
人手不足が深刻化する外食業界で、日本マクドナルドが65歳以上のスタッフを積極採用し注目を集めています。現在8,500人を超えるシニアクルーは10年で3倍以上に増加し、最高齢は96歳にも達しています。
この成功の鍵は、同社独自の業務設計にあります。調理や接客をきめ細かく分業化することで「ポテトを揚げる」「車を誘導する」といった単一業務に特化した働き方が可能に。89歳のクルーも「業務内容がシンプルでわかりやすい」と評価しています。
週1回2時間からの「プチ勤務」も高齢者に好評で、全体の6割を占める学生スタッフが試験シーズンなどで不足する時間帯を補う貴重な戦力となっています。
さらに驚くべきは、シニアが店舗の競争力向上に直接貢献している事例です。68歳の女性クルーが「店頭スカウト」の中心となり、わずか1年でスタッフ数を倍増させた東京の店舗では、売上も大きく向上しました。
人事本部の植村部長は「日本で若者が減る将来を考えると、誰でも働きやすい職場にしないといけない」と述べています。高齢化が進む日本社会において、マクドナルドの取り組みは新たな雇用モデルの可能性を示しています。
ネット上では、「多分これで充分足りない生活費は賄えると思う」「いいけど、おばちゃん風ため口で接客はしないでくれ」などの意見が寄せられています。
マクドナルドのシニア雇用急増の背景 日本社会の構造変化と企業対応
日本マクドナルドでシニア雇用が急増している背景には、日本社会全体が直面する構造的な変化があります。最も深刻なのは生産年齢人口の減少による慢性的な人手不足です。
特に外食やサービス業では、2035年には膨大な労働力不足が予測されており、シニアの活用はもはや選択肢ではなく必須戦略となっています。
法制度面では、「高年齢者雇用安定法」の改正が大きく影響しています。2025年4月からは65歳までの雇用確保が義務化され、さらに70歳までの就業機会確保も努力義務として規定されました。
この流れに対応するため、マクドナルドのような柔軟な雇用形態は先進的モデルとして注目されています。さらに見逃せないのは、シニア自身の就労意欲の高まりです。
経済産業省の調査によれば、現在働いている60代の約8割が「70歳以降も働きたい」と回答しています。その動機は単に経済的理由だけでなく、健康維持や社会参加への欲求も強いのです。
マクドナルドの業務分担システムと柔軟なシフト制度は、こうした社会変化と高齢者のニーズを見事にマッチさせた成功例といえるでしょう。