鳥取地区矯正展で“知られざる堀の中の世界”を体感。7年ぶりの刑務所見学ツアーに長蛇の列

鳥取矯正展で“知られざる堀の中の世界”を体感。7年ぶりの刑務所見学ツアーに長蛇の列

<目次>

1794人が集まった鳥取地区矯正展

2025年10月18日(土)、第44回「鳥取地区矯正展」が開催されました。主催は鳥取刑務所と鳥取少年鑑別支所。全国の矯正施設や刑務作業協力企業などの協力も得て、年に1度、実施されています。

開場前の列

今回の来場者は、1794人。なかでも注目を集めたのは、鳥取刑務所では7年ぶりとなる「刑務所見学ツアー」です。刑務所内の工場や浴場、食事内容など受刑者が生活する施設を見学できる貴重な機会で、午前・午後の2部制で延べ800人が参加。普段は立ち入ることのできない「知られざる堀の中の世界」を体験しました。

会場では、受刑者が日々の刑務作業で製作した製品の展示販売も行われました。高品質で購入しやすい価格が魅力で、開場前から長蛇の列ができるほどの盛況ぶり。刑務所の実情を知るとともに、社会復帰へ向け努力する受刑者の姿を身近に感じられる1日となりました。

鳥取地区矯正展の目的

矯正展は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の一環として開催されており、その目的は大きく3つに分けられます。
1、 矯正行政への理解促進
刑務所で行われている教育活動や改善指導を地域の方々に紹介し、受刑者の更生や社会復帰を支える矯正行政の役割を広く知ってもらうこと。
2、 社会復帰支援
刑務作業製品の展示・販売を通じて、受刑者の社会復帰を支援。
製品が購入されることで、受刑者が「自分の仕事が社会の役に立っている」と実感し、出所後の自立や再就職への意欲向上にもつながる。
 3、犯罪予防・啓発活動
展示や講話を通じて「犯罪をしない・させない」社会づくりの大切さを伝え、地域住民や子どもたちへの防犯教育の機会を創出。「刑務所=怖い場所」という固定観念を改め、受刑者が真摯に更生へ取り組む姿を社会に伝えることも目的のひとつ。

刑務所見学ツアーやグルメコーナーも

2025年度の鳥取地区矯正展は鳥取刑務所で開催されました。
矯正施設ならではの展示や体験、地元学生による演奏など、幅広い世代が楽しめる内容となりました。

〈2025年度鳥取地区矯正展の主な内容〉
・鳥取刑務所見学ツアー
・全国の刑務所作業製品展示・即売
・協力企業・団体の物販(バザー・苔玉など)
・グルメコーナー(刑務所で出されるパンの限定販売・キッチンカー・野菜販売など)
・はたらくクルマ展示(消防車・パトカー・自衛隊車両)
・各種体験コーナー(性格診断・木工・子ども制服試着など)
・江山学園作品展示コーナー
・ステージイベント(吹奏楽・砂神太鼓・しゃんしゃん傘踊りなど)

鳥取矯正展の会場マップ

開場前から多くの人が並んでいた矯正展

来場者は近隣の臨時駐車場からシャトルバスで移動します。 シャトルバスの運行は8時30分からです。8時45分頃、240台の駐車スペースには、すでに多くの車が駐車しており、シャトルバス乗り場も長蛇の列。一方で、もう1箇所の臨時駐車場には駐車スペースに余裕があり、待ち時間なしでシャトルバスに乗ることができていました。

鳥取矯正展行きのシャトルバス乗り場い並ぶ来場者たち


シャトルバスに乗り込むと5分ほどで会場に到着します。鳥取刑務所の前には多くの来場者が並び、開場を待ちわびる姿が見られました。先着100名には人気の作業製品「ブルースティック」がプレゼントされるとのことで、スタッフが先頭の方から順番に1本ずつ手渡していました。「ブルースティク」は、頑固な汚れを落とす洗濯石鹸として知られる刑務所作業製品の人気商品のひとつです。

開場の太鼓

軽快な和太鼓の音とともにイベントが開幕。多くの来場者が構内へと足を踏み入れました。

知られざる堀の中の世界を体験「刑務所見学ツアー」

開場と同時に長い行列ができたのが「鳥取刑務所見学ツアー」です。約100名の行列ができていたため、「午前の部は、200名を上限とさせていただきます」というアナウンスが流れていました。普段は立ち入ることができない施設だけに関心を持つ方の多さがうかがえます。

長蛇の列


鳥取刑務所は1978年に完成し、2006年に増築したそうです。古い棟と新しい棟が繋がる建物は天井の高さや採光などに時代の違いを感じられる箇所がありました。

なお、施設内では原則的に写真撮影が禁止。スマホやカメラは、スタッフから配布される透明のビニール袋に入れて持ち運ぶよう指示があります。ツアーでは、刑務官の案内の元、受刑者が作業する工場や浴場、運動場などを順番に見学します。

