リニア水問題対策に進展 川勝平太知事が「尊重したい」と意向を示す
静岡県の川勝平太知事は28日、定例記者会見でリニア中央新幹線静岡工区における大井川の水問題対策として、JR東海が提案する「田代ダム取水抑制案」を県として受け入れる方向で調整していることを明らかにしました。
この決定により、リニア新幹線建設の大きな障壁であった水問題が解決に向けて進展する見通しです。川勝平太知事は「スキームとして妥当だという意見があり、それを尊重したい」と述べ、リニア工事への前進を示唆しています。
今後、静岡県は技術的な側面から取水抑制案の実現性を検証し、JR東海との協議を続けていきます。大井川利水関係協議会もこの案を支持しており、次の焦点は工事に伴う発生土の置き場問題や南アルプスの生態系保全に移ることになります。
静岡県庁関係者「リニアの問題そのものはまったく前進していない」
静岡県の川勝平太知事は、JR東海の「田代ダム取水抑制案」に対して「尊重したい」との見解を示しました。この発言を受け、日経新聞は川勝平太知事が流域自治体の意見をまとめた上でJR東海に賛意を回答すると報道し、11月30日には「静岡県、田代ダム案を了解」との見出しで報じました。
しかし、静岡県庁の関係者は「リニアの問題そのものはまったく前進していない」と語り、報道の内容と実態には乖離があることを指摘しています。「田代ダム取水抑制案」の具体的な内容や実現性についてはまだ不透明な部分が多く、今後も慎重な検討が求められる状況です。
JR東海の「田代ダム取水抑制案」とは?
川勝平太知事が問題としているポイントは、リニア工事の過程で生じる静岡県から山梨県へのトンネル湧水の流出です。対策を講じなければ大井川本流の流量が毎秒2トン減少し、流域の住民の生活用水に影響が出る恐れがあります。
この問題に対処するため、JR東海は田代ダムの取水を調整し、大井川の流量を維持する「田代ダム取水抑制案」を提案しました。この案について、川勝平太知事は「リニア工事について、一歩前進というお考えでしょうか」と問われ、「そうですね」と応じましたが、自らは「一歩前進だ」と発言していませんでした。
川勝平太知事はJR東海との対話を進める姿勢を示し、地質構造・水資源部会の専門部会での議論を重視しています。この部会には県寄りの主張を持つ委員も含まれ、水量の測定方法などに関しては未確定要素として、今後も議論が続くことになります。