女優兼映像プロデューサーとして活躍する、葵芽美(あおいめぐみ)さん。クラシックバレエ、ジャズダンス、タップダンス、チアリーダー、舞台女優、映画女優、映像プロデューサー、企画者など多岐にわたる経験を積んで、新たな活路を開拓する彼女は一体何者なのか?葵芽美さんの深層に隠れた真相を、前編後編の2部にわたってせまります。
キャリアのスタートはプロ野球のチアリーダー
ー女優になる前はどのような活動をしていましたか?
幼少期からクラシックバレエを習っていて、就職活動の時期には「やっぱりダンスの仕事をしたい!」と思いました。周りの皆が会社訪問をしているときに、私は周りの強い反対を受けながらもレッスンに通い詰めてオーディションを受ける準備をしていました。
最初にオーディションを受けたのがプロ野球のチアリーダーです。千葉と埼玉、東京、横浜の球団を受け、千葉出身なのに千葉だけ書類で落ちちゃいました(笑) 残り3球団は最終審査まで残り、最初にご縁があった、横浜ベイスターズでチアリーダーを始めました。
他にはアメリカンフットボールのチームにも所属して、専属のチアリーダーも経験しました。国内のサッカーやバスケの試合などにも出演しつつ、そこから並行してチアダンスのインストラクターを始めたことが、最初のステップかと思っています。
野球、バスケ、サッカーなどのエンタメシーンを担う仕事は、一般的に“スポーツエンターテイメント”と呼ばれています。チームによって特色はありますが、チアリーダーをメインに試合前やイニング間、ハーフタイムなどに球場を盛り上げるんですよね。ここでプロの在り方を学んだように思います。
しかし、キャリアを重ねるなかで「日本で私がやりたいチアはやり尽くした」と次第に感じるようになりました。
全力でやりきったからこそ見えてきたステージ
その先に何をするかと考えたときに、ありがたいことに本場アメリカのNBAでパフォーマンスさせていただく機会を得ました。特にアメリカではNBAやNFLなどのチアリーダーがトップクラスなので、レベルが格段にあがります。チアの本場であるアメリカに渡って肌で感じたのは、日本とアメリカでパフォーマーに求められることのギャップでした。
ダンスの内容的にも、日本で好まれるものとアメリカで必要とされるものはまったく違います。もっと表現していきたいけれど、アメリカは私には合わない、と直感しました。
ちょうどそのころは、内面と外に表現することの差にとても悩み始めていた時期でした。チアリーダーとしてずっと笑顔でいなければいけないということが、少しずつ私に重くのしかかっていました。
もちろんチームを盛り上げるためには必要ですが、負けている時に内心では悔しい思いを抱えていたとしても、笑顔でフィールドに立つ必要があります。チームを応援しているファンの方からも「負けてるのにヘラヘラしやがって」みたいに思われてしまうことも多くて、直接そういう言葉をいただくこともありました。
女優へのきっかけとなったターニングポイント
ー常に笑顔の裏にはそのような感情があったのですね。その違和感が転機となったんですか?
チアは好きだけど、感情の落としどころがわからなくなった時期でした。この先何をしていくか考えたときに、「自分にもっと素直な表現をしてみたい」と思ったのがターニングポイントです。
自分が感じたものを直接表現して、それによって人の心を動かしたい!と思って、「女優の道に進んでみよう」と心に決めました。そこまで一切お芝居などやったことはなく、テレビのなかでみる世界でしたが、単純にチャレンジしてみたくなったのです。
「演技って何?」という状態だったので、とにかく資料をかき集めて学べる場所を探しました。そのなかで出会ったのが『劇団扉座』でした。
『劇団扉座』は横内謙介さんが主宰の劇団で、熱心なファンが多いことで有名です。新人を育成する仕組みがあるのですが、学ぶにしてもオーディションがあります。
多くの養成所や劇団を調べましたが、やはり主宰の方の想いが教える講師の方に浸透していくものだと思うので、主宰の方がどんな想いでやっているのかを重視しました。覚悟を持って臨めるところに行きたかったので、いろいろ調べていくなかでも、絶対に横内さんのところで学びたいと思いました。
子役から活動している子や、専門学校で演技の基礎を叩き込まれた子たちのなかで、チアリーダーをやっていた私はどう考えてもスタートが遅く場違いでした。それでも「やらない後悔よりやって後悔」「やってみなきゃわからない!」と、挙動不審ながらもオーディションに飛び込みました(笑)
オーディションは緊張しましたが、チアリーダーをやっていた頃には突然、東京ドームのど真ん中に出ていったり、スタジアムの大きなビジョンでダンスしている様子が映し出されたりもします。チアリーダーはチームの宣伝広告塔として取材を受けることもあったので、度胸だけは磨かれてきました。
結果的にオーディションに合格し、念願の横内さんにゼロからご指導をいただいて女優としての第一歩を踏み出しました。
(プロフィール)
女優、映像プロデューサー
葵 芽美(あおい めぐみ)
■経歴
プロ野球専属チアリーダーとしてキャリアをスタート。米NBAや国内スポーツエンタメシーンにて出演を重ねつつ、ダンスインストラクターとして活動。その後、女優に転身し紀伊國屋ホールをはじめとする、さまざまな舞台に出演。映画への関心が高まり、女優として映像作品への進出を図りつつ、映像プロデューサーとしても活動中。現在、『女優の卵展』を主催し、映画制作に力を入れている。
■実績
・プロ野球横浜ベイスターズ専属チアリーダー
・米NBA にてチアパフォーマンス
・プライベートアクセサリーブランドTapisRougeオーナー
・『女優の卵展』プロデューサーとして映画・イベント制作