
東京都内や大阪市など都市部で「偽基地局(IMSIキャッチャー)」と呼ばれる不正な通信機器の存在が確認され、警戒が高まっています。この機器は携帯電話の基地局を装って違法な電波を発信し、ユーザーの回線を一時的に乗っ取る手口に使用されています。
偽基地局は巧妙な手法で通信を妨害するのが特徴です。まず周辺のモバイル回線の電波をジャミング(妨害電波)で遮断し、スマートフォンを一時的に圏外状態にします。その後、ユーザーの端末が再接続を試みる際に、日本では使用されていないGSM(2G)通信を発信して接続させる仕組みです。
GSMはセキュリティが脆弱で暗号化を簡単に破れるため、「中間者攻撃」と呼ばれる通信傍受に悪用されやすい特徴があります。
特に注目すべきは、これらの偽基地局が中国の大手通信キャリア(China Mobile、China Telecom、China Unicom)のネットワークIDを偽装していることです。
送信されるSMSは簡体字中国語で「海外でのカード決済機能が停止されたためURLにアクセスするように」と促すフィッシング詐欺の内容です。訪日外国人観光客、特に中国からのインバウンド客をターゲットにしている可能性が指摘されています。
「偽基地局」問題に対する各キャリアと日本政府の対応
NTTドコモやSoftBank、KDDI、楽天モバイルといった各キャリアはこの問題を認識しており、対応を進めています。
NTTドコモは「妨害電波の被害情報は認識しており、社内外で連携して対応を進めている」とコメント。SoftBankは「疑わしい事象は把握しており、現在関係各所と連携して情報収集・調査を行い、対策に向けた取り組みを進めている」と説明しています。
KDDIは「状況は承知している。当社への影響は確認できていないが、今後も状況を注視していく」としており、楽天モバイルは「発生については把握しているが、現時点ではサービスへの具体的な影響などは確認されていない」と発言しています。
また、村上誠一郎総務大臣は4月15日の会見で初めて公式見解を示しました。都市部での携帯通信妨害が実際に起きている事実を認め、「関係機関と連携して対応している」と表明しました。
この発言は、SNSで広がっていた偽基地局に関する情報が数万件の「いいね」を集め、社会問題化したことを受けてのものです。総務相は個別投稿の真偽については言及を避けつつも、混信事案の発生自体は政府として把握していることを明らかにしました。
今回の事案は国際的にも注目される問題であり、特に訪日外国人を標的とした詐欺の可能性も指摘されています。政府は情報収集を継続しており、個人では対応困難な高度な混信対策についても今後発表される可能性があります。