東京報道新聞第5回ライティングコンテスト_佳作作品

営業の世界で恐れられるのが、契約破棄の連絡だ。Webマーケティング事業を営むデルクイ代表の貝島氏も、過去にそうした経験をしている。苦境に直面した営業マンにとって、貝島氏の言葉は道標となるはずだ。

今回は貝島氏へのインタビューを通して、契約破棄の連絡があった際の最適解と、営業マンの在り方を紐解いていく。

■契約破棄の連絡を受けて、どんな行動を取られたのでしょうか。

「心臓が冷える感覚がありました」と当時を振り返る貝島氏。しかしそこで立ち止まることはなかった。 貝島氏が真っ先にとったのは、直接顧客と話をすることだった。

貝島:メールではなく直接ご事情を伺いたいので、この電話番号に連絡をくださいと番号を送りました。今回のご縁は人からの紹介だったこともあり、もともと即決された案件だったんです。どんな相手でもビジネスマン以前に「人」ですので、気持ちがコロコロ変わることはありますので、契約破棄そのものを咎めるつもりは全くありませんでした。ただ、このまま理由も言わずにさようならって、事業者としてすごくダサいじゃないですか。なので今回の案件でご縁がないとしても、必ず連絡をくださいと強く念押しをしましたね。

■話し合いの際は、どのような姿勢で臨まれたのでしょうか。

貝島:お気持ちが変わったのか、不安要素が残っているのか、金額面なのかなど率直に意見を言ってもらいました。ただ、こういう場で人は本音を話したがらない傾向にあると思っているんです。なので一事業者として自分のサービスを売りに行くというよりは、対「人」として自分の見解をお伝えすることで、話し合いの時間を設けたことは後悔させないという気持ちで臨みました。

■貝島さんの人柄が前面に出ているような気がします。では実際の対話で重視したポイントとは何だったのでしょうか?

貝島:対「人」としての在り方を重視している一方で、営業マンの仕事はやはり何がなんでも売ってくることだとも考えているんですよ。なので競合サービスについて尋ねました。するとご本人が望んでいる結果に繋がりにくいプランを提案されていたので「その媒体は短期的な集客ではなく、ブランディングや採用を目的として使うべきです。しかも効果が出るまで半年もかかるなんてあり得ません。時間をかけすぎです」と指摘しました。ご縁がないにしても僕の知らない未来で損をしてほしくないし、うちと組んだ方が結果に繋がると確信したこともあって、信頼を得るために熱量をもって見解を伝えましたね。

■今回のお客様はどのようなご縁で競合他社と出会ったのでしょうか?

貝島:とあるコミュニティでのご縁だったみたいです。僕は、誰をビジネスパートナーとして選ぶかが重要だと思っているので「コミュニティにいるからという理由でパートナーを選んだら失敗しますよ。僕と組んだ方がいい理由は、答えを作る自信があるからです」と明言しました。

そんな貝島氏の姿勢に、顧客は「コミュニティは上手に活用しないとダメだな」と言葉を弾ませたそうだ。単なるツールを提供する事業者ではない、真のビジネスパートナーとしての印象を残したのだ。

■ところで、貝島さんの思うビジネスマンがコミュニティに属する際の注意点は何でしょうか?

貝島:まず、コミュニティというものに期待をしない方がいいです。実は僕も同じようなコミュニティに入会してみたことがあったんです。でもそこにいる人たちって、コミュニティに参加すること自体が目的になっていて、肝心の売上を立てることが目的になっていない傾向にある気がしました。漏れなく全員が営業課題を抱えていて、自分の強みや在り方、ビジネスの存在意義といったことを全然言語化できていない。資金がない中で、見栄を張り合っているような状態。そんな場所で売上が立つわけがないですよね。

そこで僕が学んだのは「ただ仲が良いからという理由でビジネスパートナーを選んでいたら絶対に失敗する」ということ。最短で売上を立てるための考え方がないと、ビジネスをやっている意味がない。だからこそ、自分をフル活用して外からお客様を連れてきて売上を作る。要は自分で営業をしっかりやることが大事なんです。でもそういったコミュニティにいると、肝心のそこから目が逸れてしまう。自分のビジネスが本来向かうべき方向からすごく遠回りをすることになるんですよ。

■貝島さんにとって「営業」とは何ですか?

貝島:まず言いたいのは、クロージングで契約を無理に決めることが営業ではないと言うこと。商談をどう締めくくり、次のアクションに繋げるかの方が肝心だと思っています。大切なのは問いを立てること。本当にサービスが必要か、必要ないのか、決断を先延ばしにしていないか、リスクを恐れて目をそらしていないか。そうした問いを投げかけて、顧客自身に内省を促すようにしています。とにかく営業マンは、売上のためなら手段を選ばずという意識を持っちゃいけない。だって「この人となら」と思ってもらえなければ、チャンスは掴めないでしょう。結局、人として魅力的かどうかの勝負です。

■顧客との向き合い方について、貝島さんのこだわりを教えてください。

貝島:言うまでもなく、ビジネスは売上が大事です。でも僕はツールを売っているわけではない。Webマーケティング事業をやっている以上、顧客にとっての機会損失を防ぐのは当然のことです。でも僕をパートナーに選んでくれた以上は、それ以上の価値、つまり売上を上げる知恵を提供したいんです。さらにはツールの使い方以上に、経営の本質も一緒に考えていきたい。会社の存在意義は何か、そこを突き詰めるのが経営者の仕事ですから。
だからこそ、契約書にサインをする際も必ず直接会うようにしています。対面で話すことで、事業に対するお互いの覚悟が決まる。口約束を破るような人とは組めませんからね。

こうした姿勢は、顧客との信頼関係を築く大きな武器になっている。結果として、顧客から「一緒にいてくれて本当に助かる」「アドバイスをくれて助かる」と言ってもらえる関係性が生まれるのだと言う。

■ズバリ、契約破棄の連絡があった際の「最適解」とは何でしょうか?

貝島:話し合いの場を設けることを粘り強く働きかけるべきです。相手の立場を考え、事情をよく聞いて提案や助言をする。結果的に契約に繋がるかどうかはわからなくても、その時にやれることは全てやる。それがプロの仕事ですから。

■最後に、全ての営業マンへ アドバイスをいただけますか?

貝島:最初からうまくいくわけがない。だからこそ失敗を恐れず突き進むこと。疑問をもつのは大切だけど、会社の方針に従いつつ自分なりの改善を繰り返すこと。「営業」の定義を広げる発想をもつと、少し心が楽になるかもしれません。

契約破棄は営業マンなら誰もが通る道。むしろ「あるある、来ましたね」と前向きにとらえるセンスが問われる。
貝島氏の言葉は、そんな逆境に立つ営業マンの背中を力強く押してくれるはずだ。

逆風を乗り越えるマインドを身につけるには、一つ一つの経験を糧にしていくしかない。たとえ契約破棄というピンチに見舞われても、それが大きな成長の種になる——。貝島氏の半生がそのことを雄弁に物語っている。

ライター:田中真理奈ペトロヴァ

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