子どもの教育に重要な食育 現状とその意義

「子どもの教育に重要な食育 現状とその意義」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

「食育」という言葉を聞いたことがあるけど、実際にどんなことをするのかよくわからないし、実施することでどんな効果があるのかもピンとこない。
このような人は多いのではないでしょうか。

食事は生きていくのに欠かせないもので、私たちの生活に大きな影響を与えています。
その食事について、深い知識を持っていることは非常に重要で、食育を行ううえで非常に多くのメリットが得られます。

そこで今回は、食育とはどのようなものなのか、食育をすることでどのようなメリットがあるのかについて解説をしていきます。

そもそも食育とは

「食育」という言葉はよく聞くと思いますが、実際どのようなものなのかをみていきましょう。

食育の定義について、農林水産省が以下のような定義付けをしています。

食育は生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり、さまざまな経験を「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです。

農林水産省「食育の推進」

食べるものを選ぶということは、その人の健康状態に非常に密接に関わっています。栄養の知識をつけたり、好き嫌いや偏食をなくすことで、将来の健康状態は大きく改善します。

また、3食規則正しく食べることは、他の生活習慣が規則正しくなることにつながります。
さらに、私たちの食卓に上がってくる食べ物について理解を深めることで、自然に対する興味を刺激し、学習意欲の向上にも効果が期待できます。
そして、自然への感謝や伝統文化・環境・地域について考えるきっかけにもなります。

日本の食育の現状

日本は比較的食育に対して関心がある人が多い国だと言えます。

農林水産省が全国の20歳以上の男女5,000人を対象に意識調査を行ったところ、「食育に関心がある」と、83.2%の人が答えました。
また、健全な食生活への心がけについての質問で「心がけている」と答えたのは、75.7%とこちらも多数派でした。
(参考:農林水産省「食育に関する意識調査」

しかし、農林水産省がまとめた2017年版「食育白書」によると、1日の全ての食事を1人で取る「孤食」の日が、週の半分以上の人が15.3%となり、2011年と比べて5ポイント上昇したことがわかっています。

さらに、朝食の状況については、1~6歳においても、”週に1~2回しか食べない”子どもが2%前後みられるように、「食育」への関心が高まっている反面、現実は「食育」への取り組みが行われていない現実も見えてきます。

ここでは、幼児の朝食の摂食状況と、夕食を家族がそろって食べている状況について、表にまとめました。

1歳2歳3歳4歳5-6歳
毎日食べる89.385.083.687.889.6
週に1-2回抜く6.310.510.37.26.9
週に3-4回抜く0.41.01.50.60.7
週に1-2回しか食べない1.62.02.02.21.6
その他2.31.32.11.91.0
無記入・不明0.10.20.60.20.2
表1.幼児の朝食の摂食状況(日本小児保健協会.平成12年度幼児健康度調査)

 1986年1991年1996年2001年
毎日36.531.530.831.6
週4日以上21.82119.917.1
週2-3日24.229.530.431.2
週1日だけ11.311.510.810.8
ほとんどない6.25.77.37.3
不詳0.60.91.9
表2.家族そろって夕食をとる頻度(厚生労働省.児童環境調査)

食育のメリットとは

日本でも、食育が浸透しているということについて解説をしていきましたが、具体的に食育をすることで、どのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

①健康に良い食事を摂ることで体力・学力に良い影響を与える

食事内容は、人の健康に非常に大きな影響を与えます。
しっかりと栄養をとることが、子どもの健やかな生活には不可欠です。
お菓子をご飯がわりにする、3食きちんと食べないなどの食生活を続けると、健康を害します。
また、不健康な食生活を行うことは、精神にも影響を与えます。
高カロリー食や栄養不足の食品、飲料が、うつ病やその他の精神障害の独立した予測因子となるという報告があるのです
(参照:Opie,R. S.,Itsiopoulos,C.,Parletta,N.,etal.: Dietary recommendations for the prevention of depres- sion. Nutr Neurosci, 2015[Epub ahead of print])
つまり、食育は、生涯健康でいるために早めに取り組む必要があるものなのです。

②社会性を養う助けになる。

近年、日本は核家族化が進んでおり、子どもが一人で食事をする孤食が多くなっていることが問題となっています。
食育には、家族や友人と食事を用意するなどの過程も含まれています。
食事を用意するときに他の人と協力することで、社会性を身につける助けにもなるのです。
他の人と食卓を囲むときは、食卓はマナーを学ぶのに打ってつけの環境になります。
小さいときに食卓でのマナーを学んでおくと、ビジネスシーンでの会食などで大人になってからも、生涯役に立つ知識を習得することができます。
食事のマナーが分かっていると、食事の席で交友関係を広げることにも役に立ちます。
対人スキルの点からも食育を行うメリットは大きいのです。

●食育の実践例

食育を家庭でやる場合、未就学児などに、いろいろな食材を取り入れた食事を食べさせるという一つの実践例があります。

いろいろなものを食べる中で、どんな食べ物があるのかわかるようになります。
まだ好き嫌いが多い時期ではあるので、嫌いなものを無理に食べさせるのではなく、好きになる食べ物を増やす感覚で実践をしていきます。

食べられそうな量を出して、食べられたらおかわりしてもらうなど、食べることに対する意欲を持たせる工夫をしましょう。
食材の買い物や調理を一緒にしてもらうのも効果があります。

小学生になったら食事のバランスを一緒に考えてみましょう。
食事のタイミング、食材のバランスを一緒に考えることが効果的です。
今日は何を食べたいか考えてもらい、その上でバランス良い食事にするために、どのようなものを他に食べればいいか考えてみましょう。
細かい栄養の話というのではなく、「お肉料理を作るから、サラダも一緒に食べようね」などの声かけをしてみてください。

中高生になると、本格的に栄養素について学んで、理解することができるようになります。
「3食決まった時間に」「主食・主菜・副菜をバランスよく食べる」ことを習慣付け、将来自分で食生活を考えられるように学習しましょう。

ここに挙げているのは、家庭での食育です。
保育園や幼稚園・学校で、どのような取り組みをしているか知りたい場合には、農林水産省の出している実践例集があります。
家庭でもできそうなものもあるので参考にしてみてください。
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/attach/pdf/index-252.pdf

まとめ

食育は単に栄養バランスの良い食事を摂ることにとどまらず、社会で生きていくにあたって必要なさまざまなスキルを身につけることができます。
ぜひできるところから子どもと一緒に食事について考えてみましょう。

秋谷進医師

投稿者プロフィール

小児科医・児童精神科医・救命救急士
たちばな台クリニック小児科勤務

1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。
金沢医科大学研修医、国立小児病院小児神経科、獨協医科大学越谷病院小児科、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科、東京西徳洲会病院小児医療センターを経て現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。

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