子どもの紫外線対策について 年々厳しくなる日差しの悪影響

「子どもの紫外線対策について 年々厳しくなる日差しの悪影響」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

年々日差しが強くなっていると感じるのは気のせいではありません!

もともと日本の夏は、日差しが強く蒸し暑いですが、最近さらに日差しが強くなっていると思いませんか?
実は、これは気のせいではありません。

今回は、年々強くなっている日差しによって、子どもが受ける紫外線の悪影響とその対策について解説していきます。

年々日差しが強くなっていると感じる原因

まずは、以下のグラフを見てください。

こちらは、気象庁で発表された2005年7月における東京での日最大UVインデックス(解析値)の月間推移グラフを見たものです。まばらに日差しが非常に強いところもありますが、ところどころといった感じですよね。

では、次のグラフを見てください。

これは、2024年7月の東京での日最大UVインデックス(解析値)のデータですが、非常に強い日差しが7月のほとんどを占めているのがわかりますよね。ほとんど真っ赤なのが衝撃的です。

今度は、紫外線に関するグラフを見てください。

これは、気象庁で発表されているつくばの地表に到達する紫外線量を観測して、年ごとにまとめたデータです。1990年の観測開始以降、ずっと増加しつづけており、 増加率は10年あたり+4.6%(33.4 kJ/m2)となっています。

ここまで見れば一目瞭然でしょう。
繰り返しますが、最近、日差しが強いのは「気のせい」ではないのです。

よく日差しが強い原因として「オゾン層が破壊されているから」と言われますが、気象庁の発表によると「つくばのオゾン全量は、1990年代から2000年代前半にかけて緩やかに増加したあと、近年は有意な長期変化傾向はみられません。」と記載されています。
つまり、オゾン層の破壊という訳でもないようで、紫外線を散乱・吸収するエーロゾル(大気中の微粒子)等の影響が原因と考えられています。

紫外線が与える子どもの肌への強い悪影響

「紫外線が肌によくない」というのは、みなさんもご存じの通りだと思います。
紫外線は、皮膚のDNAに直接ダメージを与えます。皮膚の早期老化(光老化)を引き起こすと言われていて、しわや色素沈着、肌の弾力性が低下しやすくなることも分かっています。もちろん、メラノーマや基底細胞がん、扁平上皮がんなどのリスクが増加します。

しかし、子育てする親にとって、覚えておいてほしい大切なことがもうひとつあります。

それは、「同じ紫外線を浴びても、子どもの肌は大人の肌より強い影響を受けやすい」ということです。

例えば、ある論文によると、紫外線が多い「オーストラリア」に生後10年以内に移住した移民は、オーストラリアで生まれた場合と同じくらい皮膚がんを発症するリスクがあるといわれ、その一方で、年をとってからオーストラリアに移住すると、皮膚がんのリスクは5分の1まで低下するというデータがあります。

つまり、10歳までに紫外線を浴びると、皮膚がんになるリスクが、それ以降に紫外線を浴びるよりもずっと強くなるということです。
それくらい子どもの肌は繊細なんですね。

また、他の論文によると、「60歳までの総紫外線の約40〜50%が20歳までに浴びている」ともいわれています。もちろん、子どもは活動的です。外で遊ぶことも多いですから、当然日差しも浴びやすくなります。

最も日差しを浴びやすい年代が、紫外線の悪影響を受けやすいというのは、なんとも難しい話ですね。

しかし、日差しが厳しくなっているのは、気のせいではなく、事実です。
環境には適応しないといけません。だからこそ、私たち親は、もっと子どもの日差しに対して、真摯に対応しなければならないのではないでしょうか。

参照:
Childhood exposure to ultraviolet radiation and harmful skin effects: epidemiological evidence.Prog Biophys Mol Biol. 2011 Dec;107(3):349-55. doi:10.1016/j.pbiomolbio.2011.08.010. Epub 2011 Sep 3
UV and Children’s skin. Progress in Biophysics and Molecular Biology
Volume 107, Issue 3, December 2011, Pages 386-388