施設見学


刑務所内には、洗濯工場や作業工場があり、体育館や広い屋外グラウンドもあります。鳥取刑務所の場合は、「受刑者は1日に30分しか運動してはいけない」というルールがあり、その短い時間の中で、グラウンドを走ったりキャッチボールをしたりして身体を動かすそうです。体育館では、バドミントンや囲碁、将棋などが楽しめるようになっており、クリスマス会やスポーツ大会などのイベントも開催されるといいます。

刑務所内の作業工場では、刑務官の制服やバッグ等の縫製、鳥取特産のラッキョウの根切り加工、果物用ネットの製造などが行われています。刑務官の制服を製造できるのは全国でも限られた施設のみで、中国地方では鳥取刑務所が唯一とのこと。2024年度には約1万8千着を製作したそうです。ラッキョウの加工は、地域企業の依頼を受けて2025年から始まった新しい取り組みで、人手不足に悩む地元企業を支援する地域貢献にもなっています。

工場内には広めの机や肘掛け付きの椅子が並んでおり、精神的・身体的に配慮が必要な受刑者が作業しやすいように環境改善に力を入れている様子が見られました。

作業は等工制度によって評価され、作業報酬も支払われるそうです。刑務所全体の平均賃金は月額3000円程度。多い人では月2万円ほどになるとのこと。この報酬は出所後の生活資金や社会復帰の準備金として役立てられます。

また、受刑者の食事も展示されていました。1日の食費は1人あたり456円との説明がありました。栄養士が栄養バランスを考慮し、法令で定められた基準に基づいて提供されています。パンは6日に1回出されることが決まっており、人気のメニューのひとつだそうです。

グラウンドの側には、「二十世紀梨」の木が3本植えられています。これは俳優や歌手として活動し、1日名誉刑務所所長を務めたこともある杉良太郎さんが1996年に寄贈したものです。

このツアーを通じて、普段立ち入れない刑務所の実態を自分の目で確かめ、閉ざされた場所にも社会復帰を目指して懸命に生きる人たちがいることを実感しました。

手作りのバッグや備前焼が並ぶ刑務所作業製品の展示即売

倉敷帆布

今回の鳥取地区矯正展でも全国各地の刑事施設で製作した作業製品が展示販売されていました。丁寧な手仕事と堅実な品質で知られている製品を求めて、会場は開始早々から多くの来場者で賑わいました。
刑務所のブースには、厚手の綿織物を使用した「倉敷帆布」のバッグがずらりと並びます。丈夫で使いやすいトートバッグやランチバッグなど日常で使いやすそうです。

倉敷帆布のバッグ製作を担当する作業官はこう話します。

「鳥取刑務所の特産商品を作りたいと考え、倉敷帆布さんと提携しました。現在は5〜6名の受刑者が製作しています。1〜2週間ですべての工程を覚え、1人でバッグを作り上げられるようになる人もいます。高品質で価格も手頃なため、全国の矯正展で人気が高く、そのことに受刑者も喜びを感じています。販売による利益は、被害者団体への寄付等に充てられます」

他にも、鳥取県産ヒノキを使った木べらやまな板、財布、小銭入れ、木工製のタンスや食器、鉄製のバーベキューコンロなどが所狭しと並び、どれも価格以上の品質を感じさせます。

寿司下駄


鳥取刑務所ブースを訪れた来場者からは、「椅子がすごくおしゃれ!」「この木べら、使い勝手よさそう!」「バーベキューコンロ買って帰ろうかな」「まな板のサイズ感が絶妙!」といった声が飛び交い、販売スタッフも忙しそうに対応していました。

また、函館少年刑務所で製造される「マル獄シリーズ」も人気を集めており、来場者の目を惹いていました。

まる獄

神奈川県横須賀市の横須賀刑務支所で製造される「ブルースティック」も大人気。頑固な衣類の泥汚れ、襟袖の黄ばみ等の部分汚れに強い洗濯石鹸で、「オレンジオイル配合」や「液体タイプ」などの製品も並び、まとめ買いする来場者の姿も見られました。

ブルースティック

今回の矯正展には、松江・岡山・尾道・広島・山口・岩国の刑務所も出展しています。

松江刑務所では、自宅で手軽に本格的なコーヒー豆の焙煎ができる「手回しコーヒー焙煎器」を展示・販売。小冊子も製作されていて、初心者でも安心してコーヒー豆の焙煎を楽しめそうです。

