医療技術の発達などにより、昔に比べて平均寿命が伸びています。「人生100年時代」とまで言われ、それに伴い「高齢者になっても仕事を継続したい」という方が増加傾向にあります。
しかし、会社で働く場合は「定年」という制度があるため、どんなに就労意欲が高くても、定年年齢に達したら退職せざるを得ません。この定年制度、日本と海外で内容が一部違うのはご存知でしょうか?
本記事では、日本と海外の定年年齢や実引退年齢を比較していきます。まずは日本の定年制度から見ていきましょう。
日本の定年年齢は概ね60歳
厚生労働省が発表した2022年の「就労条件総合調査」では、定年制を定めている日本企業は94.4%と、高い割合を記録しています。また、そのうち定年制の定め方を「一律に定めている」の割合が96.9%、「職種別に定めている」の割合は2.1%でした。
一律定年制を定めている企業のうち、「65歳以上」を定年年齢としている企業の割合は24.5%でした。この割合は年々上昇しており、2005年以降の調査年においては過去最高です。
さらに近年の傾向として、定年年齢の引き上げや定年制の廃止が公的に推奨されており、このことは2021年に改定された「高年齢者雇用安定法」で明記されています。
もちろん、定年年齢の引き上げを義務付けるものではありませんが、日本の高齢化社会が加速するなか、定年年齢の引き上げは今度起こる可能性が高いと予想できます。
海外の定年年齢は概ね65歳
日本と海外の定年年齢を比べた場合、日本よりも海外のほうが高い傾向にあることがわかります。厚生労働省が編集する「世界の厚生労働2007」では、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・OECD諸国平均での定年の傾向がまとめられました。
厚生労働省によると、海外では主に「公式引退年齢」と「実引退年齢」という2つの指標があるとされており、公式引退年齢は日本で言う定年退職のことを指し、概ね65歳に設定されていますが、フランスの男女やイギリスの女性は60歳です。
一方、実引退年齢という指標は、40歳以上の者で継続就労の意識がなく、退職した年齢の平均値です。以下の通り、いずれの国も日本より実引退年齢の平均値は低いことがわかります。
【公式引退年齢(2004年)】
男性 | 女性 | |
アメリカ | 65.3歳 | 65.3歳 |
イギリス | 65.0歳 | 60.0歳 |
ドイツ | 65.0歳 | 65.0歳 |
フランス | 60.0歳 | 60.0歳 |
日本 | 60.0歳 | 60.0歳 |
OECD諸国平均 | 64.0歳 | 62.9歳 |
【実引退年齢(1999〜2004年)】
男性 | 女性 | |
アメリカ | 64.2歳 | 63.1歳 |
イギリス | 63.0歳 | 61.6歳 |
ドイツ | 61.3歳 | 60.6歳 |
フランス | 59.3歳 | 59.5歳 |
日本 | 69.3歳 | 66.1歳 |
OECD諸国平均 | 63.2歳 | 61.8歳 |
公式引退年齢と実引退年齢を比べると、海外では定年を迎える前に早期リタイアする傾向が強い一方、日本では定年年齢より実引退年齢が上回っていることがわかります。
今後は定年年齢の引き上げが予想されますが、いずれにしても日本は海外に比べ、より長い期間働く傾向が強いと言えるでしょう。今後の法改正や厚生労働省の動向に注目したいところです。