東京・渋谷にある「はらメディカルクリニック」は、男性不妊のため子どもができない夫婦を対象に、第三者の提供精子を用いた体外受精を行っています。しかし、最近の取材で、今年の春に夫を亡くした後、女性がその事実をクリニックに告げずに、提供精子を使用して体外受精を行って妊娠していたことが判明しました。
日本産科婦人科学会(日産婦)の会員医師向け会告(見解)や、同クリニックのガイドラインによれば、このような治療は法律婚を結んだ夫婦だけが対象とのことです。治療時に夫がすでに亡くなっている場合、精子のドナーが子どもの法的な「父」として子供から認知される可能性があるため、この事件は生殖補助医療の法制化の議論にも影響を与えると考えられます。
現在「はらメディカルクリニック」はこの問題に対応するため、新しい体外受精の手続きを一時停止しており、今後の方針や再開時期について検討しています。
ネット上では、「確実に確認できていないクリニックの体制にも問題があります」「今回の方が若いのか高齢なのかはわからんが、晩婚化や高齢出産化してきたのはやはり社会に問題があるのでは?」「悪用すれば更に倫理的でない利用の仕方をされてしまうので、対策や制度の検討が早急に求められると思います」などの意見が寄せられています。
クリニック側「法的措置を含めた責任追及を行う予定」
今回の重大な違反を受け、クリニック側は「法的措置を含めた責任追及を行う予定」としています。2020年に制定された生殖補助医療に関する民法特例法では、提供精子によって生まれた子供の父親は夫とすることが決められていますが、夫が死亡した今回のケースは想定されていません。
「はらメディカルクリニック」による情報では、該当の女性は自身の卵子と第三者の提供精子を用いて体外受精を行いました。そして、今年5月~6月の妊娠後の面談で、女性が夫の死後に受精卵を子宮に戻す処置を受けていたことが明らかとなりました。
治療に関する同意書には、「夫婦のどちらか一方が死亡した場合、治療は終了になる」との内容が含まれていましたが、女性は「子どもを持ちたいという強い願望を優先し、行動に移していた」としています。
クリニックは日本産科婦人科学会(日産婦)にも報告しており、クリニックによると今回のドナーが子供の認知を求められることがないように措置を取ったとのことです。