2020年のアメリカ大統領選挙の報道をめぐり、保守系メディアのFOXニュースと投票集計機メーカーの訴訟は、FOX側が7億8,750万ドル(約1,060億円)を支払うことで和解が成立しました。無責任なメディアの加担には高い代償が伴うと示され、名誉毀損の和解金としては過去最高レベルの額となりました。
2020年の大統領選挙にて、トランプ前大統領陣営は敗北を認めず、「投票集計機が不正操作され、票がバイデンへと付け替えられた」と根拠を示さず主張。FOXはトランプ氏側の主張を繰り返し報道し、疑惑を広めました。
これに対し、投票集計機メーカーのドミニオン・ボーティング・システムズは名誉を傷つけられたとして、2021年3月に損害賠償を求め提訴を起こします。今月18日には審理が始まる予定でしたが、FOX側が一転し、ドミニオン社に和解金を支払う形で和解が成立しました。
FOXは和解の理由について、「裁判所がメーカーに関する一部の主張を誤りだと判断した」ためだと説明しています。なお、もともとドミニオン社はFOXに対し、「誤った情報の無責任な拡散に加担した」として、およそ16億ドルの損害賠償を求めていました。
訴訟では「トランプ氏らの主張が虚偽だと認識しているのか」が焦点
ドミニオン社はこれまで多量のFOX社内の内部資料を提出しており、看板司会者らが私的な会話では「(トランプ派の弁護士は)嘘をついている」「(選挙不正の主張は)常軌を逸している」といったやり取りをしていることが判明。
トランプ氏らの主張が虚偽であると認識していながらも報道を続けた理由として、ドミニオン社は視聴率の低迷を指摘しています。視聴者がほかのテレビ局に流れたと分析した結果、注目を集めるためにFOX側は主張を続けたということです。
訴訟の焦点である「トランプ氏らの主張が虚偽だと認識しているのか」に注目が集まっていましたが、FOXは虚偽の主張であったことを認め、和解の選択を取りました。和解を選択した理由としては、公開の場で経営陣や司会者らが証言しなくてはならなくなる状況を回避したかったため、だとされます。
ドミニオン社の代理人は「嘘の連発がドミニオン社とこの国に危機的な損害を与えた」と強調しました。ネット上では「視聴率のためにフェイクニュースを流すのは報道メディア失格」「ぜひ日本の裁判も見習ってほしい」「日本でもこういったフェイクニュースありそう」などの意見が寄せられています。