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「最近、子どもの元気がない」
「以前は楽しそうにしていたのに、最近は笑わなくなった」
そんなふとした子どもの変化に、胸騒ぎを覚えたことはありませんか?
もしかしたら、それは子どもの心が発するSOSかもしれません。
近年、子どものうつ病は増加傾向にあります。決して珍しいものではありません。そして、子どもは、自分の気持ちをうまく言葉で表現できないことがあります。
そのことに、私たち親や周りの人が気づかなかった場合、残念ながら、最悪、自ら命を絶ってしまうという悲しい結末を迎えてしまうこともあるのです。
現に、2023年の自殺者数は人口10万人あたり24.6人。毎月1,500人〜2,000人あまりの人が亡くなっています。また、10代・20代の死因の第一位は圧倒的な大差で「自殺」です。
将来を担う子どもたちの自殺。食い止めたいですよね。
そのためには、自殺に至るまでの「うつ病」に、まず私たちが気づいてあげることが大切なのではないでしょうか。
今回は、子どものうつ病のサインと親ができる対応、そして何より大切な命を守る方法について、分かりやすく解説します。
参照:
厚生労働省自殺対策推進室「令和5年中における自殺の状況」
令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
子どものうつ病の現状は?
一般的にうつ病は「DSM-5」と呼ばれる国際的な診断基準をもとに診断されます。その診断基準は以下の通りです。
主な症状
- 抑うつ気分:気分が落ち込む、悲しい、または絶望的な気分になる。
- 興味・喜びの喪失:以前は楽しめていたことに興味や喜びを感じなくなる。
その他の症状
- 食欲の変化:食欲がなくなる、または過食になる。
- 体重の変化:体重が減る、または増える。
- 睡眠の変化:眠れない、または寝すぎる。
- 精神運動の変化:そわそわしたり、落ち着きがなくなったりする、または動作が遅くなったり、話したり考えたりすることが難しくなったりする。
- 疲労感:疲れやすくなる、または気力がなくなる。
- 無価値感や罪責感:自分には価値がない、または自分は悪い人間だと感じる。
- 思考力や集中力の低下:集中することが難しくなる、または決断することが難しくなる。
- 自殺念慮や自殺企図:死にたいと考える、または自殺を計画したり、試みたりする。
これらの症状のうち、5つ以上(少なくとも1つは主な症状)が2週間以上続き、以前の生活に支障をきたしている場合に、うつ病と診断されます。
何も興味を持てない状態が2週間続くというのは、結構子供の心にはしんどいものです。
では、どれくらい子どものうつ病がいるのでしょうか。意外と多いのです。
2007年の海外研究によると、発症年齢が12歳未満の児童期発症群は12.0%、12歳以上17歳未満の青年期発症群は25.2%であり合計すると、児童でうつ病を発症している割合は37.2%にも上ります。
また、アメリカで10,123人に対して行った研究によると、13〜18歳の青年の11.7%(男性7.7%、女性15.9%)が、大うつ病性障害または気分変調性障害と診断されています。
さらに、13-18歳以下の1,389,447人の小児および青少年を対象とした191の研究の系統的レビューでは、うつ病、不安症、睡眠障害の有病率がそれぞれ31%、31%、42%であることが明らかになっています。
10人に1人、多くて3人に1人が「うつ病」と診断されている現代。青少年のメンタルヘルスは非常に深刻な状況になっているのです。
参照:
「子供のうつ病」再考。児童青年精神医学とその近接領域 57(3 );415─424(2016)
Is children’s mental health an important function of newly national organization for health crisis management in Japan?
子どものうつ病の特徴は?
子どものうつ病の大変なのは、なかなか理解されず、見過ごされることです。大人だと何も興味が湧かないと「ズーン」と重くやる気がでないことが続くようなものですが、子供では違う表現をします。
例えば、次のような表現方法を取ります。
- 些細なことで怒り出す。
- すぐに泣き出す。
- 暴力を振るう。
- 物を壊す。
- 学校に行きたがらない。
- 成績が低下する。
- 食欲不振や過食になる。
- 眠れない、または寝すぎる。
- 疲れやすい。
- 集中力がなくなる。
- 頭痛や腹痛を訴える。
気分の落ち込みよりも、イライラしやすかったり、怒りっぽくなったりすることが特徴の一つです。また、自然に良くなることも多いですが、再燃も多く、50-70%は再燃します。
身体症状も訴えやすいのも特徴の一つ。頭痛や腹痛、だるさ、腰痛などさまざまな形で訴えます。引きこもりや学力低下、家庭内暴力という形で表出することもあります。
このように、子どものうつ病の症状はかなり違う形であらわれるのです。私たちはそのような子どもたちのうつ病の「SOS」に気づかないといけません。
参照:小児期のうつ病・うつ状態
子どもたちのうつ病を防ぐために、私たち大人ができること
子どもたちのうつ病を防ぐために、私たち大人ができることはたくさんあります。子どもたちと向き合えば、最悪の事態を回避することができます。
では、どうすればいいのでしょうか。
まず、子どもたちの気持ちに寄り添い、話をよく聞くことから始めましょう。子どもたちは、悩みや不安を言葉でうまく表現できないことがあります。そのため、私たち親が子供たちの様子をよく観察し、変化に気づくことが重要です。
また、子どもたちが安心して過ごせる環境を作ることも大切です。家庭や学校で、子どもたちがリラックスできる空間になっているか、よく考えてください。もしそうでないなら、家を「帰ってもいい場所」にしてあげてください。居場所があるかないかは、子どもたちのうつ病と大きく関わります。
さらに、子どもたちが「自分がいてもいいんだ」と感じられるように接してみてください。これを「自己肯定感」といいます。子供たちは、周りの大人から認められ、愛されていると感じることが、自己肯定感を育むうえで重要です。
子どもたちに普段からあいさつしていますか?
子どもたちのいいところ、褒めていますか?
子どもたちの行動に「ありがとう」と感謝していますか?
子どもたちの「いいところ」をいっぱい見つけてみてください。
もちろん「うつ病かな?」と思ったら、専門医に受診することも大切なことです。医療機関での治療は何も薬だけではありません。心のプロとのカウンセリングを受けることもできるし、グループ診療では同じ境遇をもつ子供たちとのやりとりをすることもできます。
もちろん、心を変えるきっかけとなる薬物治療も大切です。ずっと飲み続けるわけではありません。今の子どもたちにあった薬を専門医が選んでくれることでしょう。
うつ病にならないように自分の心もケアする
最後に、子どものうつ病から自身もうつ病にならないでください。自身もうつ病になってしまったら、ネガティブな感情が子どもにも波及し、負のループが作られてしまいます。
ご自身のメンタルヘルスも大切に。自分自身の心のケアができるように、相談できる環境を普段から整えてください。