
デジタル時代の情報共有における著作権侵害事件が明るみに出ました。警視庁は5月30日、インターネット配信記事の無許可複製・配布を行ったとして、東京・千代田区のコンサルティング企業「ジェイ・ウィル・エックス」の経営陣と従業員を著作権法違反容疑で書類送検したと発表しました。
送検されたのは同社の60歳代表取締役と43歳従業員、そして法人格としての企業本体です。捜査により、2023年から2024年にかけて雑誌「FACTA」をはじめとする出版社5社のオンライン記事計16本を権利者の同意なしに複製し、社内ネットワークや電子メールを通じて配布していた実態が判明しました。
さらに深刻なのは事件の規模です。2023年1月から2024年10月の期間中、有料会員制サイトの記事やインフラ関連報道など、総計約1万3,000本もの記事をコピー&ペーストで不正複製していたことが発覚しています。
関係者は取り調べに対し、容疑事実を大筋で認める一方、「業務に役立つ情報だったので共有していた」と動機を説明しています。
また、書類送検されたコンサルティング企業は当局の捜査に対して全面的な協力姿勢を示し、権利者との示談協議も並行して進めています。企業側は事件の詳細についてコメントを控えているものの、問題解決に向けた積極的な取り組みを行っている様子です。
著作権侵害事件の背景と企業が知るべき法的基準
著作権法における記事の保護範囲は、単純な事実報告を超えた創作的要素の有無で決まります。過去の判例では、鉄道会社が社内システムで新聞記事を無断掲載し、法的責任を問われたケースがあります。
このような著作物の無断複製は、購読者数の減少を通じて権利者に直接的な経済損失をもたらすため、厳格な法執行が行われています。
法的に認められる「私的使用」の範囲は、個人や家庭など極めて限定的な環境での利用に限られるとのことです。企業内での業務目的による配布は、明らかにこの範囲を逸脱しています。
しかし、適切な引用ルールに従えば、部分的な利用と自己の見解追加により許可なしでの活用も可能です。ただ、全文利用を希望する場合は権利者の事前承諾が不可欠です。有料・無料の区別は著作権侵害の成否に影響しません。
デジタル技術の普及により情報の拡散が容易になった現代では、コンテンツ制作者の権利保護と法的リスクの事前確認がより重要になっています。