
2025年大阪・関西万博で参加国が自前で建設する海外パビリオン「タイプA」の計画が、大幅な遅れに直面しています。日本国際博覧会協会(万博協会)は10月中旬までに外観を完成させる方針でしたが、その構想が事実上、破綻したことが13日に明らかになりました。
アルメニア館の関係者は、6月中の着工予定にもかかわらず、10月中旬の完成は間に合わないと明言しました。設計を担当する建築家の遠藤秀平氏は、「設計時間も工期も短い。この規模の建築物でこのタイトなスケジュールはかなり厳しい」と指摘しています。
タイプAを希望する国は、資材価格の高騰や人手不足などにより60ヶ国から53ヶ国に減少。そのうち14ヶ国では建築業者が決まっておらず、業者が確定した39ヶ国でも8ヶ国が未着工の状態です。
万博協会は当初、7月に建築作業の完了を目指していましたが、参加国の業者探しが難航したため、10月中旬に目安を変更しました。しかし、アルメニアですら11月の完成が精一杯で、業者未定の国の10月中旬完成は事実上、不可能とみられています。
建設業界からは、「協会が示すスケジュールは現実的でない」「開幕時も相当数のパビリオンが未完成のままだろう」との見方が出ており、万博協会は計画の練り直しを迫られそうです。
2023年9月時点で大幅な遅れ 岸田首相「極めて厳しい状況」
2025年大阪・関西万博の海外パビリオン建設が遅れているのは、今に始まったことではありません。2023年9月の時点で、60ヶ国中46ヶ国が建設業者すら決まっていない状況でした。
1970年の大阪万博でも同様の問題が起きましたが、現在は「2024年問題」という労働環境の改善により、当時のような突貫工事ができません。万博協会は「タイプX」という案を提示しましたが、各国の「タイプA」へのこだわりは強く、工期短縮には繋がっていません。
大阪府の吉村洋文知事は、「海外パビリオンAタイプがタイトになっている」と危機感を表明。岸田文雄首相も、「極めて厳しい状況に置かれている」と述べました。
万博協会の調整不足が原因の1つとされ、各国の意向と建設業者の考えのミスマッチを十分に調整できていないようです。2024年2月には、少なくとも5ヶ国のパビリオンが定められた時期に工事が間に合わないと明らかにしました。
同年5月には、万博協会が夜間や土日の工事手続きを簡素化する検討を始めましたが、建設業者からは「時間外も作業しないと開幕に間に合わない」との声が上がっています。万博開催まで残り少ない中、海外パビリオンの建設が間に合うのか懸念が広がっています。