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目には見えない、地元最大の取柄
- 2023/10/27
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私の地元は、関西にある淡路島。中心部からは車で約1~2時間で来ることができ、島内は2日間あれば十分満足できるほど観光できる。長期休みを取らなくても旅行に行ける。観光に最適な「ちょうどよい島」だ。海と山に囲まれ、夜は満天の星空が見れる。そして何より、人があたたかい。
現在、私は神戸で就職をしている。淡路島に住んでいた時は、都会への憧れが強かった。神戸にでて1年間、便利でお洒落な街が好きだった。もちろん、今もその気持ちは変わらない。だけども離れて気づく、田舎の良さを知った。
職場の同期はよく淡路島に遊びに行くし、すごく褒めてくれる。新しい人とコミュニケーションをする中で、話すことが無くなり気まずくなった時の必殺技「淡路島出身なんです。」この一言で「最近栄えてるね。」「行ったことあるよ」のどちらかが返答で来る。答えやすいし盛り上がりやすい。
3〜4年前から、海岸沿いは都会の大手クループに染まっていった。「目の前が海」を活かしたカフェが多量に増加した。いわゆる「インスタ映え」する場所だ。車のナンバーは都会だらけで、地元では見ないような髪色や化粧をした若者が沢山来てくれるようになった。
島限定バーガーはポテト・ジュース付きで2000円、海鮮丼1つで3000円。ジュース1つ買うのに600円。都会に住み慣れた私からすると普通だが、淡路島に住んでいる親や友人からすると、正直すごく高い。それでも観光客は止まない。
月1回で帰島する度、飽きないかのようにやはり海岸沿いはすごい人だ。まるで某有名な遊園地のようにパンケーキに何分も待っている。さすが、都会の人の考えた戦略、大儲けだろう。
そんな沢山の人から慕われる地元も好きだ。だけど、私は淡路島のもっと好きなところがある。
釣り場に行くと、初対面のおじちゃん達がたむろして話している。「こっち!釣れるよ~」と。場所取りなど関係なくみんなが笑顔で釣りをしている。最後はみんなで魚を分けたりしだす。そして日が暮れると釣り竿片手に自転車で帰っていく。
バス停のベンチにはおばちゃん3〜4人が集まり談笑している。先月帰島したときには無かったのに、バス停に机が追加されている。その机の上にお菓子とお茶をおいて、老人会のようになっている。人数は変わっていない、安心。
女子高生たちは、都会で見るような子達とは違う、だれも化粧をしていない。焼けた肌に、スカートの長い真っ黒髪の女子高生たちが満面の笑みで歩いている。携帯を見て歩く高校生は少ない。車の中まで聞こえる声で、「また明日ね~!」とテニスのラケット袋を振っている。
路地裏、夫婦で経営しているしらす丼は味噌汁・漬物付きで1杯800円。味よしコスパよし。「SNSを使って私が宣伝するよ!」に対し、テレビを見ながら「忙しくなるだろう?このままで、いや、このままがいいんだよ」と見向きもせず返答される。お客さんは口を添えて注文する、「いつものね~」
チェーン店や服屋に行くと定員さんまでもが知り合いのことがある。レジで途端に始まる「最近どうなの?」「そうそう、言いたいことがあったの!」「後ろ並んでるわね、またメールするわ」後ろに並んでいる人がお辞儀をしてしまう、もはや反対だろうと突っ込みたくなる空間。
20歳をすぎると、都会の友人を誘うときは大抵「飲みに行こう。」が妥当である。帰島していると、「ガストかマック行こう、その後は海で星でも見に行こう。」お酒が無くてもドリンクバーで話し合える、そんな友人達がいる。
お洒落なカフェや景色に目を持っていかれがちだが、私は人も雰囲気も含めたうえでの、あたたかい淡路島が大好きだ。
もちろん、都会よりかはずっと不便だ。電車が無いからバスを逃すと1時間は待たなければいけない。コンビニは歩いて行ける場所にはない。車が無ければ職場に行けない。最近流行りの服や化粧品が欲しければ、ネット注文か橋を渡って都会に出なければいけない。
ただ、やはり淡路島にはある。目には見えない、心のあたたかさが。初対面でもつながりを感じ、老若男女問わず仲良くなれるこの島を、私は胸を張って自慢したい。
ライター:ホワイトタイガー