大阪公立大学などの研究チームが、ネコの人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製に成功したと発表しました。高品質のiPS細胞の作製が可能になったことで、ネコの病気の解明や新薬の開発に役立つと期待されています。
チームは2023年、イヌのiPS細胞の作製に成功しており、その際に活用した遺伝子と同様のものがネコにも存在することを発見。それらの遺伝子をネコの線維芽細胞に導入したところ、iPS細胞を作り出すことができました。
ただし、初期化しなかった線維芽細胞が多く増殖し、iPS細胞の増殖が阻害されるという問題が発生していました。薬剤耐性遺伝子を導入したことで、初期化していない細胞だけを薬剤で死滅させ、iPS細胞を効率的に増やすことに成功したとのことです。
さらに、避妊手術の際に取り出される子宮由来の細胞からも、iPS細胞を作製できることがわかりました。これにより、より多くのネコからiPS細胞を作製できる可能性が広がっています。
大阪公立大学の鳩谷晋吾教授は、「iPS細胞が代わりを果たせるのではないか。難しい病気の解明に期待したい」と話しています。世界的に動物実験を避ける流れがある中、ネコのiPS細胞の実用化が進めば、動物愛護の観点からも大きな意義があるといえるでしょう。
鳩谷晋吾教授らの研究グループ、イヌiPS細胞の作製に成功
大阪公立大学の鳩谷晋吾教授らの研究グループは、2021年に犬の血液細胞からイヌiPS細胞の作製に成功したことを発表しました。この成果は、犬や飼い主、さらには社会や人の健康にも影響を与える可能性があるとして注目されています。
獣医療でも幹細胞を活用した治療が行われていますが、多能性幹細胞の使用はまだ少ないのが現状です。犬のiPS細胞研究は以前から進められていたものの、皮膚の線維芽細胞などからの作製では犬への負担が大きいという課題がありました。
鳩谷晋吾教授は、「研究のために犬に苦痛を与えるのは良くない。血液細胞からiPS細胞が作れるようになれば、検査時の血液の一部を分けてもらうだけで済むし、飼い主も納得して細胞提供してくれるはず」と話します。
また、特定の犬種だけでなく多様な犬種の細胞からiPS細胞を作製することで、研究の幅を広げられるとのことです。血液細胞からiPS細胞を作る研究を進めていけば、犬の体への負担を軽減しつつ、再生医療や創薬などの可能性を広げることができるといいます。