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日曜日の夜に「あした、仕事か・・・」と憂鬱になる。多くの人がそのような体験をしたことがあると思います。
日本では、日曜日にアニメのサザエさんが放送されていることから、「サザエさん症候群」などと呼ばれていますが、この現象は世界的に知られていて、「ブルーマンデー症候群」と呼ばれています。憂鬱だなと思う程度ならいいのですが、このブルーマンデー症候群により、自殺率が上がってしまうという研究結果も出ています。
今回は、世界の自殺件数と曜日の関係性についての研究をご紹介します。
論文
釜山大学校のWhanhee Lee氏らが、世界26ヵ国の740地域における、1971年1月1日から2019年12月31日の自殺に関する調査(n=1701286)をもとに、自殺リスクと曜日や国の祝日との関連を調査し、British Medical Journalに2024年10月報告しました。
研究の背景
多くの人が健康に生活できる社会を目指す際に、病気などの問題と並んで重要な課題とされているのが自殺の問題です。この自殺は、時期によって件数が変動することが知られています。自殺が起こりやすい日を予測することで、自殺を予防するための対策づくりに役立てられると考えられました。特に、「ブルーマンデー症候群」などのように、曜日や祝日と自殺リスクは関係すると考えられており、特定の曜日や祝日が、人の精神状態に与える研究についての知見を得るために、この研究は行われました。
さらに、性別や年齢による影響、各国の分や社会的背景についても分析するために、世界的な規模での研究が行われたのです。
研究の目的
研究の目的は、以下の3点です。
- 曜日と自殺リスクの関係を明らかにすること
- 国や地域による自殺リスクの高い時期の違いを分析すること
- より効果的な自殺予防戦略のためのデータを収集すること
研究の方法
世界26カ国170万件の自殺事例について調査しました。曜日と国民の祝日(元旦やクリスマスなど)に関する自殺リスクの変動について分析しました。研究では、国ごとの死亡データについて、日付、性別、年齢グループ(0-64歳、65歳以上)で分類して、自殺のリスクに対する曜日や祝日の影響を検討しました。
研究の結果
分析したすべての国において、月曜日は平日のなかで、最も自殺リスクが高いことが判明しました。また、国民の休日については、元旦はすべての国で自殺リスクが上昇していました。一方で、クリスマスは国によって自殺リスクの変動がありました。
これは、新しい経済活動サイクルが始まるときに、自殺率が上がることを示唆します。月曜日や元旦といった週や年の始まりに、次のサイクルのことを考えることが精神的な負担になっていると考えられます。
クリスマスの自殺率は、国によって異なりました。家族や友人との集まりによる社会的サポートの増加は、自殺リスクを低下させる一方で、独居者や社会的に孤立している人々の孤独感を深める可能性があります。また、クリスマスの文化的・宗教的重要性は国によって異なり、これが自殺率の地域差につながっていると考えられます。
祝日中には自殺率は低下する傾向が見られました。祝日前後には飲酒量が多くなるということも判明しており、これが自殺率の変動に影響を与えた可能性があると思われます。
研究で得られた知見
この研究により、自殺率には、曜日や祝日が強く影響を及ぼしていることが明確に示されました。自殺の時間的変動に関する重要な知見が得られたことで、労働者や若い世代のメンタルヘルス向上のための、より効果的かつ効率的な予防計画を立案することが可能になると考えられます。特に、月曜日や年始などのリスクが高まる時期に焦点を当てた対策を講じることで、より効果的な自殺予防が実現できるかもしれません。
自殺リスクの高い時期について、社会全体の理解が深まることで、周囲の人々が身近な人の心身の不調をより早期に察知し、適切な支援につなげることができ、結果として命を失わずに済む人が増えることが期待されます。