ワシの地元で誇れること。娘が悪の軍団に入ったことがあることかな

第3回ライティングコンテスト佳作

地元の話になると、ついみんなが知ってそうな情報から伝えようとしません?

ワシが住んでいる愛知県の瀬戸市民なら、将棋で大活躍中の藤井聡太棋士や瀬戸物を紹介します。将棋すごいよ陶磁器が盛んよ、と。

がしかーし! そんなビックネームの影で埋もれている素晴らしいモノが、瀬戸にはまだあるんです。その名もオリバー。陶神オリバーは、愛知県瀬戸市の市民団体「ご当地ヒーローでまちおこしの会」が作った瀬戸のご当地ヒーローです。

瀬戸の森で取れるクワガタを模したようなヘルメット、額の部分には陶器の『陶』の文字が刻まれています。瀬戸物のお茶碗を装飾した肩、身体を包むスーツは足から腰の部分にかけて炎がメラメラと燃え上がっている。すべてが瀬戸を彷彿とさせるデザインになっています。仮面ライダーやヒーロー戦隊と横に並んでも、全く引けを取らないほどのカッコよさなんですわ。

魅力的なのはオリバーだけじゃありません。オリバーの敵、瀬戸市を侵略しようとする悪の軍団『ガラード帝国』も個性派揃いで良い味出しているんですよ。

ガラード帝国には火、土、水の3つの軍団があります。イケメンの魔将インフェルナイトが所属する火の軍団、帝国が作り上げたアンドロイドのカラカスがいる土の軍団。子供に優しいアラケナーがいるのが水の軍団。ショッカー戦闘員のような役割のグーロ兵はどの軍団にもいます。

ワシの印象に強烈に残っているのが水の軍団のアラケナー。中国の猿のようなマスクを被り、青龍刀に似た武器を振り回すどっからどう見ても敵なヤツなのですが、その立ち振る舞いにワシと娘は虜になってしまったのです。

あれは陶神オリバーのヒーローショーを、初めて娘と見たときでした。

ショーの司会のお姉さんに襲い掛かるグーロ兵を、オリバーは華麗に登場して倒します。オリバーが去ったあと、水の軍団の魔将アラケナーは人間から仲間を集めることにします。オリバーを倒すには仲間がいる。アラケナーは会場で探すことにします。

「仲間になりたいひとー!」

手をあげる人は一人もいません。盛大にズッコケるアラケナー。それでもめげずに仲間になりたい人を探すとちびっ子の中にステージに上がる子がいるじゃあないですか。

ワシの娘もその中の一人でした。アラケナーは仲間になったちびっ子達をたくましく訓練するため、まず初めに番号を呼ばれたら返事をするように言います。でも相手はちびっ子。幼稚園児の我が娘は、要領がわからずぼけーっとしちゃいます。

またもやズッコケるアラケナー。水の軍団の魔将とは思えない、まるでお笑い芸人のような仕草で会場を大いに笑いで沸かせてくれました。

アラケナーが何度繰り返しても、ちびっこ達は番号は言えないので会場で仲間を探すのは諦めます。解放されて舞台から降りても娘はにっこにこでした。そのあとのオリバーとアラケナーの戦いも視線は釘付けで見ていました。可愛い声援も送っていました。おりばーがんばれーと。そこはアラケナーじゃないんかい。さっきまで仲間だったじゃないの。

ショーが終わり、娘と楽しかったね、また見たいねと話しました。まさか悪の軍団に娘が入るとは。本当に良い思い出です。幼稚園児の心に、オリバーの勇士とアラケナーの面白さは記憶に残りました。

そんな小っちゃかった娘は、今では中学1年生です。9年前に初めて舞台に上がり、悪の軍団に入った出来事は今でも覚えています。でも昔話は恥ずかしいのか、布団で顔を覆って隠れてしまいますがね。

ヒーローショーなんて1回見れば満足でしょ、なんて言わないでください。ヒーロー好きの有志が集まりボランティアで活動しているのは伊達じゃなく、迫力のあるショーが間近で見ることができますし、ストーリーもちゃんと進んでいます。

ワシと娘が大好きな水の軍団のアラケナーは、土の軍団の魔将カラカスとの戦いで負傷し現在消息不明だったり、火の軍団の魔将インフェルナイトは実はオリバーの兄だという事実が判明します。ただのご当地ヒーローだと思うなかれ。ちゃんと作りこまれています。観客を飽きさせない工夫が、幾重にも積み重なっているのです。

そんな陶神オリバーですが、今も活動を続けています。瀬戸市で行われるお祭り「せと陶祖まつり」や「せともの祭」でショーは見られるし、一日交通安全PRキャラクターとして瀬戸市内をパトロールもしました。コンビニのセブンイレブンが販売した限定商品「てりかけ&瀬戸焼そば」をPRするために市内のセブンイレブンを回ったりもしています。

来年、陶神オリバーは初めて舞台に立ってから10周年を迎えます。ワシにとっては藤井聡太棋士や瀬戸物と肩を並べてもいい、瀬戸市でおすすめできるモノだと胸を張って言えますわ。

ライター名:ああたはじめ

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