この夏、働く人々の懐事情に明るい兆しが見えています。日本経済新聞が実施した2024年夏のボーナス調査によると、全産業の平均支給額は97万2,319円でした。前年比3.72%増で、3年連続の過去最高更新となりました。
特筆すべきは、中小企業の躍進です。大手企業を大きく上回る7.84%の伸び率を記録しています。深刻な人手不足を背景に、優秀な人材の確保と定着を図る動きが活発化しているようです。
業種別で見ると、繊維やゴムなど7業種が2桁の伸びを達成。セーレンは26.23%増、横浜ゴムは20%増と、値上げによる収益改善の成果をボーナスに反映させました。自動車・部品も8.74%増と、好調ぶりをうかがわせます。
ただし、物価高騰の影響で実質賃金はまだマイナス圏内です。政府は、この夏の上積み賃上げを呼びかけていますが、企業の対応はまちまちです。
働き手の生活を守り、消費を下支えするためには、一時的なボーナスアップだけでなく、恒常的な賃金引き上げが不可欠だと言えるでしょう。今夏のボーナスは、ポストコロナ時代の働き方を考える上で、重要な分岐点になるかもしれません。
中小企業の平均支給額、伸び率は2002年以降で最高を記録
今夏のボーナス調査において、従業員数300人未満の中小企業では、平均支給額が71万3,955円と、伸び率は2002年以降で最高の7.84%を記録しました。大企業との人材獲得競争を意識した防衛的な引き上げを行ったと見られています。
東京自働機械製作所やADワークスグループ、日本伸銅などは大手に匹敵する支給額となりました。多くの中小企業は春闘での賃上げ率が大手を下回る中、ボーナスで巻き返しを図った様子です。
しかし、個人消費の回復にはまだ課題が残ります。円安定着やエネルギー・食料品の価格高騰により、実質賃金は過去最長の26ヶ月連続でマイナスです。5月の家計消費支出も、2ヶ月ぶりに前年割れとなりました。
日本経済研究センターの調査では、主要民間エコノミスト35人の6割超が実質賃金のプラス転換時期を10月以降、4割弱は2025年以降と予測しています。法政大学の山田久教授も、「ボーナスは貯蓄に回る傾向が強い。個人消費の回復には、25年以降も基本給の持続的な引き上げが不可欠だ」と指摘しています。
景気回復の鍵を握る個人消費は、中小企業を含めた継続的な賃上げにかかっていると言えそうです。政府の後押しも必要ですが、企業の自主的な取り組みに期待が集まります。