関西矯正展とは
「関西矯正展」は年に一度、大阪矯正管区および大阪刑務所主催により開催されるイベントで、今回で34回目を迎えます。
このイベントは、刑務所での作業によって生産された品質の高い製品を手頃な価格で販売する一方で、地域住民に矯正行政の取り組みを紹介し、理解を促進することを目的としています。
関西地方における矯正展としては最大規模を誇る「関西矯正展」は、さまざまな催し物により、開催するたびに大盛況となっている一大イベントです。
関西矯正展の目的
「関西矯正展」は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の一役を担っています。収容されている受刑者や、少年の改善更生・社会復帰のため、矯正行政が果たしている役割や日々の改善指導、教育活動などを紹介しています。出所者などを地域で受け入れていただくため、矯正行政に理解を深めてもらったり、出所者等の再犯防止につなげることを目的としています。
関西矯正展はどんな内容?
第34回関西矯正展は、大阪刑務所で開催されました。
<関西矯正展の内容>
- スペシャルゲスト(妹尾和夫さん)のトークショー
- ステージイベントゲスト(笑い飯さん)による漫才
- くまモンのステージゲスト登壇
- 刑務所作業製品の展示・即売
- 刑務作業の実演・体験コーナー
- 施設見学
- 親子刑務官写真撮影
- チャリティ(茶室・ネイル)
- 監獄弁当、プリズンカレー、パン販売(受刑者の給食レシピを再現)
- 矯正広報パネル、少年院広報コーナー
- 職員採用広報ブース
- ステージイベント
チアリーディング、ダンス、ヤギのショー、吹奏楽、クイズ・ゲーム、防犯寸劇、歌など。
多種多様なイベントや出展が揃い、大阪刑務所の広大な敷地を生かしたプログラムが組まれており、一日を通じて楽しむことができます。
では、第34回「関西矯正展」の詳細について紹介します。
2023年(令和5年)関西矯正展の様子
新型コロナウイルスの影響を受けて、4年ぶりに2日間にわたり開催された関西矯正展。大阪刑務所は各所から入場できるため、開場前から来場者が続々と刑務所敷地内に入ってきました。
2023年(令和5年度)関西矯正展の来場者数は、2日間でなんと30,000人を超えました。久しぶりの開催を心待ちにしていた多くの人々が来場しました。
NHK連続テレビ小説「ブギウギ」で銭湯の常連客である”熱々先生”を演じる妹尾和夫さんが、関西矯正展の開会宣言をしました。
妹尾さんの開会宣言と共に、地元の学生による開会のファンファーレが演奏され、来場者の大きな拍手と共に関西矯正展がスタート。
リーズナブルで品質が良い刑務所作業製品
大阪刑務所をはじめ全国の刑務所から刑務所作業製品が展示、販売されています。これらの製品は手頃な価格でありながら、高い品質を誇り、多くの来場者がその魅力に惹かれています。大阪刑務所では、特に唐木を使用した製品が有名で、その独自のデザインや職人技が注目を集めています。
函館少年刑務所の刑務所作業製品「マル獄シリーズ」も販売されていました。”獄”という字が目立つ印象的なデザインで人気を集めています。
刑務所作業製品のなかで際立つのは、民間企業のデザイナーとの協業により誕生した加古川刑務所製作のソファです。このソファはカジュアルな外観とやわらかな印象が特徴で、そのデザインは一線を画しています。
横須賀刑務支所で製造される『ブルースティック』は、衣服のシミ、黄ばみ、汚れを効果的に除去すると同時に、抜群の除菌効果を持つ洗濯用固形石けんとして知られています。人気の刑務所作業製品なため、開場前から行列ができ、あっという間に完売しました。
刑務所作業製品の中には、剣道の防具やキャンプ道具などもあります。網走刑務所と北海道日本ハムファイターズとのコラボ製品も展示、販売されていました。刑務所で製作されたさまざまな製品を見るだけでも楽しめます。また、購入して利用することでその品質の高さを実感できます。
クレジットカード、電子マネー、コード決済に対応しているレジもありました。時代の流れに合わせて決済方法を幅広く持つことで、さまざまな年齢層の来場者を受け入れられるようになっています。
限定の刑務所メシ「監獄弁当」「プリズンカレー」「コッペパン」
