【医師の論文解説】小学生のスマホ依存症が親子関係に及ぼす影響

【医師の論文解説】 小学生の スマホ依存症 親子関係に及ぼす影響」ライター:秋谷進(たちばな台クリニック小児科)

お子さんのスマートフォン(スマホ)の使いすぎ、気になっていませんか? 
「少し注意すると、すぐに親子ゲンカになってしまう…」とお悩みの方もいるかもしれません。

実は「スマホ依存=悪」と思いがちですが、私たちの想像以上に親子関係に複雑な影響を与えていることが判明したのです。
今回は、小学生のスマホ依存と親子関係に関する最新の研究をご紹介します。

論文

Ze Geng,Ran Liu,et al.The impact of smartphone addiction and negative emotions on parent-child relationships among elementary school students.Front Psychiatry.2025 Jun 2:16:1582741.

中華人民共和国北京市、中央民族大学のZe GengらがFrontiers in psychiatryに2025年6月に報告した論文です。

【結論】スマホ依存のタイプによって、親子関係への影響は全く異なる

今回、中国の1,144人の小学生とその親を対象に行った調査から、「スマホ依存の4つのタイプ(制御不能・離脱症状・現実逃避・非効率)によって、子どもの感情や親子関係への影響が全く異なってくる」こおがわかりました。

つまり、「スマホの使いすぎ」と一括りにはできず、どのように依存しているかで親子関係が良くなることさえある、という少し意外な結果が示されたのです。

【研究背景】小学生のスマホ依存が親子関係に影響を及ぼすのか?

スマホの急速な普及は、子どもたちの生活にも大きな影響を与えています。

特に、自己制御能力がまだ発達途中の小学生にとって、スマホ依存はうつや不安、そして親子関係の悪化といった様々な問題を引き起こす可能性が懸念されています。

しかし、スマホ依存が具体的にどのように親子関係に影響を及ぼすのかは、あまり解明されていません。

①研究の目的

そこで本研究では、スマホ依存を以下の4つのタイプに分けて分析することにしました。 

  •  制御不能:自分で時間をコントロールできず、使いすぎてしまう。
  •  離脱症状:スマホが使えないとイライラしたり、落ち着かなくなったりする。
  •  現実逃避:嫌なことや不安から逃れるためにスマホを使う。
  •  非効率:スマホのせいで勉強や日常生活に支障が出る。

これらの4つのタイプが、子どもの「ネガティブな感情」や「親子関係(親密さ・対立・依存)」にどのような影響を与えるのかを明らかにすることが、主な目的です。 

②研究方法

この調査は、中国の公立小学校に通う6歳から15歳までの生徒1,144人を対象に行われました。

保護者が自分の子どもの普段の様子を観察し、「スマホ依存の程度」「感情の状態」「親子関係の質」に関する3つのアンケートに回答する形で行われています。

スマホ依存と親子関係への影響

分析の結果、非常に興味深い関係性が見えてきました。

①スマホと子どもの心に意外な関係が

意外にもスマホの使い方により、子どもの心に違った影響が出ることが分かりました。

例えば、「離脱症状」(使えないとイライラ)や「非効率」(勉強に支障が出る)の傾向が強い子どもは、やはりネガティブな感情が強まることが分かります。

一方で、「制御不能」(使いすぎ)や「現実逃避」(嫌なことを忘れるため)の傾向が強い子どもほど、逆にネガティブな感情が和らぐという結果が出たのです。

これは、子どもがスマホを一時的なストレス解消の道具として使っているからだと考えられています。

②スマホの使い方で親子の関係にも影響が

スマホ依存のタイプで親子関係にも違った影響を与えることがわかっています。各タイプと与える親子関係は次の通りです。

  • 制御不能:使いすぎている子どもほど、なんと親子の親密さが高いという結果に。
  • 離脱症状:使えないとイライラする子どもほど、親子間の対立と子どもからの依存度が高まっていました。
  • 現実逃避:スマホで現実逃避する子どもほど、親子間の対立と依存度が低いという結果でした。
  •  非効率:スマホのせいで生活に支障が出ている子どもは、親密さが低く、対立と依存度が高いという、最も懸念されるパターンを示しました。

また、どのタイプでも、子どものネガティブな感情や感情コントロールの難しさが、親子関係を悪化させる(親密さを下げ、対立と依存を高める)最大の要因であったことが分かっています。

*注意点
今回の調査は中国の1つの小学校で行われたものであり、他の地域や文化でも同じ結果になるとは限りません。

 また、親が回答しているため、親の主観や理想が含まれている可能性も考えられます。

小学生のスマホ依存をどう考えるのか?

本研究から、「スマホ依存=悪」という単純な見方では、問題の本質を見誤ってしまうかもしれない、ことが示唆されています。

例えば、「制御不能(使いすぎ)」が一時的に子どもの心を軽くし、結果として親子の親密さを高めているように見えるのは、面白い点です。

しかし、研究者は、これは子どもがスマホを感情の調整ツールとして使っているに過ぎず、長期的に見ればより深刻な問題につながる危険性をはらんでいる、と警鐘を鳴らしています。

また、スマホが使えないことへの「離脱症状」が親子の対立を最も悪化させるという結果は、力ずくでスマホを取り上げるような単純な禁止戦略が、いかに危険かを物語っています。それは問題の解決どころか、かえって親子関係をこじらせてしまう可能性が高いのです。

親が向き合うべきは、スマホの使用時間という「行動」だけではなく、背景にある「なぜ子どもはスマホに頼らなければならないのか」という「心の内」です。

ストレスや不安から逃れるためにスマホを使っているのかもしれない。そんな子どもの気持ちに寄り添い、一緒に使い方を考えていく。
そんな姿勢こそが、子どもをスマホ依存から守り、健全な親子関係を築くための第一歩となりそうですね。

秋谷進医師

投稿者プロフィール

小児科医・児童精神科医・救命救急士
たちばな台クリニック小児科勤務

1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。
金沢医科大学研修医、国立小児病院小児神経科、獨協医科大学越谷病院小児科、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科、東京西徳洲会病院小児医療センターを経て現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。

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