
米半導体大手インテルが2025年10月23日に発表した2025年7-9月期決算は、最終損益が40億6300万ドル(約6200億円)の黒字となり、7四半期ぶりに黒字転換を果たしました。前年同期は166億3900万ドルの赤字を計上していたため、大幅な改善となっています。この決算発表を受けて、24日の東京株式市場では日経平均株価が前日比658円高の4万9299円と3日ぶりに反発し、インテル関連株を中心に半導体セクター全体が上昇しました。
今回の黒字転換の背景には、主力のパソコン向け半導体部門の持ち直しと、徹底したコスト削減策があります。同社のClient Computing Group(CCG)の売上高は前年同期比5%増の85億ドルとなり、AI PC需要が牽引役となりました。一方で、データセンター・AI部門は1%減の41億ドルと伸び悩んでいます。
売上高は前年同期比3%増の136億5300万ドル(約2兆800億円)となり、市場予想を上回りました。特別項目を除く1株当たり利益は0.23ドルで、市場予想の0.01ドルを大幅に上回る結果となっています。
黒字転換の大きな要因となったのが、人員削減や設備投資の見直しによるコスト削減です。2025年3月に新CEO(最高経営責任者)に就任したリップ・ブー・タン氏は、積極的な経営再建策を推進してきました。同氏は2009年から2021年までCadence Design SystemsのCEOを務め、在任中に同社の収益を2倍以上に増やし、株価を3200%以上上昇させた実績を持つ半導体業界のベテランです。
インテルが課題としてきたファウンドリー(半導体受託生産)事業についても、売上高は前年同期比2%減の42億3500万ドルとなったものの、営業赤字は23億2100万ドルに縮小しました。前年同期の57億9900万ドルの赤字から大幅に改善しており、工場への投資額を減らしたことが功を奏しています。
同社は7月、2025年末までに従業員数を約7万5000人に削減する計画を発表しており、これは2024年末の約9万9500人から約2万4000人の削減に相当します。また、ドイツとポーランドでの新工場建設計画を中止するなど、需要の確実性が見込めない大規模投資の見直しも進めています。
インテルの経営再建を支えているのが、国内外からの大規模な資金支援です。同社は第3四半期に、米国政府からCHIPS法に基づく57億ドルの支援を受領しました。米政府は8月、経済安全保障の観点から総額89億ドル(約1兆3000億円)をインテルに出資すると発表し、同社株式の9.9%を取得して筆頭株主となっています。
さらに、AI半導体で圧倒的な存在感を持つエヌビディアが50億ドル(約7400億円)を出資し、両社は半導体の共同開発に取り組むことになりました。これまでAI半導体を巡って競合関係にあった両社による異例の提携となります。ソフトバンクグループも20億ドル(約3000億円)を出資する方針で、米政府、エヌビディア、ソフトバンクGという三大株主の存在がインテルの経営に強力な影響力を与えることになります。
同社はこれらの資金調達に加え、Alteraの売却益として約52億ドルを計上しており、財務体質の改善が進んでいます。
東京市場で半導体関連株が全面高 投資家は慎重な楽観姿勢
インテルの好決算を受けて、24日の東京株式市場では半導体関連株が全面高となりました。イビデン、アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロンなどの半導体製造装置関連が軒並み上昇し、キオクシアホールディングスは上場来高値を更新しました。また、ソフトバンクグループも急反発し、相場全体を牽引しました。
インテルの時間外取引では株価が約7%上昇し、市場は同社の経営再建策を評価しています。ただし、同社は2025年10-12月期の売上高見通しを128億~138億ドル(中央値133億ドル)としており、市場予想の134億ドルをわずかに下回る水準となっています。
アナリストの間では、インテルの再建には「最大2年かかる」との見方もあり、先端半導体の量産体制確立や、エヌビディアやAMDに奪われた市場シェアの回復など、課題は依然として山積しています。それでも、今回の黒字転換は、タンCEOが推進する経営改革が確実に成果を上げ始めていることを示す重要な転換点となりました。








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