刑務所内で出されている食事のレシピを元につくられた「監獄弁当」が数量限定で販売されていました。監獄弁当は2日間で200個準備され、販売開始と共に列ができて、両日ともに午前中には完売するほどの注目商品でした。
青のりが入った衣で揚げられた唐揚げ、芋を甘く煮たもの、野菜、漬物、白米と麦飯を7:3で混ぜたご飯が入っています。実際に食べてみましたが、いずれも美味しく、十分お腹が満たされるお弁当でした。
刑務所内で出されているカレーのレシピを元にして作られた「プリズンカレー」という名のカレーが販売されていました。滅多に食べることの出来ないものなので、プリズンカレーのブースも常に人で賑わっていました。
刑務所内で出されているコッペパンの販売も行われていました。コッペパンが2個入りで100円というリーズナブルさも相まって、販売前から行列を作るほどの人気でした。2,000セット準備されていたコッペパンも両日完売です。
地域の方々や飲食店による飲食販売ブース
飲食販売ブース付近は美味しそうな香りが漂っていて、来場者の食欲をそそっていました。お祭りの屋台のようにずらっとブースが並び、お腹を空かした来場者たちはどこで何を食べようか迷いながらも、ブースを回って楽しんでいる姿が見られました。
揚げ物などのしょっぱい食べ物もあれば、クッキーなどのスイーツもあります。
堺ちん電パンが販売されていたり、お茶菓子を提供するブースもあり、来場者の注目を集めていました。
更生保護女性会によるバザーや野菜を販売しているブースには、女性の方々が行列をつくっていました。
キッチンカーも勢揃い
大阪刑務所の敷地内の一部のエリアは、色鮮やかなキッチンカーが並び、さまざまな料理を販売しています。
家族や友人同士でそれぞれのキッチンカーで食事を購入して、分けながら食事を楽しむ光景も多く見られました。飲食ブースやキッチンカーを巡ることも関西矯正展の楽しみ方のひとつです。
「笑い飯」の漫才や地域の方々で盛り上がるステージイベント
関西矯正展の2日目、ステージイベントの盛り上がりを見せたのは『笑い飯』さんの漫才です。開始前から徐々に人が集まり、開始直前にはステージを囲むように人だかりになっていました。『笑い飯』さんを目的に、関西矯正展へ来場された方も多くいらっしゃいました。
熊本県のマスコットキャラクター『くまモン』もステージに登場。お子さん連れの家族を中心に人気を集めており、撮影タイムをたっぷり設けるサービス精神満載のくまモンでした。
地元の学生や団体によるダンス、合唱、フラダンス、吹奏楽などが披露されました。ステージに出演する友人を見に、関西矯正展へ初めて来場した方もいて、いろんなことが来場のきっかけになります。
紙芝居やヤギのショーは子供の人気を集めており、「子供が楽しめるイベントやブースがあることも嬉しい」というお子さん連れの家族の声もありました。
関西矯正展ではメインステージとサブステージの2箇所あり、大阪刑務所の広さを活かして来場者の興味を引いていました。
歌手として活躍する石崎旭さんも、関西矯正展のステージを盛り上げていました。更生活動に意欲的であるきっかけや想いを伺いました。
「元々、祖母が更生保護女性会で活動していたこともあり、社会みんなで協力して更生に尽力できたらという想いがあります。更生活動についてはまだ浸透が低く、犯罪の低年齢化が進んでいるので、高校生や大学生にもぜひ知って欲しい」
刑務作業などの実演・体験コーナー
刑務作業と呼ばれる受刑者が刑務所内で行っている作業を擬似体験できるブースもあります。上記の写真は、組紐体験と呼ばれるもので糸を順番に動かして紐を編んでいきます。
堺式手織緞通(さかいしきておりだんつう)と呼ばれる伝統工芸です。非常に高い技術の必要な伝統工芸で、今となっては職人さんも少なくなっている中、大阪刑務所の職業訓練に取り入れられています。製品によっては1年ほどかかるようなものもあります。
機能向上作業体験では、ブロック折り紙を用いてクリスマスリースをつくる作業を体験します。手先を動かすことによって認知身体機能の向上を目的とした作業で、例えば高齢者など工場での一般的な刑務作業が困難な受刑者が主に機能向上作業を行います。