手回しコーヒー焙煎器

鳥取刑務所の刑務官である三木氏は、「キャンプ等で生豆から焙煎したコーヒーを淹れると至福の時間を楽しめます」と話していました。

刑務所作業製品の鞄

岡山刑務所のブースには、岡山県備前市の日本六古窯のひとつとして有名な「備前焼」がズラリ。備前焼の刑務作業を担当している作業官は次のように語ります。

「岡山刑務所は10年以上を刑期とする受刑者が多く、20年以上も備前焼に向き合っている人もいます。本来の備前焼は『登り窯』で焼きますが、刑務所内では使用できないので電気窯を使います。窯の違いはあれど、土は備前焼と同じですのでかなり高い品質の作品ができていると思います。土に触ることは受刑者の心を落ち着かせる効果があり、精神面にもよい影響があるようです」

備前焼

午前中に完売!受刑者に人気のパンを販売

イベントの中でも特に人気を集めたのが、「刑務所の食事で実際に出されているパン」の販売です。開場直後から飛ぶように売れ、午前11時30分には完売。ぶどうやりんごのコッペパン、サンドイッチなど、素朴ながらも優しい甘みが特徴で、「受刑者にも人気が高いパン」として知られています。

コッペパン

協力企業や団体の物販・飲食コーナー

グルメコーナーには、焼きそば、牛串、たい焼きなどのキッチンカーが並び、香ばしい香りに誘われた来場者で大賑わい。JAや地元農家による野菜販売も人気で、鳥取産の甘柿「輝太郎(きたろう)」や特殊な“かめ”で炭を使ってじっくり焼き上げた鳥取県用瀬産の新品種「あまはづき」の焼き芋などが販売されていました。

りんご

物販コーナーでは、「更生保護女性会」や「少年友の会」によるバザーや協力企業の製品販売も行われました。また、「更生保護法人 鳥取県更生保護給産会」で作られた「“苔玉」”も出品されていました。

こけ玉

同法人は、犯罪や非行をした人々が社会で自立した生活を送れるよう支援する団体です。地域住民がその活動を直接知る機会にもなっています。

参照:更生保護法人 鳥取県更生保護給産会
https://kyusankai.or.jp/

地域の学校の作品展示とホゴちゃん

今回の矯正展では、地域との連携を深める試みとして、江山学園の児童・生徒による作品展示も行われました。江山学園の1年生から9年生までの絵画や書道作品が並び、親子で鑑賞する姿も見られました。

児童展示


また、会場入口では、更生保護のマスコットキャラクター「ホゴちゃん」がお出迎え。胸に「生きるマーク」を付け、立ち直ろうとする人をいつも温かく見守り、犯罪や非行のない明るい社会を願う心優しいホゴちゃん。刑務所の制服を試着した子ども達が一緒に写真を撮る様子も見られました。

参照:法務省『KIDS ROOM ホゴちゃんとサラちゃんのお部屋』
https://www.moj.go.jp/KIDS/topics_penguin/

地域住民へ伝えたいこと

鳥取刑務所の刑務官である三木氏は、矯正展の意義をこう語ります。

「受刑者たちは、日々の刑務作業を通じて社会とのつながりを感じています。今日、展示・販売されている作業製品は、全国の受刑者が一生懸命作った製品です。彼らが丹精込めて作った製品を地域の皆さんに見て、買っていただくことで、『努力すれば社会に役立てる』という実感を得てほしいと思っています。受刑者の中には、新しい製品のアイデアを提案する人もいます。出所後の彼らには、厳しい現実が待っているのが実態です。しかし、彼らには『努力すればこんなに素晴らしい製品を作ることができる』『自分が作った製品が売れた』という自信を持ってもらいたいし、社会の方にもその姿を見てほしい。彼らの社会復帰を見守って欲しいというのが、一番の想いです」

三木さん

鳥取刑務所の基本情報

鳥取刑務所入口

鳥取刑務所は、鳥取県鳥取市下味野にある刑務所です。

収容定員は651名で、約250名が収容されています(2025年10月時点)。収容対象は「刑期が10年未満で、犯罪傾向が進んでいる男子受刑者」です。

倉敷帆布を使用したバッグやランチトート等を製作する洋裁作業、小銭入れやベルト等の革工作作業、鳥取県産のヒノキを使用した木べら等の木工作業、鳥取の特産であるラッキョウの加工などを刑務作業として行い、受刑者の技能習得・社会復帰を目指しています。

所在地
〒680-1192 鳥取県鳥取市下味野719

交通手段
・JR山陰本線「鳥取駅」から車で約20分
・鳥取自動車道「鳥取IC」から車で約5分

鳥取刑務所
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00099.html
TEL 0857(53)4191
FAX    0857(37)4013

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メリイ潤フリーライター

投稿者プロフィール

岡山県在住。約16年間大手損害保険会社で営業・営業事務に携わった後、フリーライター。ビジネス系インタビュー記事、マネーコラム等を執筆。中学時代はソフトテニス部、大学時代はラクロス部に所属。2級FP技能士。

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