英豪華客船「タイタニック号」の残骸見学ツアーに向かっていた観光用潜水艦が消息を絶った事件が発生しました。残骸見学中に突如として母船と連絡が取れなくなり、搭乗者5人の命運が注目されています。
米沿岸警備隊によると、潜水艇「タイタン」は18日にタイタニック号の残骸に向けて潜水を開始し、その約1時間45分後に母船と連絡が取れなくなりました。緊急用に積み込まれている酸素は、一人あたり96時間分あるとのことです。
英キール大学のジェイミー・プリングル准教授(法地球科学)は、海洋では海水の層が複数に分かれているほか、海底の起伏は地上よりも非常に激しいため、捜索活動について「非常に厄介」と状況を説明しています。
また、アデレード大学のエリック・フジル准教授によれば、水中通信は地上と比べて難易度が高く、母船と潜水艇がワイヤーでつながれていないため、電磁波の伝播が水によって急速に遮断されるとのこと。
このため、レーダーやGPS、スポットライト、レーザー光線などでは数メートル先までしか届かず、音波を利用したソナーが捜索手段の1つとなります。しかし、深海での小さな潜水艇の位置特定は特殊技術を必要とし、捜索や救助には膨大な時間がかかる可能性があると指摘されています。
タイタンの救助は困難|「選択肢は非常に限られる」
観光用潜水艇「タイタン」の捜索と救助が困難であることが、専門家から指摘されています。英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのアリステア・グレイグ教授は、「タイタンが海底まで沈んでいて、自力で浮上できない場合、選択肢は非常に限られる」と説明しています。
また、タイタンは大陸棚を越えて深い海域に到達している可能性があり、「そこまで深く潜れる船はほとんどない」とアリステア・グレイグ教授は警鐘を鳴らしています。さらに、海軍の潜水艦救難艇ですら「タイタニック号の近くの深さまで潜ることはまず不可能」との見解を示し、観光用潜水艇のハッチに取り付けられるかについては「非常に疑問」と語りました。
アデレード大学のエリック・フジル准教授は「残された時間は少ない」と言い、深海ダイバーが直面する環境の過酷さを指摘。そして、深海ダイバーなら「こうした環境がどれほど過酷か知っている」はず、とも述べました。
タイタンの運営は、ワシントン州エバレットのツアー会社「OceanGate Expeditions」が行っており、搭乗者のなかには英国の実業家ハミッシュ・ハーディング氏も含まれるとのことです。今後の捜索と救助活動の進展に期待が寄せられます。