即効性のある男性用避妊薬が開発中 マウス実験では投与から2時間は100%の避妊効果
- 2023/2/25
- マネー・ライフ
- 可溶性アデニル酸シクラーゼ, 避妊薬
- コメントを書く

即効性のある男性用避妊薬が開発されています。避妊法と聞くと、多くの人が経口避妊薬(ピル)や子宮内避妊具(IUD)、緊急避妊ピル(アフターピル)など、女性用の方法をイメージするかと思います。
男性向けの避妊法としては、現時点では実質コンドームしか選択肢がありません。しかし、近年では男性用避妊薬の開発が進められており、科学誌の「ネイチャーコミュニケーションズ」に掲載された論文によると、「飲むと一時的に精子が動かなくなる男性用避妊薬」の効果がマウスの実験で確認されたとのことです。
男性用の避妊法はコンドーム以外にも、精管を切断するパイプカットという方法もありますが、一度手術すると精管を元通りにするのは困難であるため、あまり現実的な避妊法とは言えません。一般的な避妊法として女性側が負担となるケースが多かったことから、世界中で問題視されてきました。
そこで、米ワイルコーネル医科大学の研究チームは、新たな男性用避妊薬の開発を進めています。この男性用避妊薬は、「Soluble adenylyl cyclase(可溶性アデニル酸シクラーゼ)」という酵素を標的としています。
精子の運動性において重要な役割を果たす酵素であり、精子の「オンスイッチ」として機能するため、阻害することで精子が動かなくなるとのことです。
マウス実験では投与から2時間までは100%の避妊効果
可溶性アデニル酸シクラーゼを阻害する化合物をマウスに投与したところ、30分〜1時間ほどでマウスの精子が動かなくなりました。また投与から2時間までは100%の避妊効果があり、3時間後には91%まで低下しています。24時間後には、生殖能力が正常に戻ったとされています。
可溶性アデニル酸シクラーゼが慢性的に阻害されている不妊症の男性では、腎臓結石のリスクが高くなると報告されていますが、急性作用型ならその副作用が生じる可能性は低いとのことです。
論文の共著者である米ワイルコーネル医科大学のヨッヘン・バック氏によると、単回投与で1時間以内に作用し、6〜12時間効果が持続する非ホルモン性ピルの開発を、研究チームは目指しているとされます。また、製品化までは最長で8年後になる見通しだと示しました。
イギリスの大学で避妊について研究を進めるスーザン・ウォーカー氏は、今回開発された男性用避妊薬について、実際に市場に出回るかどうかは不透明であると指摘し、その上で、実用化されれば「パートナーが避妊薬を飲むところを確認できるようになる」と評価しました。