
政府は株式の配当など金融所得を高齢者の医療費の保険料や窓口負担に反映する方針を固めました。損益通算のための確定申告をしなければ、保険料負担などが軽くなる不公正を是正することが目的です。2020年代後半の開始を目指し、金融資産を多く持つ高齢者の医療給付費を抑え、現役世代の負担軽減につなげます。
月内にまとめる経済対策に「具体的な法制上の措置を2025年度中に講じる」と明記する方針です。2026年の通常国会に関連法の改正案を提出する予定となっています。自民党と日本維新の会が10月に結んだ連立合意書では、25年度中に制度設計を実現すると明記されており、近く厚生労働省や財務省、総務省、デジタル庁など関係省庁による検討会議を開く予定です。
まずは75歳以上が入る後期高齢者医療制度への反映を目指す見通しです。働き方の違いによる加入保険の差がない75歳以上から始めた方が、不公平感を生まないとの見方があります。医療やマイナンバーなどに絡む複数の法改正が必要となる見込みです。自営業者らが入る国民健康保険や介護保険への反映も検討する一方、会社員らが入る健康保険は対象外とします。確定申告と関係なく給与をもとに保険料が決まり、労使折半で負担するため反映のハードルが高いからです。現役世代の資産形成を促す少額投資非課税制度(NISA)の口座も算定対象から外します。
後期高齢者医療制度や介護の保険料は給与や年金といった所得に応じて決まっています。上場株式の配当や社債の利子といった金融所得は、損益通算のために確定申告をすればいまも翌年度の社会保険料に反映されている状況です。ただ医療保険を運営する自治体などが、未申告の金融所得を把握するルートはありません。保険料や窓口負担が軽くなるケースがあり、不公平さが指摘されていました。厚労省は対象となる金融所得のうち、金額ベースで約9割が算定から外れているとみています。
マイナンバーを活用した「法定調書データベース」を構築
データ把握には証券会社などが国税庁に提出する税務調書を使う予定です。市町村などが把握できるよう専用の「法定調書データベース(仮称)」をつくる方向で、厚労省所管で医療費請求書の審査を手掛ける社会保険診療報酬支払基金(東京・港)に置く案があります。金融と保険データの照合を自治体が担うのは荷が重く、負担軽減にも配慮する考えです。
調書は紙でのやりとりが残り、デジタル化が欠かせません。マイナンバーが記されていないケースもあります。オンライン提出義務化やナンバー記入の徹底などが課題となる見通しです。
財務省の試算によると、75歳以上で配当収入が同じ年500万円でも申告をしなければ医療保険料は年1万5000円ほどで済みます。確定申告をするとおよそ35倍の約52万円に跳ね上がります。医療費の窓口負担も原則の1割から3割に上昇する見込みです。75歳以上が入る後期高齢者医療制度の給付費は、総額の4割を現役世代らの保険料を原資とする「仕送り」が支えています。所得のある高齢者が能力に見合った負担をすれば、結果的に現役世代からの支援は抑えられることになります。












-300x169.jpg)