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- 世界で唯一日本の「ハンコ注射」 BCGワクチンの効果と結核の現状

あなたの腕にもあるかもしれない「18の点」、何だか分かりますか?
「18の点」は、結核を予防するBCGワクチンの跡です。この注射方法はハンコ注射と呼ばれ、現在、国の定期接種として広く採用しているのは世界で日本だけです。
この記事では、日本のBCGワクチンの特徴、結核の現状、ワクチンの大切な役割について詳しく解説します。
結核は過去の病気ではない
結核は、今も日本の重要な感染症です。予防の基本は、「手洗い」「咳エチケット」「日常の健康管理」ですが、乳幼児に有効な予防法としては、BCGワクチンがあります。
1.結核とは?
結核は、結核菌によって引き起こされる感染症です。患者さんの咳やくしゃみなどを通じてうつる、麻疹(はしか)などと同じ空気感染(飛沫核感染)で広がります。
咳などで飛び散る水分を含んだ粒子を飛沫と呼びますが、重いためすぐに落下します。一方、飛沫の水分が蒸発した飛沫核はとても小さく、長時間空気中を漂うのが特徴です。結核菌は乾燥に強いため、飛沫核の状態でも感染力を失いません。そのため、2メートル以上離れていても感染する可能性があり、通常のマスクでは防ぎきれないとされています。
2.日本の結核の現状
昔の病気というイメージがあるかもしれませんが、結核は今なお日本の重要な感染症です。2024年の統計では、新たに10,051人が結核と診断され、1,461人の方が亡くなっています(概数)。
人口10万人あたりの新規患者数を示す罹患率は8.1で、目標であった「低まん延国」(罹患率10.0以下)の水準を2021年から維持しています。しかし、欧米の先進国と比較すると、まだ高いのが現状です。
3.結核の予防
結核の予防には、基本的な「手洗い」や「咳エチケット」、十分な睡眠や栄養で免疫力を保つといった日々の健康管理が大切です。結核患者さんのケアなど、特殊な環境ではN95という特殊なマスクが必要になります。
乳幼児に有効な予防法が、BCGワクチンです。BCGワクチンは、結核の発病を予防し、特に子どもが結核性髄膜炎や粟粒結核といった重い結核になるのを防ぐうえで高い効果があります。公費での接種は、生後1歳になるまで(標準的には生後5か月から8か月の間)に受けることが推奨されています。
ただ、長期入院などで1歳までに接種できなくても、4歳まで、かつ特別の事情がなくなった日から2年を経過するまでなら定期接種の対象です。
日本のBCGは世界で唯一の接種方法
日本でハンコ注射(経皮多点接種)が始まったのは1967年のことです。かつてはイギリスなどでも採用されていましたが、現在、国の定期接種として広く採用しているのは日本だけとなりました。海外のほとんどの国では、注射器を使って皮膚の中にワクチン液を注入する皮内接種法が主流です。
そもそもBCGワクチンの方針は国によってさまざまで、日本のように全国民に一律で接種する国もあれば、ドイツのように感染リスクの高いグループにのみ接種する国、アメリカのように原則実施しない国もあります。
BCGワクチンの効果と歴史
BCGワクチンを接種すると、結核の発症を52~74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に対しては、64~78%予防できると報告されています。ただし、一度接種すれば永久に効果が続くわけではなく、持続期間は10~15年ほどです。
そのため、結核予防会によると、日本では1974年から小学生や中学生の時に再接種する方針がとられていました。しかし、2003年からは乳幼児期の初回接種のみとなっています。
注射の跡がはっきり残る方が効果的?
接種後にできるハンコのような跡(瘢痕)は、ワクチンが体内で正常に反応し、免疫が作られ始めたことを示す生着(せいちゃく)と呼ばれる現象のサインです。近年の研究では、瘢痕が「あるか、ないか」によって、乳幼児の死亡率や呼吸器感染症へのリスクに差が見られたという報告があります。
しかし、瘢痕の数や大きさと、予防効果の強さを関連付ける十分な科学的根拠(エビデンス)は、今のところありません。
新型コロナにも効果が?注目されたBCGの多面的効果
新型コロナウイルスの世界的な流行の際、「BCGを接種している国では感染者や死者が少ないのではないか」という仮説が注目を集めました。実際に、BCGが新型コロナウイルスや高齢者の肺炎などを予防する可能性を示唆する研究もいくつか報告されました。
しかし、後の検証では疑問点も指摘されており、現時点では「BCGが他の感染症も予防する」というのは科学的に確立された見解ではありません。
医師から伝えたいこと
日本のBCG「ハンコ注射」は、世界的に見てもユニークな方法です。結核は患者数が減り、低まん延国レベルになったとはいえ、今も注意が必要な感染症です。
特に、抵抗力の弱い子どもを重い結核から守るために、BCGワクチンは不可欠な予防接種です。できれば標準的な接種期間である生後5か月から8か月の間に、遅くとも1歳になるまでに接種しましょう。
参照文献:
1.朝日新聞.「コッホコッホ」の結核、日本はいまも中蔓延国 なぜハンコ注射?
2.疫学情報センター.世界の結核、日本の結核
3.厚生労働省. 結核とBCGワクチンに関するQ&A
4.厚生労働省. みんなで知ろう! からだのこと
5.日本ビーシージー製造株式会社
6.Yuho Horikoshi,Michiko Toizumi.Pediatric tuberculosis and BCG vaccine in Japan.Vaccine.2025 Aug 30:62:127564
7.おおぐちこどもクリニック
8.TBS.NEWS DIG.腕に残る18の点 “ ハンコ注射 ” はなぜあの形?多くの人は「体に結核菌が眠っている」発病を防ぐには….
9.BCG scarring and improved child survival: a combined analysis of studies of BCG scarring
10.Multiple BCG vaccinations for prevention of COVID-19 and other infectious diseases in Type 1 diabetes. Cell Reports Medicine. https://www.cell.com/cell-reports-medicine/fulltext/S26663791(22)00271-3
11.Arts RJW, et al. BCG vaccination protects against experimental viral infection in humans through the induction of cytokines associated with trained immunity. Cell Host Microbe, 23 (2018), pp. 89100.e5
12.Evangelos J Giamarellos-Bourboulis EJ, et al. Activate: Randomized Clinical Trial of BCG Vaccination against Infection in the Elderly. Cell 2020 Oct 15;183(2):315-323.e9. doi:
10.1016/j.cell.2020.08.051.
13.朝日新聞.あの「BCG仮説」を最新研究で読み解く 新型コロナに効果あったか



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