アストロスケール「ADRAS-J」、世界初の成果を経て軌道降下フェーズへ

アストロスケール「ADRAS-J」、世界初の成果を経て軌道降下フェーズへ

株式会社アストロスケールは2026年3月25日、商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ)」の軌道上運用を終了し、軌道降下運用を開始したと発表しました。ADRAS-Jは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める「商業デブリ除去実証(CRD2:Commercial Removal of Debris Demonstration)」フェーズIの実証衛星として、アストロスケールが開発・運用を担ってきた機体です。

同機は2024年2月18日にロケットラボ社の小型ロケット「Electron(エレクトロン)」でニュージーランド・マヒア半島から打ち上げられました。ターゲットとなったのは、2009年1月に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」を打ち上げたH-IIAロケット15号機の上段で、全長約11メートル、直径約4メートル、重量約3トンの大型スペースデブリです。

ADRAS-Jはこの非協力物体に対し、数百メートル級の後方接近から近距離撮影、約50メートルの距離を維持した定点観測および周回観測など、一連のランデブ・近傍運用(RPO)を実施しました。2024年11月にはデブリのペイロードアダプタフィッティング(PAF)下方約15メートルまで接近し、その状態を詳細に撮像するとともに、相対姿勢と距離を維持する制御技術の実証に成功しています。この極近傍運用中には、相対姿勢制御の異常を検知したことでFDIR(異常検知・隔離・復旧)機能が自律的に作動し、衛星は安全な距離まで退避しました。

万が一の衝突を回避する安全機能が実際の軌道上で適切に働いたことも、今回のミッション成果として位置づけられています。約293日におよぶ運用を通じて得られたデータと知見は、今後のデブリ除去技術の高度化に活用される予定です。

ADRAS-Jは現在、5年以内に自然落下し大気圏へ再突入できる軌道まで高度を下げており、最終的には大気圏で燃え尽きる計画です。アストロスケールは、対象となったH-IIAロケット上段のPAFに大きな損傷が見られないことも確認しており、将来の捕獲ミッションに向けた重要な情報が得られたとしています。同社は今回の成果を、民間主導による軌道上サービスや本格的なスペースデブリ除去ビジネスへの橋頭堡と位置づけています。

2027年度打ち上げ予定の「ADRAS-J2」、日本発のデブリ「捕獲」実証へ

CRD2フェーズIIとして計画されている次期ミッション「ADRAS-J2」は、ADRAS-Jが接近・観測したのと同じH-IIAロケット15号機上段の大型デブリを、ロボットアームなどの機構で捕獲し、軌道から離脱させることを目指す実証衛星です。JAXAは2024年にフェーズIIの事業者としてアストロスケールを選定し、約132億円の契約を締結しており、ADRAS-J2の打ち上げは2027年度内を予定しています。

ADRAS-J2では、ADRAS-Jで蓄積された非協力デブリへの接近・相対制御・詳細観測の技術に、捕獲および安全な軌道離脱のプロセスが加わることで、より実運用に近いデブリ除去技術の確立が期待されています。これが成功すれば、日本発の世界初となる「大型スペースデブリの商業除去実証」となる可能性が高く、増え続ける宇宙ごみ問題に対する国際的な解決策の一つとして注目を集めそうです。

アストロスケールとJAXAは、持続可能な宇宙利用の実現に向け、今後も軌道上サービスやデブリ除去技術の研究・実証を進めていく方針です。

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. 石油タンカー
    赤沢亮正経済産業相は24日の閣議後記者会見で、緊迫する中東情勢を受けてホルムズ海峡を通らない代替ルー…
  2. アームが初の自社設計チップ「AGI CPU」発表 SBGのAI戦略加速
    ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英アームは3月24日、データセンター向け初の自社設計半導体「AG…
  3. 東海道新幹線に「完全個室」上級クラス 専用Wi‑Fiと“音漏れしない”スピーカー導入へ
    JR東海は2026年度、東海道新幹線N700Sの一部編成に、グリーン車を上回る完全個室タイプの上級ク…

おすすめ記事

  1. 横須賀刑務支所に建てられた第31回横須賀矯正展(2023年10月29日開催)の看板

    2023-12-8

    横須賀矯正展とは?刑務所内のブルースティックの生産工場も見学できる

    横須賀矯正展は年に一度、横須賀刑務支所により開催される刑務所イベントで、今回で31回目。横須賀刑務支…
  2. 2023年12月9、10日に開催された全国矯正展の会場(東京国際フォーラム)の入口

    2024-1-22

    日本最大規模の刑務所イベント、全国矯正展とは?刑務作業を通じて届ける矯正行政の今

    2023年12月9日(土)・12月10日(日)の2日間にわたり、東京国際フォーラムにて「全国矯正展」…
  3. 網走刑務所で刑務作業を行う受刑者

    2025-7-21

    網走刑務所とはどんな場所?現役職員に聞いた歴史と受刑者の今

    強固な警備体制や凶悪事件の受刑者が収容されるイメージもある網走刑務所。映画やドラマなどの影響で、怖い…

2025年度矯正展まとめ

2024年に開催された全国矯正展の様子

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る