
米国防総省が、イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXに20億ドル(約3000億円)を支払う契約を検討していることが明らかになりました。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道をもとに複数の米メディアが10月31日に伝えました。契約が成立すれば、全米ミサイル防衛構想の一環として、宇宙からミサイルの動きを追跡するための人工衛星を開発・打ち上げる重大なプロジェクトになります。
人工衛星開発の予算は、7月に成立した「One Big Beautiful Bill Act(OBBB Act)」に盛り込まれており、国防総省は今後600機以上の衛星を宇宙に投入する計画を立てています。スペースXはこれまでも米政府に対して軍事通信向けサービス「スターシールド」を提供しており、同社の安全保障上の役割は着実に拡大しています。
一方で、トランプ政権は中国やロシアが進める弾道・極超音速ミサイル開発への警戒を強めており、米国の防衛システムを強化する必要性を訴えています。トランプ大統領は3月の演説で「この世界は極めて危険だ」と語り、宇宙からの総合的な防衛体制「ゴールデン・ドーム」の実現に意欲を示しました。
スペースXは再利用可能な打ち上げロケット「ファルコン9」などで民間宇宙輸送の分野をリードし、国際宇宙ステーション(ISS)の物資補給任務を担うなど幅広い実績を有します。加えて、数千の人工衛星によるインターネット通信サービス「スターリンク」も展開しており、すでに150以上の国と地域で利用可能です。民間と軍事の両面で、同社の存在感はますます高まっています。
NASAとの協力、月面着陸計画に課題も
スペースXは安全保障分野に加えて、米航空宇宙局(NASA)の月面探査計画でも主要な役割を担っています。しかし10月20日、運輸長官のショーン・ダフィー氏(NASA関連の発言として)が月面着陸船の開発遅延を指摘したことを受け、同社は「計画の簡素化や効率化をNASAと共に検討している」と発表しました。
NASAは2027年半ばまでにアポロ以来となる有人月面着陸を目指していますが、中国も2030年までに同様の計画を進めており、時間との競争が激化しています。ダフィー長官は「米国が先行する必要がある」と述べ、スペースX以外の企業も開発候補に加える意向を示しました。月面探査の主導権を巡る国際的な競争の中で、スペースXは再びその責任と実力を問われる局面に立っています。












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