受ける時速5キロの衝撃」の体験会もありました。時速5キロのため衝撃はほとんどないと思っていましたが、想像以上に身体が揺れ動きました。シートベルトやエアバックの重要性を感じた体験でした。

「自分だけの書」を意味し、筆ペンを使って心のままに描く己書(おのれしょ)の体験会もありました。ここでは「心」「楽」「ありがとう」の3つから選んで体験できます。筆者が選んだのは「ありがとう」。筆ペンで書くために必要なストロークをいくつか練習し、いざ本番。丸や曲線を描くうちに、いつの間にか文字になっていて楽しい時間を過ごせました。
ステージイベントでは地元アイドルや動物との触れ合いも!
会場中央に設けられた休憩場の前には、イベントステージが設営され、地元の学生やアイドル達がパフォーマンスを披露しました。。プログラムの途中から強い雨が降りましたが、テントで屋根を作り続行されました。
・オープニングファンファーレ(岐阜大学吹奏楽団)
・岐阜大学吹奏楽団演奏
・岐阜大学ジャグリングサークル(Juggrass)
・Sae(歌手、ラジオパーソナリティー)
・もえみ(歌手)
・G☆Boy‘s(男性アイドルグループ)
・Le☆miel(ミエル)(女性アイドルグループ)
・汐川ほたて(歌手)
・くす田くす博(サイエンスアクロバティック)
・動物愛護センター(動物ふれあい体験)
・えんがわあさひ(アーティスト)
・大抽選会

シンガーソングライターの汐川ほたてさんは「日本一肩書の多い芸能人」です。タレント・声優・保育士として活動し、天体宇宙検定2級やJMCAライフクリエイターなどの資格を持っています。
彼女は2025年2月に発表して話題となった、闇バイト被害防止啓発ソング『バイバイ闇バイト』をステージで披露。この曲はYouTube配信で人気に火がつき、京都府警察本部公式YouTubeでミュージックビデオが配信されています。
現在は京都府警のSNSのみで見られる楽曲ですが、ほかの県警からも使用したいとの声があり、警視庁でミュージックビデオを再収録して全国の警察へ拡大予定なのだとか。

ステージでは、受刑者のアニマルセラピーを担当している岐阜県動物愛護センターによるふれあい体験もおこなわれました。小型犬の心音を聴いてみようという体験に、子ども連れを中心に、多くの来場者が並びました。

ステージ終了後、ふれあい体験に参加できなかった方との交流の場が、場所を移して設けられました。毎年矯正展に来ているという男性に話を聞くことに。
「妻と20代の子どもと毎年訪れています。木工製品など高品質な製品が多いですし、こうしたものを購入することで、支援につながるなら嬉しいですよね」
「社会復帰」への取組み~矯正展を通じて伝えたいこと
矯正では、受刑者が技術を身につけることで誇りを持ち、社会復帰に向けて前向きになることを目指しています。そんな矯正や「矯正展」の想いについて、岐阜刑務所で総務部長の関隆史さんにお話を伺いました。
まず、矯正展で販売する完成度の高い家具や工芸品などの技術を習得する方法について「誰でも習得できるものなのか」と尋ねたところ、最初の面談で「手先の器用さ、もともとの職業、性格」などをヒアリングして見て、担当する作業を決めるのだそうです。 手先の器用さも大切ですが、性格的な相性も大切です。「粘り強く、細かい作業が苦なくできる人」が選ばれています。
まずは2年間訓練し、さらに技術の向上を目指します。たとえば、矯正展で販売するような春慶塗の製品の技術を習得するには、10年かかることもあります。岐阜刑務所は、執行刑期10年以上の受刑者を収容する男子刑務所。そうした長期の技術習得が可能なのも、長期収容の刑務所ならではです。
こうした刑務所でおこなわれる矯正展は1年に1回ですが、催事などで受刑者の製品を見てもらう機会は増えています。そうした機会が増えることは、受刑者にとって非常に励みになるといいます。
出所直前には就職活動も行われますが、受刑者が身につけた技術を実際に出所後に活かしているかどうかについては、情報が限られており、刑務官が直接把握することは難しいそうです。出所者から連絡が入ることもあるそうですが、刑務官から連絡を取ることはないのだそう。
関さんの言葉の端々から、受刑者の社会復帰を心より願っていることが感じられました。
岐阜刑務所について
岐阜刑務所はJR岐阜駅からバスで約30分。犬塚バス停下車し徒歩10分弱の場所にあります。法務省矯正局の中部矯正管区に属する男子刑務所です。
所在地
〒501-1183 岐阜県岐阜市則松1丁目34-1
交通手段
●岐阜バス「犬塚バス停」下車徒歩10分
TEL 058(239)9554(作業部門直通)
FAX 058(293)9135
営業時間
9時~15時45分(土日祝日を除く)
展示・販売製品
岐阜刑務所
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00055.html
(取材・文・写真 / 陽菜ひよ子)













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