自動車大手と半導体大手が情報基盤を構築 地政学リスクに備え安定調達へ

自動車大手と半導体大手が情報基盤を構築 地政学リスクに備え安定調達へ

トヨタ自動車やホンダなど日本の自動車メーカーと国内外の半導体メーカーが連携し、車載半導体の情報を共有する新たなシステムを2026年4月をメドに構築します。日本自動車工業会(自工会)と日本自動車部品工業会が主導するこの取り組みは、経済的威圧や自然災害など不測の事態に備えたサプライチェーンの強靱化を目指すものです。運営は一般社団法人「自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター」が担い、半導体の生産拠点や仕様などの情報を可視化することで、代替調達を迅速に行える体制を整えます。

参加を予定する半導体メーカーは、ルネサスエレクトロニクスやローム、ドイツのインフィニオンテクノロジーズなど国内外の約20社。中国メーカーは参加していませんが、日本の自動車メーカーが調達する半導体の約80〜90%を網羅できる見通しです。半導体メーカーは半導体の仕様や生産開始時期、産地などの情報をシステムに登録。自動車メーカーや部品メーカーは検索機能を通じて、自社で使用している半導体の情報を把握できるようになります。

システムはブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用し、半導体情報が他の自動車メーカーに漏れないように対策を講じるのが特徴です。これにより、供給の安定性が低い半導体を特定しやすくなり、サプライチェーン全体のリスク管理が可能になります。自動車産業は完成車メーカーを頂点に1次、2次サプライヤーと連なる巨大なピラミッド構造を形成しており、全体像の把握が困難でしたが、このシステムによって調達リスクの可視化が進む見込みです。

この動きの背景には、近年の半導体不足による深刻な影響があります。2022年ごろの新型コロナウイルス禍では、世界的な半導体不足で自動車の減産が相次ぎました。2025年には中国資本の半導体メーカーであるネクスペリアの出荷停止により、ホンダや日産自動車が減産を余儀なくされました。ホンダは半導体不足により、2026年3月期の営業利益ベースで1500億円の下押し要因になると試算しています。このような事態を受け、業界全体で供給網の見える化を急ぐ必要に迫られています。

今回の仕組みにより、地震や経済的威圧などで出荷できない事態が起きた際、生産地や仕様の情報を事前に把握しておくことで、半導体メーカーと連携して迅速な代替調達ができるようになります。参画する半導体メーカーは今後も増やす方針で、要望があれば海外の自動車メーカーもシステムを活用できる可能性があります。

車載半導体市場拡大に対応、競争力維持の鍵に

自動車業界の競争軸は自動運転や人工知能(AI)へ移行し、車載半導体の重要性は今後さらに増していきます。電子情報技術産業協会(JEITA)が2024年に公表した予測によると、世界の車載半導体市場規模は2035年に約1594億ドル(約25兆円)と、2025年(約861億ドル)から8割超伸びる見通しです。この成長の背景には、ソフトウェアで車の性能を左右する「SDV(Software Defined Vehicle)」の普及があり、2035年には世界の新車生産台数9790万台のうち66.7%に当たる6530万台がSDVになると予測されています。

このような市場拡大を見据え、半導体の安定調達は日本の自動車産業の競争力を左右する重要な課題となっています。自工会・部工会は、今後も半導体の安定調達に向けたサプライチェーン全体での取り組みを推進していく方針です。基幹部品の調達リスクを低減できれば、競争力の向上につながると期待されています。

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