性格検査体験コーナーでは、20個の質問に対して「はい」「いいえ」「どちらでもない」の回答をすることで自身の性格の特徴を知ることができます。検査結果を見て、友人同士や家族で盛り上がっていました。実際の受刑者はもっと多くの質問や刑務官との面談を通じて性格検査を行います。
親子で楽しめる体験ブース
関西矯正展では大阪刑務所の広大な土地を利用して、親子でも楽しめる多くの体験ブースがありました。
笠松刑務所の七宝焼き体験では、無地の金属素地に色を塗ってオリジナルの七宝焼きをつくることができ、できたものは記念に持ち帰ることができます。
子供が運転できるショベルカーでボールすくいや大きな黒ひげ危機一発、千本引き、ネイル、塗り絵のどのブースも子供に人気でした。
ちびっこ刑務官と称して子供サイズの刑務官の服を着て記念撮影する家族の姿もありました。近くには子供が大好きなパトカーやバイク、消防車などたくさんの乗り物が展示されており、乗り物の前で記念撮影したり、実際に乗ってみて笑顔溢れる子供の姿が印象的でした。
似顔絵師さんがいらっしゃっていて似顔絵を書いてもらって記念に持ち帰る姿も見受けられました。
セレッソ大阪のブースでは、的を狙うサッカーゲームが体験でき、サッカー自慢な子供たちが集まって盛り上がっていました。
和菓子作り体験ができるブースもあり、親子や友人同士で体験をする方が多く、なかなかできない和菓子作りに苦戦しながらも楽しんでいました。
熱々先生を演じる妹尾和夫さんのトークショー
関西矯正展の開会宣言を務めた妹尾和夫さんのトークショーは、ステージを囲むようにたくさんの人で埋め尽くされました。妹尾さんは普段ラジオなどで”人の話を聞く”仕事がほとんどのため、トークショーは久しぶりとのこと。トークショーでは関西矯正展の印象や「ブギウギ」の裏話を中心に進行しました。
制服を着た感想を聞かれた妹尾さんは「日頃はラフな格好が多いんやけど、(関西矯正展ということで)制服を着てシャキッと身が引き締まってるわ。大阪刑務所長に刑務所内を案内してもらったんやけど、空気感が違っていてただ歩いていても背筋がピシーッと伸びて早足になる感じですねん。最近やってるドラマ『教場』のキムタクみたいになったつもりで歩いたわ」と、ステージ上を背筋を伸ばして歩きながら会場に笑いが起きました。
関西矯正展に対する印象や感想として「全国各地から刑務所の方がいらっしゃって製品をたくさん持ってこられていて、関西矯正展が4年ぶりの開催も相まって地域の皆さんがとても楽しみにされている催し事だということにびっくりした。地域住民やボランティアの方の協力もあって開催されていることをもっと知っていただけるように、番組とかで伝えていきますわ」というメッセージを話されました。
「みなさん、体冷やさんと熱々にね!よろしく!」と妹尾さんが来場客への気遣いと笑いを添えてトークショーは終了しました。
トークショー後、大阪刑務所長から説明を真剣に聞きながら、刑務所作業製品をじっくり見る妹尾さん。関西矯正展に出されている一つひとつの刑務所作業製品の出来に驚いていました。特に、ソファが印象深かったようで「ソファに座らせてもらいまして、切り替えようと思うくらい良い出来だった」とトークショーでも話されていました。
トークショーを終えて改めて朝ドラや関西矯正展などの感想について話を伺いました。
NHKの朝ドラ「ブギウギ」をたくさんの方が見てくれていることを感じる機会が多いエピソードを話してくれました。
「区役所の窓口に行った際に『熱々、、ですよね?』と聞かれてつい私も『はい、熱々です』と答えたら、そのあと区役所の人たちがみな見に来られたんです。朝ドラが皆さんの生活サイクルに入っているんだと感じました。街中でも『熱々、、ですよね?』と声をかけていただくことが増えました」
「共演者もチームワークも素晴らしくて、70歳を過ぎて幸せなドラマの現場に入らせていただいた」と、朝ドラの良さも改めて妹尾さんの言葉として語られました。
関西矯正展の感想として「今まで外から刑務所を見ることはあったけど、今回刑務所内を見せていただき、身が引き締まる思いです。こういう場所を支えてくれている方がいるから僕らは安心して暮らしていけたり、地域の方々と交流を持って関西矯正展を開いていることがすごいと感じました」
