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- 【医師の論文解説】電子タバコは紙巻タバコより優れているのか?呼吸器感染症における研究
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最近、従来の紙のタバコに代わって吸われているのが「電子タバコ」です。
タバコをやめたいけれど、なかなか踏み切れない…。
そんなときに、「せめて害の少ないと言われる加熱式タバコなら大丈夫かな?」と考えてしまい、切り替える人が多いようです。
実際、一般常識としても「紙巻きタバコよりはマシ」というイメージを持っているかもしれません。しかし、その「切り替え」は、本当に正しいのでしょうか。
今回、加熱式タバコは本当に健康に良いのか、最新の論文から白黒はっきりさせましょう。
【結論】加熱式タバコへの切り替えは、禁煙に全く及ばない
本研究は、
紙巻きタバコから加熱式タバコ(HTP)に切り替えても、呼吸器感染症に対する体の抵抗力は多少改善されたが、完全に禁煙した場合の効果には遠く及ばないことを、動物実験によって明らかにしました。
つまり、「少しマシ」な選択肢に見えても、感染症へのリスクという点では、紙巻きタバコを吸い続けるのと大きな差はなかったのです。
論文
120年以上の歴史があり世界で最も歴史のある癌治療センター、ニューヨーク州バッファロー市のロズウェルパーク癌センターのTariq A Bhatらは、可燃性タバコからIQOSのような加熱式タバコ製品(HTP)に切り替えることが、急性呼吸器感染症への影響を改善するかについて、Respiratory research誌に2024年10月報告しました。
研究背景
近年、世界中で利用者が増えている加熱式タバコ(HTP)は、タバコ会社によって、「紙巻きタバコよりも害を低減する可能性がある製品」として宣伝されています。 しかし、その宣伝の多くは業界が支援した研究によるものであり、呼吸器感染症のような具体的な病気のリスクが本当に減るのか、独立した立場からの科学的な検証が求められていました。
研究の目的
そこでこの研究チームは、以下の2点を明らかにすることを目的としました。
- 紙巻きタバコを長期間吸っていた喫煙者が、加熱式タバコに切り替えることで、細菌による呼吸器感染症への抵抗力は改善するのか?
- その効果は、完全にタバコをやめる「禁煙」と比べてどう違うのか?
研究方法
研究では、マウスを3つのグループに分けて実験が行われました。
- 紙巻きタバコ継続グループ: 16週間、紙巻きタバコの煙にさらされ続ける
- 禁煙グループ: 8週間は紙巻きタバコの煙に、その後8週間はきれいな空気に切り替える。
- 加熱式タバコ切り替えグループ: 8週間は紙巻きタバコの煙に、その後8週間は加熱式タバコ(IQOS)の蒸気に切り替える。
そして、16週間後、すべてのマウスに細菌を感染させ、肺がどのくらいダメージを受けるか、細菌を排除する能力に違いがあるかなどを比較しました。
研究結果
結果は、非常に明確なものでした。加熱式タバコでは多少改善があった(?)くらいで、圧倒的に禁煙したグループの方が改善していたのです。
①細菌を排除する能力
加熱式タバコに切り替えたグループは、紙巻きタバコを続けたグループよりも、感染から12時間後の細菌除去能力がわずかに改善しました。
しかし、禁煙したグループは、他の2つのグループを圧倒し、はるかに速く、多くの細菌を排除できました。
②肺の炎症とダメージ
肺の炎症細胞(T細胞)の数や、肺の血管からの体液漏れ(アルブミン漏出)といった指標では、切り替えグループは継続グループより多少の改善が見られました。
一方で、肺組織のダメージを示す他の重要なマーカー(MPOやNEという酵素)では、切り替えグループと継続グループにほとんど差は見られませんでした。
そして、ここでも禁煙グループは、すべての炎症やダメージの指標において、劇的な改善を示しました。
簡単にまとめると、「加熱式タバコへの切り替え」による健康改善効果はごく限定的で、「完全な禁煙」がもたらすメリットとは比べ物にならない、ということが示されたわけです。
この研究の注意点
本研究には注意点がいくつかあります。
まずは、本研究はマウスを用いた動物実験であるこということ。
もしかすると、人間だと加熱式タバコの有用な点がみつかるかもしれません。もう一つは、今回は特定の加熱式タバコ(IQOS)なので、別のブランドでの有用性がみつかるかもしれません。
しかし、少なくとも「加熱式タバコは体にいい」とは言えなさそうです。
加熱式タバコで言い訳しない
加熱式タバコに切り替えることで、いくつかの指標で「紙巻きタバコよりはマシ」という結果が得られはしたものの、非常に限定的です。
そして何より「完全な禁煙」が、体の防御機能を回復させるうえで、最も効果的かつ確実な方法であることが、改めて科学的に示されています。
もしあなたが今、ご自身の健康を真剣に考えているのなら、安易な「切り替え」という選択肢に頼るのではなく、あらゆるタバコ製品から離れる「禁煙」にまずはチャレンジしてください。
多くの医療機関で禁煙しやすくする「禁煙外来」を行っています。一度医療機関にも相談するとよいでしょう。


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