できることから始めよう。子どもの「紫外線対策」

日差しが、子どもの肌に悪影響を与えやすいことは、分かっていただけたと思います。
まずは、子どもの肌を守るために以下のことから始めてみましょう。

1.日差しを避ける時間帯を選ぶ

子どもを室内で遊ばせっぱなしも、心身の健康に悪いので、せめて日差しが強い時間帯だけは避けるようにしましょう。具体的には「午前10時〜午後4時の間」は避けた方がいいですね。

当然ですが、紫外線の強度は、太陽が空にある位置によって大きく影響されます。太陽が最も高い位置にある正午前後では、地球の大気を通過する距離が短いため、紫外線がほぼ直線的に地表に到達しやすく、強度が最大になります。したがって、午前10時から午後4時の間は、最も多くの紫外線にさらされる時間帯になるのです。

まずは日差しが強い時間帯を意識することが大切です。

2.日陰を活用する

もちろん、そうはいっても、日差しが強い時間帯に外に出なければならないこともあるでしょう。
そのときは、日陰を活用しましょう。

日陰は、太陽からの直接的な紫外線を避ける最も簡単で効果的な手段です。
単純に日陰に入ることで、紫外線曝露量を大幅に減らせますが、屋外の遊び場で日陰になっている部分は案外少ないものです。
保育園の日陰状況を調べた論文によると、平均して、屋外エリア全体の52%と、子どもの屋外遊び場の65%が日陰で覆われていたものの、場所によって大きく差があったといわれています。

したがって、外で遊ぶときに日差しが強かったら、日陰で遊ぶように、普段から親が子どもを教育する必要がありますね。

参照:Shedding Light on the Shade: How Nurseries Protect Their Children from Ultraviolet Radiation. Int J Environ Res Public Health. 2018 Aug 21;15(9):1793. doi: 10.3390/ijerph15091793

3.適切な衣服と帽子を選ぶ

紫外線から子どもの肌を守るためには、適切な衣服と帽子を選ぶことが大切です。

例えば、(夏は暑いですが)長袖シャツや長ズボンを着用することで、肌に直接紫外線が当たる面積を減らすことができますし、帽子は顔や首、耳を保護するために重要です。
特に、広いつばのある帽子を選ぶことで、顔全体を覆い、紫外線への影響をかなり抑えることができます。

水遊びやビーチでは、速乾性のあるラッシュガードや長袖のスイムシャツもいいでしょう。

4.日焼け止めをちゃんと使う

そして、子どもの日焼け対策で欠かせないのが、日焼け止めの使用です。

日焼け止めには、SPF(Sun Protection Factor)とPA(Protection Grade of UVA)という2つの重要な指標があります。
SPFはUVBに対する防御力を示し、数値が高いほど紫外線を防ぐ力が強くなり、一般的には、SPF30以上のものが推奨されます。

一方、PAはUVAに対する防御力を示し、「+」の数が多いほど効果が高いことを意味します。子供用の日焼け止めでは、PA+++以上の製品が使用するといいでしょう。

日焼け止めは、外出や屋外活動の少なくとも15分前に塗布することが大切です。
これは、日焼け止めの成分が皮膚にしっかりと吸収され、効果を発揮するまでに時間がかかるためです。

また、日焼け止めの効果は、時間とともに低下するため、2時間ごとに塗り直すようにしましょう。水遊びや汗をかいた後は、日焼け止めが流れ落ちたり、効果が薄れたりするため、必ず再度塗り直す必要があります。ウォータープルーフ(日焼け止めが水に強いタイプ)であっても、長時間の水遊び後やタオルで体を拭いた後は、塗り直すことが大切です。

子どもにも紫外線対策の大切さを教える

子どもの日差し対策では、注意しなければならないことがたくさんあります。しかも、子ども自身が気をつけなければならないことも多いです。

したがって、普段から親が子どもに、日差しの危険性と対策について、しっかりと話し合っておく必要があるでしょう。

      秋谷進医師

      投稿者プロフィール

      東京西徳洲会病院小児医療センター

      1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。

      金沢医科大学研修医、2001年、国立小児病院小児神経科、2004年6月、獨協医科大学越谷病院小児科、2016年、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職。
      専門は小児神経学、児童精神科学。

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