そして、妹尾さんの関西矯正展を通じての意気込みは「地元の方の理解を得ながら刑務所はやっていけるでしょうから、関西矯正展を34回も続けられていることを1人でも多くの方に知ってもらうことが自分の役目だと感じた」とのことでした。
「被害に遭われたご家族もいらっしゃる。魂を刑務所で綺麗にしてもらいながら、ちゃんと新しい気持ちで生きていってくださいよ」と受刑者への想いも語っていただきました。
大阪刑務所の矯正に関する取り組みについて
大阪刑務所をはじめとする矯正施設では、再犯防止のための推進計画が進められています。これは、出所者が再び刑務所に戻らないよう支援する取り組みです。再犯の主な原因は「住むところがない」ことと「就職先がない」ことの2つで、これらは一方だけでなく、両方が確保される必要があります。出所者の社会復帰を受け入れるためには、社会全体の理解が必要です。
大阪刑務所では矯正広報活動の一環として、広報パネルを展示しています。これらのパネルを通じて、来場者は刑務所内での活動について知ることができます。
このような背景から、矯正広報に対する理解を深め、支援を促すために矯正展が開催されています。
刑務所に入った人はどのような1日を過ごすのか気になる人は多いのではないでしょうか。展示の中に「受刑者の1日」があり、足を止めて見る方も多い広報パネルでした。朝6時40分に起床して1日がはじまり、刑務作業や食事、余暇時間などを過ごして21時に就寝という1日のようです。
実の妹を殺された兄(日本財団職親プロジェクト関西代表・草刈健太郎氏)が、犯罪加害者の更生を支援する活動をしている『おまえの親になったるで』のドキュメンタリー映像を流すブースがありました。被害者の気持ち、出所した人の実態、そして出所者と向き合い、更生支援をする草刈健太郎氏の姿が描かれています。もしかしたら矯正展に触れることがなければ知ることができなかったかもしれない映像作品、みなさんも一度ご覧になってはいかがでしょうか。
医療刑務所のデジタル施設ツアーと称して、施設内見学の様子を動画で見ることができるコーナーがありました。滅多に見ることのできない刑務所内を来場者はじっくり見ることができ、刑務所としても施設でどのようなことを行っているかを知ってもらう機会となりました。
大阪矯正展を通じて社会の皆さんへ伝えたいこと
関西矯正展の目的は、冒頭にも記載した通り、収容されている受刑者や、少年の改善更生・社会復帰のため、矯正行政が果たしている役割や日々の改善指導、教育活動などを紹介することです。出所者などを地域で受け入れていたただくため、矯正行政に理解を深めてもらったり、出所者等の再犯防止に繋げることです。
しかし、日常で刑務所に関する話題が挙がることはなく、興味を持たれないことがほとんど。社会の皆さんに理解してもらうためにはまず知ってもらうことから。文化祭やお祭りのような雰囲気で楽しそうというところからでも刑務所に触れていただき、矯正行政の理解をしてもらえればということが矯正施設の想いです。
大阪刑務所について
大阪刑務所は、法務省矯正局の大阪矯正管区に属する刑務所です。府中刑務所に次ぐ収容能力があり、西日本最大規模の刑務所で、大阪管内の基幹施設の役割を果たしています。
大阪刑務所の下部機関には、堺拘置支所、岸和田拘置支所、丸の内拘置支所、田辺拘置支所、新宮拘置支所があります。また、大阪医療刑務所が隣接されています。
大阪刑務所の基本情報
所在地
〒590-0014 大阪府堺市堺区田出井町6-1
交通手段
●JR阪和線「堺市駅」下車 徒歩5分
●南海高野線「堺東」駅下車 徒歩10分
TEL 072(238)8261
FAX 072(238)8289
木工や印刷、洋裁などの刑務作業を行っており、刑務所作業製品の展示場も併設されています。
〇営業時間
10時~17時(土日祝日を除く)
〇展示・販売製品
大阪刑務所で製作された木工製品、洋裁製品、印刷製品、金属製品、窯業製品をはじめ、全国の刑務所から集められた様々な刑務所作業製品が展示されています。
大阪刑務所について
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00091.html